2022.08.10
清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」をコンクリートに混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート(以下、バイオ炭コンクリート)を開発しました。本技術は、成長過程で大気中のCO2を吸収した木材の炭化物を利用し、コンクリート内部にCO2を固定するもので、製造時に多量のCO2を排出するセメントの一部を高炉スラグで代替した低炭素セメントを併用することで、CO2の固定量が排出量を上回るカーボンネガティブを実現できます。バイオ炭コンクリートは、普通コンクリートと同等の流動性も備え、施工現場で打設できるため、幅広いコンクリート構造物への適用が見込めます。
バイオ炭は、バイオマス原料を不完全燃焼させて炭化したもので、木材から生成したバイオ炭には、木が光合成で吸収したCO2が固定されています。農業分野では、「バイオ炭の農地施用」が国のJ-クレジット制度の対象として認められ、バイオ炭によるCO2貯留量が環境価値としてクレジット化されています。本技術では、粒状もしくは粉状にしたバイオ炭をコンクリートの混和材として利用することで、コンクリート生産に伴うCO2排出量の低減を図ります。
混和材として利用するバイオ炭の材料には、針葉樹や広葉樹の製材時に廃棄されるオガ粉を利用します。オガ粉を炭化したオガ炭は、他のバイオ炭と比べて炭素を安定的かつ多量に固定できる特徴があり、炭素含有率は約9割、100年後の炭素残存率も約9割に上ります。混和材1kgあたりのCO2固定量は約2.7kgで、コンクリート1m3あたり60kgの混和材を添加することで、約160kgのCO2を固定できます。セメント材料に普通ポルトランドセメントを使用した場合のCO2排出削減率は67%、製造に伴うCO2排出を抑制できる低炭素セメントを使用すれば最大127%のCO2排出削減効果が得られ、カーボンネガティブを実現できます。
バイオ炭コンクリートの強度については、一般的な土木配合(設計基準強度24N/mm2)において普通コンクリートと同等の性能を有することを硬化性状試験で確認しています。施工性についても、現場でのポンプ圧送に適応する流動性をフレッシュ性状試験で確認しており、コンクリート二次製品への適用のみならず、現場でのコンクリート施工にも広く対応できます。
当社は今後、土木現場での実証施工を通じてバイオ炭コンクリートの施工性や耐久性を検証し、2022年度内に大規模コンクリート構造物への適用を目指します。併せて、J-クレジット制度での認証など、バイオ炭コンクリートの環境価値のクレジット化に向けた取り組みを進めていく考えです。
以上
≪参 考≫
粉状および粒状のバイオ炭
硬化後のバイオ炭コンクリート
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