2022.09.20
清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、ダム建設工事の生産性向上を目的に、高所に配置したバッチャープラントで製造されたダムコンクリートを、材料分離を防ぎつつ低所の打設場所へ最短ルートで運搬できる密閉・吊下げ構造のベルトコンベヤ「SCプレミアムベルコン」を開発しました。この運搬設備は、古河産機システムズ(株)の協力を得て開発したものです。特徴は、袋状に丸めた搬送ベルトの中にコンクリートを包み込んで運搬することで、急傾斜の法面沿いに設置した場合でも、運搬物の形状が崩れず、コンクリートの材料分離を防止できます。
ダム建設工事では、全体工期の過半を占める堤体コンクリート打設の効率化が工事全体の生産性向上の鍵を握ります。堤体コンクリートの打設は、ダムコンクリートの製造・運搬・打ち込みを繰り返す連続作業であり、打設効率を高める上で、運搬能力の向上は不可欠な要素となります。
ダムコンクリートの運搬方法として、従前から、ダムサイトの法面に設置したベルトコンベヤを利用してコンクリートを連続的に搬送する手法が利用されていますが、一般的な平ベルトコンベヤは、搬送傾斜角度を大きくすると、比重の大きい粗骨材等が運搬中に滑落するリスクが高まります。このため、急傾斜の法面にベルトコンベアを適用する場合、傾斜角度を緩和するため切り返し部を設ける必要が生じ、その分、運搬効率が低下します。そこで当社は、急傾斜の法面でも直線的に配置でき、運搬効率を最大化できる新たなベルトコンベヤ設備として、SCプレミアムベルコンを開発しました。
SCプレミアムベルコンは、袋状ベルトコンベヤ、コンクリート供給用ベルトフィーダ、コンベヤ用プーリー・ローラー・モーターから構成されるダムコンクリート運搬設備です。袋状ベルトコンベヤは吊下げ構造の搬送システムで、上部のローラーにベルトの両端を挟み込むことで袋状の搬送スペースを形成し、搬送ラインにコンクリートを供給するベルトフィーダとの合流部では、上部が開口する仕組みになっています。運搬能力は1時間あたり200m3で、固定式ケーブルクレーンによるコンクリート運搬の約2倍の大容量運搬が可能です。堤体積100万m3級の大型ダム工事での適用を想定した場合、コンクリート打設工程を約4カ月、全体工期を10%程度短縮できる見込みです。
今後、運搬能力のさらなる向上を図り、2024年春頃を目途に、大型ダム現場での実運用を目指します。
以上
≪参 考≫
実験ヤード内に設置した実証設備
袋状ベルトを利用した搬送機構(イメージ)
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