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対談「多様な人財のさらなる活躍推進のために」

ウーマノミクスの提言者である、ゴールドマン・サックス証券 キャシー・松井副会長をお招きし、当社社長 宮本洋一との対談を行いました(2014年12月に実施)。

当社社長 宮本洋一、キャシー・松井氏
左から 当社社長 宮本洋一、キャシー・松井氏

女性の活躍が経済の成長になぜ必要なのか

宮本:始めに、「ウーマノミクス」を提言されるに至った経緯についてお聞かせください。

松井:私の仕事は、国内外の機関投資家に日本株式の展望を説明することですが、「ウーマノミクス」を提言した約15年前の日本では、金融危機が深刻化する中、財政赤字の膨張や労働人口減少の兆しなどが見られ始めていました。海外の投資家の関心は、その国、マーケット、企業に成長が期待できるかどうかなのですが、日本の明るい成長を描く人はおらず、思わしいレポートが書けませんでした。
しかしある日、私の女性の友達が公認会計士や弁護士であったり、MBAを取得していたりと、ものすごく優秀なのに、結婚や出産の後に社会に出ていないことに気づきました。
経済、GDPの成長の源は、人材、資本、生産性の三つだけです。仮に、資本と生産性が一定であるとすれば、人材が減少すれば、その国のGDPレベルは縮小します。そこで、社会がさらに人材を活用して所得や消費が増大すれば、この国の将来について明るいイメージを描けると考え、ウーマノミクス、つまり女性の活躍による経済の活性化を提言したのです。

宮本:15年前と比べて、今の日本は変わってきているでしょうか。

松井:ずいぶん変わったと思います。当時は、ダイバーシティという言葉を、新聞、テレビ、日常会話などで聞くことはありませんでした。経済情勢が厳しくなったことで認識が進んだという面もあると思います。
資源やエネルギーの乏しいこの国の一番の資源は人材です。既存の人口を有効に活用しないと国全体の成長につながりません。

宮本:諸外国に比べて、日本は立ち遅れているのでしょうか。

松井:最近、女性の就業率が少し上がってきていますが、先進国の中ではまだ低い方ですね。そもそも日本が、人口の半分である男性だけで世界有数の経済大国になったことがすごいと思います。ただし、これは今までの経緯であって、将来に向けては、今までの習慣、考え方では十分とは言えません。政府だけ、民間企業だけではなく、社会全体で考え直さなければならないと思います。

対談

宮本:私もそうだと思います。当社でも、女性が活躍できるような会社にするために、いろいろ取り組んでいるところです。
もともと建設業は、男ばかりでやってきました。トンネルの工事現場には女性は入れないという時代もありましたが、随分様変わりしました。かつては女性が出産と同時に退職するケースが多くありましたが、内勤を中心に復職するようになってきました。今後は、出産後の女性が現場でも働き続けられるようにすることが課題です。
また、今、当社の従業員1万人余りの中で、女性の管理職は19人しかいません。それを今後5年間で倍の40人にしようという目標を掲げています。会社として今後どのように取り組んでいくか、とても重要な局面を迎えているところです。

松井:最近、多くの経営者からウーマノミクスの話をしてほしいという依頼が寄せられますが、各社を訪れてみると、ダイバーシティの取り組みが二極化しています。一方は、周囲が取り組み始めたので自分たちも何かやらなければという、趣旨の浸透が感じられないケース。もう一方は、トップ自らが危機意識を持ち、会社の成長、ビジネスのために不可欠だということを信じて、それが組織全体に浸透しているケースです。
建前だけでなく、本音ベースで、なぜダイバーシティが必要なのか、どうしてビジネスに繋がるのかを理解させ、浸透させることはとても大変なことです。
金融業も資源は人材しかありません。会社の成長、将来のために、われわれが必要とするスキルを持つ優秀な人材が必要です。それは女性であろうと、外国人であろうと、ハンディキャップを持った人であろうとも構いません。当社ではそういう取り組みを20年前から進めてきました。

宮本:20年も前からですか。そこまでではないですが、当社でも女性が現場監督や営業職などでも活躍し始めています。
今後さらに、優秀な女性に入社してもらうこと、そして長く活躍できる環境を整えること、その両方に取り組まなくてはならないと思っています。
以前、女性社員から「女性としてのキャリアパスが見えない」という意見が寄せられました。これに対して私は「基本的にキャリアパスは男性と変わらない。男性を見て、同じように活躍してほしい。あるいは男性以上に活躍することで管理職になり、役員になってほしい」という話をしました。男女ともに考え方を変えていかなければならないようです。

松井:ある企業で聞いた話ですが、例えば女性4人のチームで、1人が妊娠して産休を取る時に、休む人の仕事をカバーする女性3人から「なぜこの人のために私たちが働かなくてはならないのか」と不満が寄せられたそうです。このように、男性だけの問題ではなく、男女全員の問題なのです。
でも、この国には優秀な女性、優秀な人たちが豊富にいるので、社会全体の考え方を変えることは可能だと思います。

宮本:おっしゃる通り、少しずつ変わっていると思います。あるアンケートの結果によれば、共働きの夫婦の方が出生率は高いのだそうです。もちろん経済的な問題もあると思いますが、共働きだと夫の家事に対する理解が高いのかもしれません。時代が変わったのでしょう。

松井:世界各地で見られる現象として、2000年頃に生まれたミレニアム世代は、男女ともに仕事よりも生活を優先します。充実した生活を楽しむための仕事であり、昔の考え方とは逆ですね。
従って、若い人たちは、こうした価値観に合う職場にしか就職しません。若い男性からも、ワークライフバランスについて質問をよく受けます。以前は、こうした質問は女性からしか聞きませんでした。
このように若者の価値観が変わってきているので、雇用主側も変わらなければなりません。男女を問わず、次世代を引き付けるための戦略を組まないと、女性はもちろん男性も入社しなくなります。

宮本:もちろん生活も大切ですが、やはり、若い人たちには仕事に挑戦する意欲を持ってもらわなければなりません。しかし当面は、こうした若い人たちを、会社に入ってからどう育てるかが大切だと思っています。