
Renovashiで未来を架ける 橋梁リニューアル工事への取り組み
東名高速道路(特定更新等)菅ヶ谷高架橋床版取付工事
日常生活や経済活動を支える高速道路は、高度成長期につくられたものが多く、経年劣化や交通量の増加により老朽化が進んでいます。このため、「高速道路リニューアルプロジェクト」が全国的に進められており、建設当初と同等以上の機能や性能を持つ道路につくりかえています。
当社は、「Renovashi(リノバシ):Renovation+Vashi(橋)」をキャッチフレーズに掲げ、2018年から橋梁リニューアル工事に取り組んでおり、現在までに18件の実績を積み上げています。また、リニューアル工事の生産性向上や省力化・省人化を図る様々な新技術を開発しています。
ここでは、当社が手がけた施工事例、開発した新技術、導入した設備をご紹介します。

■施工事例
①半断面施工による床版更新工事 菅ヶ谷高架橋
はじめに、最近工事量が増加傾向にある半断面施工(幅員方向分割施工)の事例を紹介します。菅ヶ谷高架橋は東名高速道路の袋井IC~掛川IC間にある橋長270mの高架橋で、供用開始から50年以上が経過しています。これまで部分的な補修や補強を繰り返してきましたが、橋梁本体の構造にも損傷が進行し始め、大規模リニューアル工事を実施することになりました。

工事区間は日中の交通量が3万台を超え、工事期間中の車線数減少に伴う渋滞発生が懸念されました。そのため、現行車線数(4車線)を確保しながら工事を行う半断面施工によるコンクリート床版の更新工事を実施しました。半断面施工では、工事エリアの幅が概ね1車線分しか確保できず、大型クレーンが配置できないため、プレキャスト床版など重量物の揚重には門型架設機(吊上げ荷重15t)を用いています。
その他にも、既設橋脚の耐震補強、既設鋼桁の補強や塗替塗装、既設支承の取替などを並行して実施することで橋梁全体をリニューアルし、安全で高耐久な社会資本の長寿命化に貢献しています。

施工ステップ 動画

- 工事名
- 東名高速道路(特定更新等)菅ヶ谷高架橋床版取替工事
- 所在地
- 静岡県掛川市上張~袋井市山科
- 発注者
- 中日本高速道路株式会社
- 施工者
- 清水建設(株)・日本ファブテック(株)特定建設工事共同企業体
- 工期
- 2021.12~2025.10
- 構造・規模
-
構造形式 鋼3径間連続非合成鈑桁橋×3連(上下線とも) 橋長 270.0m 有効幅員 更新前:10.95m → 更新後:12.13m 床版取替工 5,659m2 床版上面増厚工 1,072m2 鋼桁補強工 226t 塗替塗装工 15,921m2 支承取替工 72基
②都市高速における床版更新工事 阪神高速3号神戸線

次に、特殊工法を用いた床版取替工事を紹介します。
神戸市の中心部に位置する阪神高速3号神戸線の京橋IC~摩耶IC間は、供用開始から50年以上が経過し、交通量の大幅な増加や通行車両の大型化などの影響で床版・舗装・伸縮装置等の損傷が顕在化していたため、2023年5月19日~6月7日に終日通行止めで大規模リニューアル工事を実施しました。当社はそのうち神戸線S391(下り線)橋梁において床版更新工事を担当しました。
本工事では、工程の短縮と都市高速における厳しい施工条件下での施工が求められました。そこで、HSプレストスジョイント床版※(以下、HSPJ床版という)や床版架設機械などの新技術を適用し、難度の高い都市部での床版更新の急速施工を実現しました。本工事は令和5年度土木学会「技術賞」と2024年日建連表彰第5回「土木賞」を受賞しました。
※HSPJ床版は阪神高速道路(株)、清水建設(株)、ユニタイト(株)、住友電気工業(株)、昭和コンクリート工業(株)で共同開発したプレキャスト床版の新技術です。


- 工事名
- コンクリート床版大規模更新工事(2022-2-神)
- 所在地
- 兵庫県神戸市中央区磯上通
- 発注者
- 阪神高速道路株式会社
- 施工者
- 清水建設株式会社
- 工期
- 2022.8~2023.10
- 構造・規模
-
構造形式 鋼単純活荷重合成鈑桁橋 橋長 21.0m 総幅員 9.5m 床版工 183m2(HSPJ床版) 高欄工 42m(プレキャスト壁高欄) 主桁補強工 3.5t
③都心部高速道路における撤去工事 首都高速都心環状線 呉服橋・江戸橋出入口撤去
続いて、東京日本橋で実施した橋梁撤去工事を紹介します。
日本橋川上空に架かる首都高速都心環状線は、供用開始から60年以上が経過し、一日に10万台の車両が通行する過酷な使用状況により損傷が激しく、大規模更新が必要でした。そこで日本橋川周辺の再生プロジェクトと一体となり、江戸橋JCT~神田橋JCTの地下化事業が始まっています。本工事はその準備作業として、将来の地下トンネルに干渉する橋脚基礎の撤去・受替えを行うため、先行して呉服橋と江戸橋の出入口の橋梁撤去を行いました。

床版・主桁・橋脚・附帯物合わせて約6,200tにおよぶ撤去工事を行うため、様々な技術を駆使します。施工前に本線橋梁への詳細な影響検討を実施し、施工中はリアルタイム計測による変状管理を徹底しました。

