走行台車付きダブルワイヤーソーで合成桁コンクリート床版を高速水平切断

~切断作業時間を従来工法比45%短縮~

  • 土木

2022.06.08

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、既設高速道路の大規模更新工事の主体となる合成桁のコンクリート床版取替工事の生産性向上を目的に、ワイヤーソーによる床版水平切断作業の高速化・精度向上に寄与する「走行台車付きダブルワイヤーソー工法」を開発しました。この工法は、2体の駆動プーリー(滑車)を配備した高性能ワイヤーソーと、レール上を移動する走行台車を組み合わせた切断装置により、切断精度の向上と作業工程の簡略化を図るもので、切断作業に要する時間を従来工法と比べて大幅に縮減できます。

高度成長期に建設された高速道路インフラの老朽化が懸念される中、床版の取替や桁の補強を主体とする大規模更新工事の需要が増加しています。鋼桁とコンクリート床版を一体化した合成桁の床版取替工事では、既設コンクリート床版の撤去に要する時間が全作業の約3割を占めており、工事全体の生産性向上には同作業の効率化が不可欠です。

合成桁の床版撤去作業では、まず桁間のコンクリート床版を垂直に切断して先行撤去した後、桁上に残るコンクリート構造物をワイヤーソーで水平切断します。その際、ワイヤーの緩みに起因する桁の損傷を防ぐため、通常、桁の上端から50mm程度の厚さを残して切断作業を行い、最後に、桁上に残ったコンクリートをウォータージェットで除去します。これらの作業効率を高めるうえで、ワイヤーソー切断の高速化のほか、ウォータージェットによるコンクリート除去量の削減が課題となっていました。また、従来工法では主に固定式のワイヤーソー切断装置を利用していたため、装置を都度移設する必要が生じ、装置の分解・組立に多くの手間と時間を要していました。

当社が開発した「走行台車付きダブルワイヤーソー工法」の切断装置は、ワイヤーソーの回転速度を向上させる2体の駆動プーリーと、切断高さを保持するガイドプーリーの働きにより、水平切断の高速化および高精度化を実現しています。このため、桁上床版の切断ラインを桁の上端からわずか20mmに設定でき、ウォータージェット作業の大幅な削減と時間短縮が図れます。また、床版上に敷設した走行用レールの長さに応じて連続的に切断作業が行えるため、装置の移設作業の回数を最小限に抑制できます。

本工法の適用による切断作業時間の短縮効果は、従来工法との比較で約45%に達する見込みです。当社は今後、合成桁床版の切断作業への本工法の適用を促進し、高速道路更新工事の生産性向上につなげていく考えです。

以上

≪参 考≫

ワイヤーソー工法

コンクリート構造物にダイヤモンドワイヤーを環状に巻き付け、駆動プーリーでワイヤーに張力をかけながら高速回転させることで構造物を切断する工法。

合成桁床版撤去作業の手順

合成桁床版撤去作業の手順

ダブルワイヤーソー工法の切断装置

ダブルワイヤーソー工法の切断装置

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