企業倫理行動規範の中で示している「人を大切にする企業の実現」に向けて人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たすための指針として、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の考え方に従い、2018年12月に「シミズグループ人権基本方針」を策定しました。
グローバルに事業展開する企業として、持続可能な開発目標(SDGs)の達成、同時に環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した経営の推進のため、幅広い視点から人権尊重への取り組みを進め、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
英国現代奴隷法への対応
推進体制
担当役員を委員長とする「全社人権啓発推進委員会」を置き、シミズグループ人権基本方針に基づく年度方針や全社における具体的施策を定め、展開しています。
各部門には推進責任者、啓発推進員、啓発担当者を置き、「部門人権啓発推進員会」などを通じて、全社人権啓発推進委員会での決定事項を展開しています。また、グループ会社においても、清水建設と連携して各種施策を展開しています。
教育・研修
階層別研修
全社人権啓発推進計画に基づき、グループ会社を含む全役員・従業員を対象に、シミズグループ人権基本方針をはじめ、同和問題、外国人、障がい者、LGBTQ、ハラスメントなど、さまざまなテーマで人権啓発講演会や集合研修を実施しています。
対象者 | 形式 | 受講頻度 | 2022年度実績 | 2023年度実績 |
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従業員 | 集合研修 | 2年に1回※ | 9,516人 | 8,054人 |
役員 | 講演会 | 毎年 | 52人 | 52人 |
副本部長・部長クラス | 1,008人 | 1,019人 | ||
人権啓発推進リーダー | 集合研修 | 61人 | 90人 | |
新入社員 | 361人 | 332人 |
※従業員は2年に1回のローテーション受講。2ヶ年で全従業員(副本部長・部長クラス除く)が受講完了となります。
人権啓発ハンドブック
人権を身近なものとして考え理解を深めてもらうことを目的に、シミズグループ人権基本方針、人権啓発推進体制、さまざまな人権課題、公正採用選考などの情報をまとめたハンドブックを、グループ会社を含めた役員・従業員に配布しています。
人権週間行事
人権意識の高揚のため、毎年12月の人権週間に、人権啓発標語優秀作品の表彰式、従業員研修、人権啓発ポスターの作成・掲示といった行事を行っています。グループ会社を含めた人権啓発標語の募集に対して、2023年度は従業員・家族合わせて3,175件の応募がありました。
相談窓口
人権基本方針で定める「(抜粋)人権に対する負の影響を引き起こした、または助長したことが明らかになった場合は、適切な救済・是正に努める」に従い、当社の役員・従業員(派遣社員などを含む)が、職場におけるハラスメントなどに関して社外の専門家にメールで相談・連絡できる窓口を設けています。利用者が具体的な解決を求める場合は、専門家からの連絡に基づき、利用者の意思を確認したうえで、必要かつ適切な対応を行います。
相談・連絡をしたことにより、利用者が不利益な扱いを受けることはありません。通報者の情報は高い機密性で保護されています。会社が相談や連絡に基づき、必要な対応を行う際には、利用者及び提供された情報などについて秘密厳守を徹底します。
また、当社ホームページに、協力会社の従業員等が当社または当社グループ関係者の不法行為などについて通報・相談できる「協力会社等外部通報窓口」を設けています。なお、通報者が不利益を被ることがないような措置を講じており、匿名での通報も受け付けています。
人権デュー・ディリジェンス
事業の持続可能性の観点から、人権に対する負の影響を特定、防止、軽減する人権デュー・ディリジェンスの取り組みを進めています。サプライチェーンに対しても、シミズグループの人権基本方針への支持を働きかけており、幅広い取り組みを行っています。
これまでの取り組み
2019年度
