PC橋梁の歩み

スパン長大化に向けた取り組みの歴史

PC橋梁の歩み

PC橋梁の歩みスパン長大化に向けた取り組みの歴史2018.06.26

小名浜マリンブリッジ(福島県)

2018年6月、当社施工のPC橋梁「小名浜マリンブリッジ」が、2017年度 土木学会田中賞を受賞しました。
同賞は、日本の橋梁界、鋼構造界の育ての親と呼ばれる 故 田中 豊博士の名を冠した、橋梁分野で最も名誉ある賞です。
PC橋梁分野に後発で参入したシミズが、どのように実績を積み上げ、土木学会田中賞を数多く受賞するまでに至ったか、その歩みを紹介します。

P&Z工法でPC橋梁分野へ参入

PC橋梁とは、コンクリートの中に鋼材を通して張力を与えることで圧縮力を加えて強化したコンクリート材、すなわちプレストレスト・コンクリート (Prestressed Concrete) を使用した橋梁のことです。通常の鉄筋コンクリートに比べて強い荷重に抵抗できるため、長い支間長(スパン:橋脚と橋脚の間の距離)が可能になります。現在は、国内の新設コンクリート橋の多くがPC橋梁となっています。

シミズのPC橋梁の歴史は、1977年に、当時の西ドイツからP&Z工法※1を導入した時に始まります。
当時は、長大PC橋梁と言えば、ワーゲンと呼ばれる移動作業車を用いた張出し架設工法※2の独壇場でした。PC橋梁分野への参入に大きく遅れを取っていた当社は、移動式架設桁を用いた張出し架設方法であるP&Z工法を導入し、地上からの作業を全く必要としないこの新工法で差別化を図ることでPC橋梁の世界に挑んでいきました。

P&Z工法

※1P&Z工法…桟橋なしで上部工の施工が可能なため、大河川や渓谷を跨ぐ橋梁に適している。橋体は、移動式架設桁から吊られた両端の型枠でブロックの製作を行う。一度に施工できるブロックの長さは10m程度であり、移動作業車(ワーゲン)を用いた張出し架設工法よりも大きなブロックを施工できるため、施工速度が速い。(開発は西ドイツのPolensky&Zollner社)

移動作業車(ワーゲン)を用いた張出し架設工法

※2移動作業車(ワーゲン)を用いた張出し架設工法…橋体から吊るされた両端の移動作業車内でブロックを製作する。一度に施工できるブロックの長さは2~5m程度である。

長大スパンを目指して

シミズのPC橋梁の出発点とも言えるのが、利根川本流を渡河する、群馬県の「月夜野大橋」です。月夜野大橋の上部工工事では、P&Z工法が国内で初めて採用され、1982年に竣工しました。橋梁架設技術の新分野を開いた同橋は、1982年度の土木学会田中賞を受賞しました。

月夜野大橋(群馬県)
月夜野大橋(群馬県)

その後、シミズはPC橋梁の実績を伸ばしていきましたが、橋梁における技術力は、実績数ではなく、スパンの長さとも言われていました。
そこで、1985年に社内開発プロジェクトを立ち上げ、長大スパンに適した構造形式「PC斜張橋」※3の技術開発に取り組んでいきました。

※3PC斜張橋…塔、斜材、主桁で構成される構造。斜材と呼ばれるPCケーブルで主塔から主桁を吊ることで、長スパン化を可能とした。

全社を挙げた取り組みにより、1995年に念願の長大斜張橋、スパン230mの「能登島農道橋」を、続く1996年にスパン219mの「天建寺橋」を受注しました。

能登島農道橋(石川県)
能登島農道橋(石川県)
天建寺橋(佐賀県)
天建寺橋(佐賀県)

長大斜張橋で飛躍

その後は、海外案件にも果敢に挑戦していきました。
国境に架かる橋「マレーシア・シンガポール第2連絡橋」では、大規模なプレキャストセグメント工法※4を採用しました。橋長1.7㎞は、1997年の完成当時、日本の施工会社が手掛けた同工法の橋梁の中で最長を誇りました。

※4プレキャストセグメント工法…あらかじめ工場や製作ヤードで分割して製作したセグメント(プレキャスト部材)を架橋地点で接合し、圧縮力を与えて一体化する工法。

マレーシア・シンガポール第2連絡橋(シンガポール、マレーシア)
マレーシア・シンガポール第2連絡橋(シンガポール、マレーシア)

また、2006年には、ベトナムでユネスコ世界遺産に登録された景勝地ハロン湾に架かる海上橋である最大スパン435mの「バイチャイ橋」を完成させ、長大斜張橋の分野で大きな飛躍を遂げました。スパン435mは、1面吊りPC斜張橋※5としては東南アジア最長となっています。

※5一面吊り斜張橋…橋桁の真ん中を一面の斜材で吊る斜張橋。国内最長スパンの一面吊りPC斜張橋は矢部川大橋。

バイチャイ橋(ベトナム)
バイチャイ橋(ベトナム)

国内でも、2009年に、日本一のスパン261mの3径間連続PC斜張橋「矢部川大橋」を完成させました。

矢部川大橋(福岡県)
矢部川大橋(福岡県)

PC橋梁のトップランナーを目指して

1990年代以降になると、総合評価方式の入札案件が増加し、当社も保有技術の提案に積極的に取り組んでいきました。
鉄道橋では、1999年完成の「鳴瀬川橋梁」で、P&Z工法による上部工の通年施工などを提案しました。特徴的な外観のフィンバック橋(背びれ橋)の上下部工を、約2年の工期で完成させました。

