脱炭素社会の実現に向けて、自社の作業所・オフィスからのCO2排出量をゼロにするだけでなく、設計施工建物の運用時のCO2排出量ゼロを目指します。また、再エネ施設の建設、再エネ事業の推進、脱炭素のための技術開発など、多方面で脱炭素の取り組みを推進していきます。
エコロジー・ミッション2030-2050
当社は気候変動を重要な経営課題の一つと捉えて、その緩和と適応に向けた取り組みを推進しています。
CO2排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030-2050」を設定し、施工時、自社オフィス、省エネ設計のカテゴリーごとに目標を定め、全社を挙げて目標達成に向けて取り組んでいます。また、グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」に基づき、2050年度には、CO2排出量をゼロとする目標を掲げています。
施工時CO2削減
- 2022年度実績
- 排出量17.8万t-CO2
1990年度比67%削減 - 2023年度目標
- 1990年度比61%削減
自社オフィスCO2削減
- 2022年度実績
- 排出量0.81万t-CO2
1990年度比53%削減 - 2023年度目標
- 1990年度比54%削減
省エネルギー設計による建物運用時CO2削減
- 2022年度実績
- 排出量7.51万t-CO2
1990年度比53%削減 - 2023年度目標
- 1990年度比55%削減
建設業の特性上、実績値は毎年の受注環境によって変動します。目標値は、2030年度削減目標に向けて段階的に削減するように定めています。
施工時CO2削減の取り組み
作業所におけるCO2排出量削減のロードマップ
全国各地における作業所において、エネルギー生産性向上や重機電動化により施工時におけるCO2排出量の削減に取り組んでいます。
また、段階的に電力比を高めていくと同時に、軽油はBDF(バイオディーゼル燃料)等、電力はRE(再生可能エネルギー)電力に順次切り替えていきます。
そして2050年には、グリーン合成燃料や燃料電池、水素エンジン駆動建機の利用を定着させることで、2050年カーボンニュートラル達成を目指します。
CO2排出量の把握に関する取り組み
脱炭素のためにはCO2排出量の把握から進める必要があります。そこで、建設生産過程(資材+施工)で生じるCO2排出量「Embodied Carbon」を精算見積データから自動算出できるプラットフォーム「SCAT」と、建設現場のCO2排出量を各種管理システムから月単位で自動算出・可視化する「施工時CO2排出モニタリングシステム」の運用を開始し、活用しています。
CO2排出量算出プラットフォーム「SCAT」ニュースリリース:建設生産に伴うCO2排出量の自動算出プラットフォームを開発
ニュースリリース:施工時CO2排出モニタリングシステムを全建設現場に展開
ICT施工の活用によるエネルギー生産性向上
測量データ、設計データなどの三次元データを、重機に搭載するモニターに表示することで、重機オペレーターがリアルタイムで施工状況を管理できるICT土工を展開しています。最適な重機の運転により施工の効率化が図れ、CO2排出量を低減(エネルギー生産性向上)できます。
軽油代替燃料の活用
建設現場で排出されるCO2の多くは、重機等の軽油燃料の使用によるものです。当社では現場で使用するクローラクレーンなどの大型重機に、ミドリムシ由来の次世代バイオディーゼル燃料や天然ガス由来のGTL(Gas to Liquids)燃料など、環境負荷の少ない軽油代替燃料を積極的に活用しています。
ベルトコンベヤを利用した骨材・土砂運搬
大型造成工事、トンネル工事やダム工事で発生した土砂や砕石を、ベルトコンベヤを使用して運搬することで、ダンプ運搬に伴って発生するCO2排出量を大幅に削減することができます。また都心部においては、CO2排出量の削減のほか、ダンプによる交通渋滞などの交通負荷を低減することができ、地域貢献にもつながります。
自社オフィスCO2削減の取り組み
本社ビルでカーボンフリーを実現
本社ビルでは、外壁面に設置した太陽光パネルで創出した電力を昼間の照明電源として自家消費を行う他、水力発電由来のグリーン電力「アクアプレミアム」(東京電力エナジーパートナー(株)提供)を供給電源とすることで、全使用電力のカーボンフリー化を実現しています。
また全国の支店社屋においても、順次ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化やグリーン電力の導入を図り、自社オフィスにおけるCO2削減に取り組んでいます。
省エネルギー設計による建物運用時CO2削減の取り組み
ZEBの普及
