道路橋プレキャストPC床版の接合構造を合理化

~矢尻状の定着鉄筋を用いた継手工法「アローヘッドジョイント」を開発~

  • 土木

2023.11.09

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、道路橋に使用されるプレキャストPC(プレストレストコンクリート)床版の接合技術として、端部に矢尻状の定着体を設けた機械式定着鉄筋「アローヘッド鉄筋」を用いて床版接合部の耐久性向上と配筋作業の合理化を図る継手工法「アローヘッドジョイント」を開発しました。本工法で接合したプレキャストPC床版を用いて輪荷重走行試験を行った結果、供用期間100年相当の繰り返し荷重を受けても漏水が生じず、高い疲労耐久性を有することが確認できました。

高度経済成長期に建設された道路インフラの老朽化が進む中、高速道路の大規模更新工事の需要が増加しています。なかでも、既存のコンクリート床版をプレキャストPC床版に更新する床版取替工事は、事業総額5兆円と目される高速道路更新事業の6割を占める主要工事であり、今後も継続的な工事発注が見込まれています。

床版取替工事ではこれまで、プレキャストPC床版の継手工法として疲労耐久性の高いループ継手が主に利用されてきました。ループ継手を適用した場合、最小床版厚がループ状鉄筋の曲げ内半径によって規定されるため、コスト低減に寄与する床版部材の薄肉化が制限されます。また、施工時には、ループ継手の内部に配置する補強筋を橋梁外部から挿入する必要があり、施工性の面でも課題がありました。アローヘッドジョイントは、道路橋に求められる疲労耐久性を確保しつつ生産性向上にも寄与する床版継手工法として開発したものです。

本工法に適用するアローヘッド鉄筋は、当社が保有する「Tヘッド工法鉄筋」の加工技術を応用して開発したものです。Tヘッド工法鉄筋は、鉄筋母材の端部を熱間加圧成形法で加工してT形の定着体を成形するもので、配筋設計と施工の合理化・簡素化に寄与します。同様に母材と一体成形した矢尻状の定着体を有するアローヘッド鉄筋は、Tヘッド工法鉄筋の定着性能を保持しつつ、定着体をよりコンパクトにできるため、床版の薄肉化にも寄与できます。

施工面では、配筋設計の簡素化により、橋軸直角方向の配筋作業が容易になり、ループ筋を用いる従来工法と比べて約50%の生産性向上効果が見込めます。また本工法では、床版接合部の間詰めコンクリートとして設計基準強度50N/mm2の一般的な配合のコンクリートを使用するため、充填性に課題のある高強度コンクリートを使用する同種工法と比べて施工性に優れます。

本工法に適用するプレキャストPC床版の供給面については、当社のグループ会社・(株)エスシー・プレコンが本社工場(千葉県流山市)内に設けた道路橋床版専用ラインを活用した生産体制を既に整備しています。当社は今後、床版取替工事の技術提案に本工法を織り込み、工事受注の拡大を目指します。

以上

≪参 考≫

アローヘッドジョイント

<プレキャストPC床版接合部>

プレキャストPC床版接合部

<接合部断面>

接合部断面

<アローヘッド鉄筋の定着原理>

アローヘッド鉄筋の定着原理

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