AIでZEBの設計業務を代替!

~設計業務の効率化と高度化という背反する課題を解決へ~

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2023.08.21

清水建設(株)<社長 井上和幸>は、来年4月の改正労働基準法の適用に備え、今後、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の設計業務にAIを順次導入し、設計業務の効率化と高度化という背反する課題の解決を図ります。このAIは、当社が開発した「ZEB SEEKER」で、顧客が脱炭素の取組方針や事業計画の方向性を決める計画の初期段階から、顧客ニーズにマッチしたZEBの提案が可能です。

ZEBは究極の省エネルギー設計であり、その検討には、建築、設備を含め建物を一旦丸ごと設計する必要があるため、高度なノウハウとともに莫大なマンパワーを要します。このため、プランが頻繁に変更になる計画の初期段階からのZEB検討は敬遠されがちです。また、ZEBへの寄与度は「建築2割、設備8割」とされるなか、設備の仕様検討が非常に複雑で手間がかかることがZEB提案のネックになる一方、カーボンニュートラルに向けZEB提案が求められる案件が増え、設計者の業務量が増加しています。こうした課題を一挙に解決したのがZEB SEEKERです。

開発にあたっては、建物のエネルギー性能に係る設計プロセス、特に高度なノウハウが求められる各種設備機器の能力の決定プロセスをZEB SEEKERに学習させました。これにより、設計者に大きな負荷がかかる設備機器の能力設計及び、建物の省エネルギー性能の評価の自動化が可能になりました。この機能をベースに、ZEB SEEKERはZEBを実現する設計案を探索します。必要な入力情報は、建物の簡易3Dデータ、可変要素とする窓ガラスの種類や断熱性能などの建築仕様、空調方式や熱源種別、照明、換気、給湯、昇降機、創エネなどの設備仕様、それら各建築・設備仕様に対する建築コストやランニングコスト、使い勝手などの顧客ニーズ、目標とする省エネルギー率です。

ZEB SEEKERはこうした入力情報をもとに、50項目以上に及ぶ建築・設備仕様について最適化を図り、1日のうちに数億通り以上にも及ぶ組み合せの中から顧客ニーズに適したZEB提案を複数案に絞り込みます。施設規模にもよりますが、これまで設計者によるZEB化の検討には1ヵ月以上を要していたので、検討業務が100倍以上効率化し、かつ提案内容も飛躍的に高度化します。例えば、約150床の大型病院に対するZEB Ready提案では、3日間でメンテナンス重視案、ランニングコスト重視案、快適性重視案といった異なる顧客ニーズに対応した3タイプを提案することができました。

当社は今後、ZEB SEEKERの社内展開により、設計者の業務を効率化し“2024年問題”への対応を先取りするとともに、ZEBという究極の省エネルギー提案の高度化により顧客満足の一層の向上を図ります。

以上

≪参 考≫

ZEB SEEKERの概念図

ZEB SEEKERの概念図
※国土技術政策総合研究所 宮田征門氏のPython版WEBプログラム(https://builelib.net/)により建物のエネルギー性能を評価。

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