また、近代土木遺産に認定された「余部橋梁」の架け替え工事では、2007年の施工方法を含むデザインコンペで当社案が採用され、工事も受注しました。
新橋梁は5径間連続PCエクストラドーズド橋※6で、上部工は移動作業車を用いた張出し架設工法で施工しました。京都側既設トンネルとのすり付け部は、長さ93m、重量3,820tの橋桁を、地上40mの高さで4m平行移動、5.2度回転させるという、わが国でも前例のない難度の高い工事でした。

※6エクストラドーズド橋…主塔と斜材で主桁を支える、外ケーブル構造による橋梁形式であり、コンクリート桁橋と斜張橋の中間的な特性を持つ。

鳴瀬川橋梁(宮城県)
鳴瀬川橋梁(宮城県)
余部橋梁(兵庫県)
余部橋梁(兵庫県)

2013年には、穏やかな曲線のシルエットを持つ橋長594mの10径間連続フィンバック橋「各務原大橋」、2014年には橋長412mの鋼・コンクリート混合アーチ橋「太田川大橋」、2017年には5径間連続PCエクストラドーズド橋である「小名浜マリンブリッジ」を相次いで完成させました。

各務原大橋(岐阜県)
各務原大橋(岐阜県)
太田川大橋(広島県)
太田川大橋(広島県)

「土木学会田中賞」を数多く受賞

近年、シミズは、橋梁工事で最も権威のある「土木学会田中賞」を数多く受賞するなど、国内でもトップクラスの技術と実績を誇るまでに成長を遂げました。

近年の田中賞受賞実績

各地の橋梁を表した日本地図
  • 小名浜マリンブリッジ
  • 東京ゲートブリッジ
  • 首都高八重洲線 汐留高架橋
  • 横浜環状北線トラス橋
    (大熊川トラス橋)
  • 各務原大橋
  • 余部橋梁
  • 太田川大橋
  • 阿波しらさぎ大橋
  • 矢部川大橋
  • 2017年度

    小名浜マリンブリッジ【新設】

    (2017年竣工・福島県)

    小名浜マリンブリッジ(航路部)は、橋梁510mの5径間連続PCエクストラドーズド橋である。本橋は、低い主塔と斜材で形成されたプロポーションを持ち、周辺環境と調和したランドマークとしての景観を活かしたデザインと構造を実現した。臨港道路橋として日本初のエクストラドーズド橋が採用された。

  • 2011年度

    東京ゲートブリッジ【新設】

    (2012年竣工・東京都)

    港湾取扱貨物の輸送時間短縮と物流コスト短縮を図り、東京港の物流の効率化による国際競争力強化を目的に建設された橋長2,618mの橋梁。近接する羽田空港の航空制限を考慮すると共に東京港第三航路を跨ぐために、桁下高54.6m、支間長440mを確保する必要があることから主橋梁をトラス橋とし、連続トラス橋としては世界最長の支間長となった。

  • 2013年度

    首都高八重洲線 汐留高架橋【改築】

    (2014年竣工・東京都)

    交通量5万台/日の大規模交差点上の区間の架け替え。対象は内回り橋長93.5m、外回り橋長101.1m。交差点上の桁架設には、地組みした主桁を夜間多軸台車で交差点内に搬入し、門型吊り上げ式ベントとPCケーブルで吊り上げる架設工法が採用され、周辺道路の交通流への影響を軽減した。

  • 2015年度

    横浜環状北線トラス橋(大熊川トラス橋)【新設】

    (2014年竣工・神奈川県)

    横浜環状北線の一部であり、鶴見川、大熊川、江川の3つの河川の合流部に架橋された橋長158mの単純ダブルデッキ鋼床版トラス橋。同形式としては国内最大支間長を誇る。
    上部工の架設は、河積確保と、架橋地点の堤防法面に生息する希少生物への配慮から、送り出し工法が採用された。当社は杭基礎による橋脚を担当。

  • 2013年度

    各務原大橋【新設】

    (2013年竣工・岐阜県)

    各務原市上戸町と川島小網町を結ぶ那加小網線に位置し、木曽川を渡る橋長594mのPC10径間連続フィンバック橋。
    上部工ではP&Z工法を採用、柱頭部と張出し施工部を同時に施工することで、大幅な工期短縮を図った。

  • 2010年度

    余部橋梁【新設】

    (2010年竣工・兵庫県)

    旧余部橋梁の架け替えとして新設された全長約310mの5径間連続PC箱桁エクストラドーズド橋。設計耐用期間100年を確保した。
    既設線路との接続工事においては、重量3,820tの桁を横移動・回転架設する工法により、運休期間の短縮を図った。

  • 2014年度

    太田川大橋【新設】

    (2014年竣工・広島県)

    太田川大橋は、橋長412m(最大支間116m)の6径間連続鋼・コンクリート複合アーチ橋である。施工は、PC箱桁の張出し架設の途中でアーチ主構を台船で一括架設した後、アーチ主構から鉛直材で支持しながら行った。

  • 2012年度

    阿波しらさぎ大橋【新設】

    (2012年竣工・徳島県)

    阿波しらさぎ大橋は、橋長575mの4径間連続ケーブルイグレット橋、および橋長350m、橋長366mの5径間連続ラーメン鈑桁橋2連からなる全長1,291mの道路橋である。世界初のケーブルイグレット形式は、ケーブルを張った外観が徳島県の県鳥である白鷺(イグレット)の羽ばたきに似ていることから命名された。

  • 2008年度

    矢部川大橋【新設】

    (2009年竣工・福岡県)

    3径間連続PC斜張橋で、中央支間長261mはPC斜張橋として国内最長。
    本橋の基礎は、国内で最大深度となる掘削深度49.5mのニューマチックケーソンが採用された。

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今後も橋梁技術の開発に磨きをかけ、社会やお客様の期待を超える価値の提供に努め、社会資本整備に貢献していきます。

小名浜マリンブリッジ(福島県)

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