
宇宙開発
小型ロケット打ち上げ事業への参画
清水建設が先端研究として宇宙開発に取り組みはじめたのは1987年。35年の時を経て、当社の宇宙開発は、研究開発からビジネスのステージに変わりました。現在、当社を含む異業種の4社が中心となり、小型人工衛星“専用”ロケットの開発、打ち上げの事業化を推進しています。
宇宙への宅配便
昨今、世界中の民間企業による宇宙の利活用が急速に進んでいます。インターネット網の構築や気象観測、地球観測など、さまざまな目的で小型衛星が打ち上げられており、今や宇宙は民間ビジネスのフィールドになりつつあります。このような状況の中、2018年7月、小型ロケットによる商業宇宙輸送サービスの提供を目指し、キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の共同出資で「スペースワン株式会社」(以下、スペースワン)を設立しました。

スペースワンの強みは、専用の発射場で、専用の小型ロケットを打ち上げることで、小型衛星を衛星事業者の希望する時期に、希望する軌道にダイレクトに届けられることです。利便性の高い宇宙輸送サービスの提供を目指しています。
日本初、民間所有のロケット発射場の建設
異業種の4社が中心となり、それぞれの知見とノウハウを提供、共有して開発に取り組む本事業。清水建設は、小型ロケットの組み立てと打ち上げを行う発射場の建設計画、施工において、重要な役割を担いました。
スペースワン専用発射場の建設のためにまず必要なことは、建設地の確保でした。単に必要面積を満たしていればよいわけではなく、南方に陸地や島がないこと、陸路での輸送に適していること、建設予定地の周辺に人家がないこと、そして、地元住民に歓迎されることなどの条件を満たす必要がありました。

これらの諸条件に合致したエリアが、和歌山県串本町田原地区です。本州の最南端に位置する同地区には南方に陸地や島がなく、陸路での輸送も問題なく行うことが可能です。2019年11月に建設地で起工式を執り行い、発射場を「スペースポート紀伊」と命名。2022年3月から運用が開始され、民間企業が所有する日本初のロケット発射場が誕生しました。
発射場の維持管理をシミズグループが担っており、ロケット開発の知識が豊富な社員がスペースワンに出向し円滑な射場運用に大きく貢献しています。
また、小型ロケットは「カイロス(KAIROS, Kii-based Advanced & Instant ROcket System)」と名付けられています。カイロスの由来は、ギリシア神話に登場する時間の神の名前であり、「チャンス(好機)」を表すギリシア語でもあります。契約から打ち上げまでを世界最短と世界最高の打ち上げ頻度を目指すスペースワンの、世界的に増加する小型衛星の打ち上げニーズに即時に対応し、宇宙輸送サービス事業を成功に導くという強い想いを示すこれ以上ない機体名です。
宇宙事業の成功に向けて
2024年3月、関係者と地域全体の想いを乗せて打ち上げられた初号機は数秒後に自律安全装置が作動し飛行を中断しました。そして2024年12月、初号機打ち上げから9か月という驚異的なスピードで2号機の打ち上げに漕ぎつけました。上空の強風による2度の延期を経て12月18日、ついにリフトオフ。宇宙空間といわれる高度110km超まで到達したものの、衛星の軌道投入には至らず再び飛行を中断するという結果に終わりました。
清水建設は1987年の取り組み開始以来、宇宙開発を未来に向けての“シミズ・ドリーム”の一つとして位置付け、長年にわたり取り組んできました。しかし、今や“シミズ・ドリーム”は夢物語ではありません。近い将来のリアルな事柄、達成すべきプロジェクトとして、シミズの宇宙事業への挑戦は続きます。

記載している情報は、2025年4月25日現在のものです。
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