方針・基本的な考え方
シミズグループは、「2050年カーボンニュートラル」に向けて、温室効果ガス排出削減目標(1.5℃水準)を設定しました。
この目標に基づき、Scope1・2(施工時・自社施設運用時)の削減は勿論のこと、サプライチェーンを通じてScope3(資材製造時・建物運用時など)の削減にも積極的に取り組んでいきます。
さらに、新たな脱炭素技術の開発、グリーンエネルギー事業、再生可能エネルギー施設の建設などにより、脱炭素社会を牽引していきます。
シミズグループのCO2排出量の現状
シミズグループのCO2排出には以下のような特徴があります。
- Scope1+2は6%、Scope3は94%であり、ほとんどがScope3です
- Scope1+2では、施工時のCO2排出量が70%を占めています
- Scope3の内訳をみると、資材製造時(Category1)と建物運用時(Category11)が85%を占めています
2024年度データに基づく
戦略・体制
戦略
SHIMZ Beyond Zero 2050の実現を目指し、Zeroでは「Scope1+2」、Beyondでは「Scope3(主にカテゴリー1と11)」「削減貢献」の合計3種類に分けて取り組むべき事項を定めています。
(1)作業所におけるCO2排出量削減
作業所におけるCO2排出量削減、2050年カーボンニュートラル達成のため、①エネルギー生産性の向上、②重機の電動化(軽油から電力へのシフト)、③燃料の脱炭素化、④再エネ由来電力の利用に取り組みます。
①エネルギー生産性の向上
工事における消費エネルギーを減らすため、ICT施工や、3Dモデル、VRを活用したエネルギー生産性の向上に取り組んでいます。
②重機の電動化(軽油から電力へのシフト)
敷地条件によってはエンジン駆動のクローラクレーンではなく、電動のタワークレーンを採用するとともに、土砂の運搬をダンプトラックからベルトコンベアに切り替えるなど、重機の電動化を推進し、施工時のCO2排出量の削減に取り組んでいます。電動の大型建設機械は普及途上であり、当社においては試験的導入の段階ですが、国土交通省のGX建設機械認定制度の活用等によって段階的に導入拡大を目指します。
③燃料の脱炭素化
自治体の補助事業などを積極的に活用し、軽油をBDF(バイオディーゼル燃料)に切り替えていきます。
④再エネ由来電力の利用
日本国内で新規着工する工事現場のすべてにグリーン電力を導入することで、2030年度までに建設工事に関わる電力由来のCO2排出量ゼロの達成を目指します。
(2)自社オフィスにおけるCO2排出量削減
自社オフィスで高水準の環境性能を備えた建築とする他、オフセットクレジットを使用して「ゼロカーボン」とする取り組みを進めています。
- ニュースリリース:本社ビルで使用エネルギーの「ゼロカーボン」を実現
- ニュースリリース:日本最高クラスの環境性能を備えるオフィス「清水建設北陸支店新社屋」が竣工
- 事業トピックス:地域や時代に合った働き方を実現する次世代型オフィス
- NOVARE:GX×NOVARE
(3)省エネルギー設計によるCO2排出量削減
当社設計施工の建築物では、2027年 で新築平均 ZEB Ready 達成、2050年で新築平均 Nearly ZEB 達成を目指して取り組んでいます。
(4)自社保有開発物件におけるCO2排出量削減
不動産の開発・運営において、賃貸物件の省エネルギー性能の向上や再生可能エネルギー電力の導入、入居テナント様との協働によるエネルギー使用量の削減を行っています。「再エネ電力導入・CO2排出量削減・環境外部認証取得・エネルギー使用量等の公表」の4つの独自の目標を掲げ、サプライチェーンを通した脱炭素社会に貢献していきます。また、再エネ電力導入や先端的な省エネ性能などを持つ自社賃貸物件を「グリーンプロパティ+®」シリーズとして展開しています。
体制
清水建設およびグループ会社(以下、シミズグループ)は、長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と「中期経営計画<2024-2026>」において、気候変動を含む環境問題を経営に重要な影響を与える課題の1つと位置付けています。
当社では、環境問題に関する基本的な方針および施策を「サステナビリティ委員会(委員長:社長)」で審議しています。本委員会は、サステナビリティ担当役員が副委員長を担い、安全環境担当役員、各事業担当役員などで構成され、気候関連のリスク・機会の特定とその評価結果を審議するとともに、CO2排出量削減目標等の達成度も管理しています。また、これらの審議結果は取締役会に報告され、監督する体制となっています。さらに、社長直轄の組織である「環境経営推進室」が、シミズグループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」の達成に向けた活動等を統括しています。