外国人技能実習生や留学生をめぐる、さまざまな人権侵害が報じられていることを受け、当社の中心的な事業である建設事業の現場で就労している外国人技能実習生をはじめとする外国人労働者の人権リスクについて、協力会社10社を対象に実態調査を行いました。
実態調査は、客観性と中立性の確保のため第三者機関と協働して、事業主インタビュー、書類確認、外国人労働者インタビュー※1、住環境の確認を行いました。調査の結果、大きな人権リスクは認められませんでしたが、就業規則が外国人技能実習生の母国語で作成されていないなどの課題も確認されました。
2020年度
2019年度の調査の結果を受け、外国人技能実習生を雇用するにあたり法令や運用要領で求められる事項や改善が求められる事項について、協力会社向け専用サイトへの掲示や研修を通じて周知しました。
また、海外の建設現場で就労する技能労働者の人権リスクを把握するため、清水建設が海外事業を展開している主な国・地域について、第三者機関による国別の人権リスク評価を実施しました。評価の結果、人権リスクが高く、今後も継続的に事業が見込まれる、あるいは、将来的に注力していく国として中国、タイ、インド、バングラデッシュ、ミャンマーの5か国を特定しました。これらの国では、児童労働や強制労働、不適切な賃金支払いなどの人権リスクが高いことを確認しました。
2021年度
外国人技能実習生受入に関するアンケートを、国内の主要な協力会社※2 1,297社を対象に実施しました。アンケートの結果、外国人技能実習生を自社で雇用している会社は118社であることが判明。その118社から外国人技能実習生の受入状況について回答を得ました。各社とも概ね適正な受入がされていることが確認できましたが、一部の企業には、監理費や帰国費用の負担、違約金や損害賠償に関する契約などに関し、是正・改善が求められる項目が見受けられました。是正や改善が求められる事項や優良事例については、協力会社向けの研修を通じて周知し、人権リスクの防止、軽減を図りました。
外国人技能実習生受入に関するアンケート結果(PDF:436KB)
- 中国、ベトナム、フィリピン、ミャンマー国籍の労働者、延べ30人に対して母国語によるインタビューを実施しました。
- 主要な協力会社:当社の協力会社組織(兼喜会)会員企業
2022年度
外国人技能実習生受入に関するアンケートの結果、是正や改善が求められる事項や優良事例について、協力会社向けの研修を通じて周知し、人権リスクの防止、軽減を図りました。
2023年度
外国人技能実習生を受け入れているグループ会社の事業所を訪問し、契約・勤務状況の調査及びヒアリングを実施し、適正な受入がされていることを確認しました。
海外の建設現場における取り組み
海外の建設現場においても人権デュー・ディリジェンスに関する活動を積極的に行っています。
児童労働や強制労働、不適切な賃金支払いなどを認めず人権尊重への取り組みを促すポスターの掲示や、現地での勉強会を通じて、外国籍従業員に対する人権デュー・ディリジェンスの取り組みを行っています。
人権に関する外部との連携
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)での活動
ヒューマンライツデューデリジェンス分科会に参加し、参加各社とともに自社の取り組み推進のための知見を得ています。
東京人権啓発企業連絡会での活動
東京に本社を置く企業を主体に121社(2024年4月現在)で組織される東京人権啓発企業連絡会に加盟し、さまざまな人権課題の解決に向けて、会員企業とともに研修や社会啓発、広報などの活動に取り組んでいます。
建設・不動産「人権デュー・ディリジェンス推進協議会」での活動
2018年にゼネコンとディベロッパー計8社で設立された建設・不動産「人権デュー・ディリジェンス勉強会」に参加し、「持続可能なコンクリート型枠材料の使用」や「建設現場における外国人技能実習生」といった業界共通の人権課題に対応するため、他社と協働して取り組みを進めるとともに、各社の取り組みや好事例の情報を共有しています。
また、ディベロッパー関係者に外国人技能実習生に関わる人権課題について理解を深めていただくために、当社が行った協力会社へのヒアリングに同席する機会を設けるなど、積極的な交流を図っています。
2023年4月に建設・不動産「人権デュー・ディリジェンス勉強会」を発展させ、建設・不動産「人権デュー・ディリジェンス推進協議会」を設立し、人権への取り組みを進めています。