コンクリート床版・壁高欄は大型ブロックに切断して撤去し、一部では新技術の床版クールカット工法を試行しています。また、鋼桁は台船を活用し、大ブロックを一括で吊下げ降下させて撤去作業を行いました。供用中の高速道路と近接し、河川交通として利用されている日本橋川上空といった厳しい条件下でしたが、工期内に無事に完了させました。本工事は令和6年度土木学会「技術賞」と、令和6年後全日本建設技術協会「全建賞」を受賞しました。



- 工事名
- (改)都心環状線(日本橋区間)呉服橋・江戸橋出入口撤去工事
- 所在地
- 東京都中央区日本橋~日本橋本石町
- 発注者
- 首都高速道路株式会社
- 施工者
- 清水建設・JFEエンジニアリング特定建設工事共同企業体
- 工期
- 2020.11~2024.2
- 構造・規模
-
(呉服橋出入口) (江戸橋出入口) 構造形式 鋼床版単純箱桁橋
鋼2径間連続非合成2主箱桁橋鋼2径間連続非合成2主箱桁橋 床版撤去 640m3 740m3 鋼桁撤去 880t 550t 鋼製橋脚撤去 3橋脚柱 4橋脚柱
■新技術と導入技術
次に、工程短縮やコスト削減、耐久性向上を目的として当社が開発・導入したリニューアル技術と、新しく導入した設備を紹介します。

◆開発した技術
①既設床版の切断技術 ダブルワイヤーソー工法、床版クールカット工法
合成桁のコンクリート床版の撤去作業を効率化するため、合成桁床版の切断工法「ダブルワイヤーソー工法」と「床版クールカット工法」を開発しました。いずれも切断時間を45%短縮し、切断精度の高精度化を実現するとともに、湿式・乾式どちらの切断方法にも適用可能です。鋼桁形状やハンチの有無など、現場条件に応じて2つの工法を使い分けます。
ダブルワイヤーソー工法
2体の駆動プーリー(滑車)を配備した高性能ワイヤーソーとレール上を走行する走行台車を組み合わせた切断装置で、レール上を移動するため切断装置の組立解体回数を大幅に低減します。

床版クールカット工法
水平・鉛直切断の双方に対応できるユニット型の切断装置「基礎躯体クールカット」を活用して、合成桁上のコンクリート床版を水平切断する工法です。施工ステップを削除し、さまざまなハンチ形状にも対応可能です。

②プレキャストPC床版の接合技術
アローヘッドジョイント工法
プレキャストPC(プレストレストコンクリート)床版の橋軸方向の接合技術として、端部に矢尻状の定着体を設けた機械式定着鉄筋「アローヘッド鉄筋」を用いた継手工法です。母材と一体成形した矢尻状の定着体を有するアローヘッド鉄筋は、定着体をコンパクトにできるため、床版の薄肉化や配筋作業の効率化が図れます。

HSプレストレスジョイント(HSPJ)工法
新開発の継手(HSPJ)を用いたプレキャスト床版の接合工法です。床版の厚さを更新前と同等以下にできるため、既設の構造に影響を与えません。またワンタッチ接合により急速施工が可能です。

SLaT-FaB床版
接合部にTヘッド工法鉄筋を用いたプレキャスト合成床版です。底鋼板パネル同士、添接板を用いて高力ボルトで接合するため、床版更新の幅員方向分割施工にも有効です。

③半断面床版架設工法 グラビングエレクター工法
グラビングエレクター工法
老朽化した床版のはく離撤去および新設床版の架設を1台の装置で施工する床版更新工法で、高速道路の現行車線数を確保しながら幅員方向に分割して床版更新工事を行う「半断面施工」を可能にします。床版を3次元で姿勢制御する把持機構の採用により、床版取り替えスピードが従来より約1.7倍向上します。さらに、把持機構はクレーン対象外のためクレーン検査が不要なこと、また装置の横行機能により車線切り替え時の装置搬出が不要であることも特徴です。

④支承交換作業の省力化技術
桁下の狭あいな空間で行う支承部材の交換を容易にする装置です。床版更新工事や耐震補強工事での支承交換作業の省人化・工程短縮・安全性向上を実現します。

◆導入した技術
既設床版切断測量技術 自動マーキングロボット
既設床版の切り出し線の「マーキング(墨出し)」作業を効率化するため、自動マーキングロボット「タイニーサーベイヤー(Tiny Surveyor)」を導入しました。マーキング作業の生産性を約90%向上できます。

◆導入した設備
床版製造専用ライン
株式会社エスシー・プレコン(当社グループ会社)の千葉県流山工場に、プレテンション方式のコンクリート床版製造ラインを新設し、施工現場への部材の安定供給と調達コストの低減を図っています。同工場ではDAK式プレキャスト壁高欄の製作も可能です。

■Renovashiで未来を架ける
当社は、これまでの実績と経験を活かし、橋梁リニューアル工事の更なる生産性向上や省力化・省人化、工程短縮に取り組んでいます。わたしたちは、これからも高速道路リニューアルプロジェクトをはじめ、橋梁リニューアル工事を通じて「未来を架ける」安全安心なインフラ整備に貢献していきます。
お問い合わせ
土木技術問合せ窓口 sc-civiltech-mlist@shimz.co.jp
記載している情報は、2025年8月5日現在のものです。
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