また、シミズグループの環境問題に関する重要決定事項は「環境経営担当者会議」と「グループ会社環境経営担当者会議」を通じて、事業部門(支店を含む)およびグループ会社に伝達され、主要サプライヤーも含めた環境に関するガバナンス体系を構築しています。
目標・実績
2023年度および2024年度の各ScopeにおけるCO2排出量の実績値、および2030年度、2050年度の目標を下表に示します。さらに、CO2削減による財務的影響、および当社の技術や設計施工案件でのCO2削減努力のうち、Scope1,2,3にはカウントされない取り組みを「削減貢献量」と定義し、その財務的価値をTCFD情報開示に記載しています。
| 対象Scope | 2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
2035年度 目標 |
2050年度 目標 |
|
|---|---|---|---|---|---|
| Scope1+2 | 排出量(t-CO2) | 325,340 | 314,731 | 127,696 | 0 |
| 削減率 (2023年度比) |
― | ▲3.3 % | ▲61% | ▲100 % | |
| Scope3 (Category1+11※1) |
排出量(t-CO2) | 9,451,379 | 3,480,511 | 5,818,505 | 0 |
| 削減率 (2023年度比) |
― | ▲63% | ▲38% | ▲100 % |
| 対象Scope | 2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
2025年度 目標 |
|
|---|---|---|---|---|
| Scope1+2 | 排出量(t-CO2) | 187,955 | 167,351 | 177,498 |
| 削減率 (2023年度比) |
― | ▲11% | ▲8% |
建物運用時のCO2排出量を削減するためには、省エネルギー設計によって建築物省エネルギー法で規定されている『BEI値』を低減することが必要です。当社は、下図に示すBEI値の年度ごとの目標値を設定しました。ZEBを達成する提案をAIを使って自動探索するZEB設計ツールを開発し、建物の計画初期段階から顧客ニーズに即したZEB提案を実施することで、この目標の達成に着実につなげていきます。
取り組み
(1)作業所における取り組み
①ICT施工の活用によるエネルギー生産性向上
測量データ、設計データなどの三次元データを、重機に搭載するモニターに表示することで、重機オペレーターがリアルタイムで施工状況を管理できるICT土工を展開しています。最適な重機の運転により施工の効率化が図れ、CO2排出量を低減(エネルギー生産性向上)できます。
②軽油代替燃料の活用
建設現場で排出されるCO2の多くは、重機等の軽油燃料の使用によるものです。当社では現場で使用するクローラクレーンなどの大型重機に、次世代バイオディーゼル燃料や天然ガス由来のGTL(Gas to Liquids)燃料など、環境負荷の少ない軽油代替燃料を積極的に活用しています。
例えば、2028年竣工予定の「Torch Tower(トーチタワー)」(施行者:三菱地所(株)、設計監理:(株)三菱地所設計、施工場所:東京都千代田区)の建設現場にて、東京都の「バイオ燃料活用における事業化促進支援事業」が採択され、(株)ユーグレナの次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を導入しました。
清水建設・三菱地所・三菱地所設計・ユーグレナ 東京都の「バイオ燃料活用における事業化促進支援事業」に選定されました
③ベルトコンベヤを利用した骨材・土砂運搬
大型造成工事、トンネル工事やダム工事で発生した土砂や砕石を、ベルトコンベヤを使用して運搬することで、ダンプ運搬に伴って発生するCO2排出量を大幅に削減することができます。また都心部においては、CO2排出量の削減のほか、ダンプによる交通渋滞などの交通負荷を低減することができ、地域貢献にもつながります。
(2)自社オフィスにおける取り組み
本社ビルでは、外壁面に設置した太陽光パネルで創出した電力を昼間の照明電源として自家消費を行う他、水力発電由来のグリーン電力「アクアプレミアム」(東京電力エナジーパートナー(株)提供)を供給電源とすることで、全使用電力のカーボンフリー化を実現しています。