現在、政府目標の2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、建物でのエネルギー消費量を大きく減らすことができるZEBの普及が求められています。
当社は2013年に設計施工で竣工した「生長の家 森の中のオフィス」で、日本で初の完全オフグリッドZEBを実現させました。「イオンモール豊川」では日本初の大規模ショッピングセンターでZEB Ready※1を、「川北総合病院」では都内の急性期病院で初のZEB Oriented※2を実現。改修工事にも挑戦し、(国研)産業技術総合研究所つくば西事業所「西-4A棟」において、『ZEB』※3を実現しています。その他多数の物流施設、当社北陸支店、当社NOVARE Hubでも『ZEB』を実現しました。
また、当社は2023年にZEB設計ツールを開発。AIを活用して、ZEBを達成する提案を自動探索することで、建物の計画初期における顧客ニーズに即したZEB提案を支援します。これまで膨大な時間を要していたZEB化の検討業務が100倍以上効率化し、かつ提案内容も飛躍的に高度化できるようになりました。
- ZEB Ready : 省エネで一次エネルギー消費量を50%以下まで削減
- ZEB Oriented : 延床面積10,000m2以上で、
・事務所、学校、工場等:60%以下
・ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等:70%以下
まで省エネで一次エネルギー消費量を削減かつ対象の未評価省エネ技術を採用 - 『ZEB』:4種類あるZEBのうち、省エネ+創エネで一次エネルギー消費量を0%以下まで削減した最も省エネ性能の高いZEB
建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC®」
脱炭素社会実現への取り組みとして、建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC®」を、産業総合研究所と共同開発し実用化しました。
当システムは、電力需要が少ない時間帯に生じる太陽光発電の余剰電力で水素を製造・貯蔵し、建物の電力需要が増大した際に水素と酸素を反応させて発電することで、再エネ電力を余すことなく活用できます。
コンクリート表層に塗布した含浸剤でCO2吸収を促進
北海道大学と共同で、既設のコンクリート構造物を利用して大気からのCO2吸収を促進する技術「DAC(Direct Air Capture)コート」を開発しました。表層に塗布した含浸剤を介して、コンクリート構造物に大気中のCO2を塗布前の1.5倍以上を吸収、固定化させるものです。また防食性能も有しているため、コンクリートの中性化に起因する鉄筋の腐食を抑制し、鉄筋コンクリートの長寿命化にも寄与する観点からも脱炭素社会の実現に貢献しています。
資材から施工、建物の運用まで、建物のライフサイクルを通して脱炭素社会の実現に貢献していきます。
非建設事業における脱炭素社会実現に向けた取り組み
洋上風力発電
発電能力の規模や安定性から、再生可能エネルギーの中でも大きな可能性を秘めている洋上風力発電。当社では洋上風力発電の拡大に貢献するため、14~15MW級の大型風車建設にも対応できる世界最大級の自航式SEP船(Self-Elevating Platform:自己昇降式作業船)を保有しています。
洋上風力発電施設の建設工事市場において、大型風車を確実かつ効率的に施工できるSEP船を有することで、洋上風力発電分野においてトップシェアを目指していきます。
特設サイト:再生可能エネルギーの未来を支える世界最大級の自航式SEP船
ニュースリリース:SEP船「BLUE WIND」が台湾の洋上風力発電建設市場の拡大に貢献
ニュースリリース:BLUE WINDが石狩湾新港で8MW風車14基を組み立て
自社保有開発物件におけるCO2削減
不動産の開発・運営において、賃貸物件の省エネルギー性能の向上や再生可能エネルギー電力の導入、入居テナント様との協働によるエネルギー使用量の削減を行っています。「再エネ電力導入・CO2排出量削減・環境外部認証取得・エネルギー使用量等の公表」の4つの独自の目標を掲げ、サプライチェーンを通した脱炭素社会に貢献していきます。また、再エネ電力導入や先端的な省エネ性能などを持つ自社賃貸物件を「グリーンプロパティ+®」シリーズとして展開しています。
再生可能エネルギー事業
風力、太陽光、バイオマス、水力、地熱等の再生可能エネルギー発電事業や電力小売り事業などにも積極的に取り組んでいます。
2020年からは、長野県東御市において地域密着型のバイオマス発電施設を稼働させています。
電力小売事業を行うスマートエコエナジー社(100%出資子会社)では、電力小売事業の他、「グリーン電力証書」の販売などの脱炭素ソリューションの提供も行っており、当社施工現場においてもグリーン電力証書を活用による、工事電力の再エネ化を推進しています。