日本最高クラスの環境性能を備えるオフィス「清水建設北陸支店新社屋」が竣工

~水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」を建物内に実装~

  • 建築
  • 環境
  • 省エネ

2021.05.13

清水建設(株)<社長 井上和幸>が金沢市玉川町で建設を進めてきた「清水建設北陸支店新社屋」がこのほど竣工し、同支店は5月17日から新社屋での業務を開始します。当社屋は、1978(昭和53)年に建設した旧支店社屋の老朽化に伴い計画したもので、「未来へつなげる『超環境型オフィス』を北陸から」をコンセプトに設計を進め、2020年4月に建設工事に着手しました。建物規模は地下1階・地上3階、延床面積4,224m2です。

「超環境型オフィス」としての当社屋の特長は、中規模オフィスでは北陸地域初となるネットZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を実現していることです。各種省エネルギー技術により建物の一次エネルギー消費量を基準値の28%まで低減し、太陽光発電により消費量を上回るエネルギーを創出することで、年間エネルギー収支「ゼロ」を達成しました。これにより、年間CO2排出量を290t程度削減できる見込みです。

建物のゼロ・エネルギー化に寄与する省エネルギー技術は、金沢の気候・風土を活かした地下水利用空調熱源、自然通風・採光、床吹き出し空調、躯体蓄熱放射空調、タスク&アンビエント空調・照明など多岐にわたります。一方、再生可能エネルギーを利活用した創エネルギー技術として、太陽光発電に加え、産業技術総合研究所と共同開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」を社屋内に実装しています。Hydro Q-BiCは、太陽光発電の余剰電力を利用して水素を製造・貯蔵し、BCP対応など必要時に抽出して電力に変換する、最先端の水素エネルギー蓄電設備であり、当社屋が実用化の第一号となります。導入システムは国内最大級の蓄電能力(2,000kWh)を備え、非常時には、BCP電源として72時間分の電力を供給します。

一方、建物の意匠面では、地域との共生、伝統と革新の融合を目指し、金沢の伝統的な建築様式を現代の技術で再現しました。建物の外観を特徴づける格子状のフレームは、古都に相応しい端正な佇まいを表現するとともに、構造体の壁柱として機能します。建物の東・西面に配置した格子状の日射ルーバーは、金沢の伝統的な街並みにみられる()(むす)()を再現したものです。建物内では、集成材と鉄骨を一体化した耐火木鋼梁「シミズ ハイウッド®ビーム」を格子状に架設し、金沢伝統の(ごう)(てん)(じょう)を再現。木鋼梁の外皮となる集成材には石川県の県木・能登ヒバを採用し、計232m3の県産材を用いてスパン25m超の木質天井を構築しました。

新社屋のオフィス計画では、より創造的で柔軟な働き方を誘発するオフィス「クリエイティブ フィールド®」を具現化しました。執務スペースはグループ単位のフリーアドレスとし、レイアウト検討に際してセンシング調査に基づく近接性評価を行い、グループ間の情報共有と協働を促進するレイアウトを実現。さらに、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を導入し、業務内容に応じて選択できる様々なワークエリアを各所に配置しています。自然光と自然風を取り込んだ2層吹き抜けの明るいオフィス空間では個々のアクティビティが可視化され、創造的な働き方を促進しつつ従業員に快適かつ健康的な執務環境を提供します。

新社屋の環境性能については、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の『ZEB』認証、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)の「Sランク(最高ランク)」認証を取得済みです。また、健康・快適性についても、WELL認証の最高ランク「プラチナ」の取得を目指します。当社は今後、この超環境型オフィスを先進的技術のショールームとして活用し、技術展開を促進することで、SDGsの実現に貢献していく考えです。

以上

≪参 考≫

清水建設北陸支店新社屋の概要

建設地 金沢市玉川町5-15
構 造 鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)
規 模 地下1階・地上3階、延床面積4,224m2
工 期 2020年4月~2021年5月
企画・設計・施工 清水建設株式会社
清水建設北陸支店新社屋

建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」

週末・祭日など建物の電力需要が少ない時間帯に生じる太陽光発電設備(140kW)の余剰電力を利用して水素を製造し、特殊な合金に吸着させ蓄電(2,000kWh)するシステム。平日の電力消費が多い時間帯や非常時に水素を合金から抽出し、発電する。(数値は北陸支店新社屋に採用する設備容量)

建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」

耐火木鋼梁「シミズ ハイウッド®ビーム」

鉄骨梁を覆う集成材が耐火被覆の役割を果たす木質構造部材。火災時には、集成材が炭化して断熱層を形成し、鉄骨梁の温度上昇を抑えることで耐火性能を維持する。平常時には、密着させた集成材が鉄骨梁の剛性を補完するとともに、仕上げ材の役割を果たす。北陸支店新社屋に採用した、能登ヒバを集成材に用いた耐火木鋼梁は、1時間耐火の国土交通大臣認定を取得済み。

耐火木鋼梁「シミズ ハイウッドビーム」

床吹き出し空調

OAフロアと床躯体の間に供給する空調空気を不織布製のフロアカーペット全面から居室内に染み出させる空調システム。空調空気は人やパソコンなどの発熱体が生み出す上昇気流に吸い寄せられ、空調が必要な場所に空調空気が集中する仕組みになっており、人間の居住空間(背丈相当)に限った空調が可能。

躯体蓄熱放射空調

床コンクリートに熱を蓄え、その放射効果により快適な室内温熱環境を実現する空調システム。北陸支店新社屋では、躯体蓄熱の熱源として地下水を利用することで、省エネルギー効果を高めている。

木虫籠(きむすこ)

金沢の町家の特徴である格子の割付が細かい出格子。

格天井(ごうてんじょう)

角材(格縁)を格子に組んで裏に板を張った天井。日本建築の古い建築様式で寺院建築や書院造りなどで、格式の高い部屋に用いられてきた。

ニュースリリースに記載している情報は、発表日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、お問い合わせください。