また全国の支店社屋においても、順次ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化やグリーン電力の導入を図り、自社オフィスにおけるCO2削減に取り組んでいます。
(3)省エネルギー設計の取り組み
現在、政府目標の2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、建物でのエネルギー消費量を大きく減らすことができるZEBの普及が求められています。
当社は2013年に設計施工で竣工した「生長の家 森の中のオフィス」で、日本で初の完全オフグリッドZEBを実現させました。「イオンモール豊川」では日本初の大規模ショッピングセンターでZEB Ready※1を、「川北総合病院」では都内の急性期病院で初のZEB Oriented※2を実現。改修工事にも挑戦し、(国研)産業技術総合研究所つくば西事業所「西-4A棟」において、『ZEB』※3を実現しています。その他多数の物流施設、当社北陸支店、当社NOVARE Hubでも『ZEB』を実現しました。
また、当社は2023年にZEB設計ツールを開発。AIを活用して、ZEBを達成する提案を自動探索することで、建物の計画初期における顧客ニーズに即したZEB提案を支援します。これまで膨大な時間を要していたZEB化の検討業務が100倍以上効率化し、かつ提案内容も飛躍的に高度化できるようになりました。
- ZEB Ready : 省エネで一次エネルギー消費量を50%以下まで削減
- ZEB Oriented : 延床面積10,000m2以上で、
・事務所、学校、工場等:60%以下
・ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等:70%以下
まで省エネで一次エネルギー消費量を削減かつ対象の未評価省エネ技術を採用 - 『ZEB』:4種類あるZEBのうち、省エネ+創エネで一次エネルギー消費量を0%以下まで削減した最も省エネ性能の高いZEB
(国研)産業技術総合研究所つくば西事業所 西―4A棟
(4)自社保有開発物件におけるCO2排出量削減
自社保有開発物件におけるCO2排出量削減のための取り組みはこちらをご覧ください。
(5)脱炭素社会を支える技術・サービス
①ライフサイクルアセスメント
清水建設は、ライフサイクルアセスメントに関する以下のプラットフォームを活用することで、ライフサイクル全体を通したCO2排出量の削減に努めています。
「Shimz Carbon Assessment Tool」
脱炭素のためにはCO2排出量の把握から進める必要があります。 CO2排出量算出プラットフォームShimz Carbon Assessment Toolは、建設生産過程で生じるCO2排出量を精算見積データから自動算出できるシステムです。本プラットフォームにより、一連の算出プロセスが自動化されることで、建設生産過程におけるCO2排出量算出のハードルが大きく下がり、発注者へのCO2排出量の報告・データ提供を標準化することが可能になります。建築物の企画設計段階でも本プラットフォームを活用し、影響度の高い主要項目に絞って設計案のCO2排出量の簡易評価を行うことで、定量的な評価に基づく低炭素建築物の設計提案を進めていきます。
「Civil-CO2」
Civil-CO2は、土木工事で発生するCO2排出量を積算データから自動算出できるCO2排出量可視化プラットフォームです。本プラットフォームの本格的な運用を開始し、土木工事の入札案件等において、スコープ3を含めたCO2排出量の事前評価を踏まえた効果的なCO2排出削減策の提案を行います。併せて、過去の工事案件にも本プラットフォームを適用して、道路、トンネル、橋梁、ダムといった土木工事の工種ごとにCO2排出の主要因を分析・把握し、CO2削減技術の現場適用を進めていきます。本プラットフォームによるCO2排出量算出は、積算ソフトウェアで作成された積算データに基づくもので、積算ソフトウェアから積算データをプラットフォームに取り込み、ワンクリックするだけで自動算出を開始。工事に用いる資機材情報とそれらに付随するCO2排出原単位を自動照合し、算出結果を活動別(スコープ別)、資機材別(主排出源別)にダッシュボード上に表示します。本プラットフォームにより、一連のCO2排出量算出プロセスの自動化と標準化が達成され、CO2算出業務の大幅な省力化を図ることが可能です。
②建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC®」
脱炭素社会実現への取り組みとして、建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC®」を、産業技術総合研究所と共同開発し実用化しました。
当システムにより、電力需要が少ない時間帯に生じる太陽光発電の余剰電力で水素を製造・貯蔵し、建物の電力需要が増大した際に水素と酸素を反応させて発電することで、再エネ電力を余すことなく活用できます。
- 技術ソリューション:建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」
- ニュースリリース:水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」のCO2削減効果を実証
- 再エネ拡大の鍵は“水素で蓄電”Hydro Q-BiC
③バイオ炭コンクリート
木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」をコンクリートに混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート「バイオ炭コンクリートSUSMICS-C」を開発・実用化しました。本技術は、成長過程で大気中のCO2を吸収した木材の炭化物を利用し、コンクリート内部にCO2を固定するもので、製造時に多量のCO2を排出するセメントの一部を高炉スラグで代替した低炭素セメントを併用することで、CO2の固定量が排出量を上回るカーボンネガティブを実現できます。
ニュースリリース:バイオ炭を用いてコンクリート構造物に炭素を貯留
④コンクリート表層に塗布した含浸剤でCO2吸収を促進
北海道大学と共同で、既設のコンクリート構造物を利用して大気からのCO2吸収を促進する技術「DAC(Direct Air Capture)コート」を開発しました。表層に塗布した含浸剤を介して、コンクリート構造物に大気中のCO2を塗布前の1.5倍以上を吸収、固定化させるものです。また防食性能も有しているため、コンクリートの中性化に起因する鉄筋の腐食を抑制し、鉄筋コンクリートの長寿命化にも寄与する観点からも脱炭素社会の実現に貢献しています。
資材から施工、建物の運用まで、建物のライフサイクルを通して脱炭素社会の実現に貢献していきます。
ニュースリリース:コンクリート表層に塗布した含浸剤でCO2吸収を促進
⑤ネガティブエミッション技術
「電気化学プロセスを主体とする革新的CO2大量資源化システムの開発」が、NEDOのムーンショット型研究開発事業に採択されました。同事業では、大気中に放散された希薄なCO2および放散される前のCO2を回収して、再生可能エネルギーを駆動力として、電気化学的に富化/還元し、有用化学原料を生成するプロセスまでの統合システムを開発し、カーボンリサイクルの基盤を構築します。
ニュースリリース:産学官協働で希薄な濃度に対応可能なCO2回収・資源化プロセス確立に向けた技術開発と実用化を加速
⑥洋上風力発電施設の建設
発電能力の規模や安定性から、再生可能エネルギーの中でも大きな可能性を秘めている洋上風力発電。当社では洋上風力発電の拡大に貢献するため、14~15MW級の大型風車建設にも対応できる世界最大級の自航式SEP船(Self-Elevating Platform:自己昇降式作業船)を保有しています。
洋上風力発電施設の建設工事市場において、大型風車を確実かつ効率的に施工できるSEP船を有することで、洋上風力発電施設の建設においてトップシェアを目指していきます。
- ニュースリリース:SEP船「BLUE WIND」が台湾の洋上風力発電建設市場の拡大に貢献
- ニュースリリース:BLUE WINDが石狩湾新港で8MW風車14基を組み立て
- 特設サイト:再生可能エネルギーの未来を支える世界最大級の自航式SEP船
⑦再生可能エネルギー事業
風力、太陽光、バイオマス、水力、地熱等の再生可能エネルギー発電事業や電力小売り事業などにも積極的に取り組んでいます。
2020年からは、長野県東御市において地域密着型のバイオマス発電施設を稼働させています。
木質バイオマス発電所
(長野県東御市)
電力小売事業を行うスマートエコエナジー社(100%出資子会社)では、電力小売事業の他、「グリーン電力証書」の販売などの脱炭素ソリューションの提供も行っており、当社施工現場においてもグリーン電力証書を活用による、工事電力の再エネ化を推進しています。
⑧環境未来都市構想GREEN FLOAT
赤道直下の太平洋に浮かぶ浮体式人工島構想。食料自供自足、廃棄物循環利用、100%再生可能エネルギー利用に加え、CO2回収や海洋隔離技術によるカーボンマイナス都市を目指すプロジェクトを提案しています。




