トンネル新時代「シミズ・スマート・トンネル」で
現場の生産性・安全性を向上
日本で初めて掘られたトンネルは、1764(明和元年)年に開通した青の洞門(大分県)と言われています。その後、明治から昭和に至る全国のインフラ整備に伴い、数多くのトンネルが造られ、掘削技術が磨かれました。 この50年で、トンネル技術は飛躍的に向上し、構造物の大きさに見合う機械の大型化がほぼ終了しました。そんな中、シミズは、ICT、IoT、AIなどの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の開発に着手し、現在、システムを構成する要素技術の開発を進行中です。全体システムは2020年度中の完成を予定しています。
さまざまな要素技術を組み合わせて
「シミズ・スマート・トンネル」は、トンネル建設工事の従事者や建設機械、作業環境、建設地周辺の自然環境などのあらゆる情報を集約し、AI解析に基づくガイダンス情報をリアルタイムに現場へフィードバックすることで、トンネル現場の施工における生産性と安全性の向上を目指す、デジタルツイン統合管理システムです。
本システムは統合管理システムであり、多くの要素技術とその組み合わせで構成されます。
シミズ・スマート・トンネルの要素技術の一例
余掘り量低減システム「ブラストマスタ」
発破掘削によって生じる余掘り(トンネル掘削で本来掘削すべき設計断面より広く掘削したため余分に生じる掘削量のこと)と呼ばれる無駄を低減する技術。
余掘り量を従来比で40%以上低減することができ、生産性の向上が期待できます。
切羽崩落振動監視レーダーシステム
振動可視化レーダー技術を用いて、切羽断面の振動をモニタリングするシステム。切羽崩落の予兆を検知した際には、アラートを発報し、退避を促します。これにより、山岳トンネル工事における切羽崩落災害の根絶を目指します
行動モニタリングシステム
特殊カメラを用いて、狭隘なトンネル坑内での機械と作業員の位置や動線情報を3次元データで取得し、作業方法や作業環境を評価・分析。安全性の向上に寄与します。
覆工コンクリート自動締固め
セントルと呼ばれる移動式型枠に総数60台のバイブレータを設置し、打ち込んだコンクリートの高さのバイブレータを自動制御してコンクリートを締め固める技術です。
従来、コンクリートの締め固めは、狭隘な作業空間で移動も多いことから作業負担が重く、転倒や転落、疲労に伴う注意力低下に起因する災害も起きていました。当技術の開発により、作業の省力化と同時に安全性の向上も図ることができます。
移動式型枠(セントル)を使った覆工コンクリ-ト施工状況(左)と型枠バイブレータ(右)
リアルタイム遠隔立会システム
タブレット端末を活用して、遠隔地にいる工事関係者でトンネル坑内のライブ映像と検査データをリアルタイムで確認しながら、品質・出来形検査の実施を可能にする技術です。
当技術の開発により、発注者の検査員が長時間かけて現場に赴くことなく品質・出来形検査を行うことができ、また自席のパソコンで検査結果の確認・承認をすることができます。
現在、西日本高速道路と共同で、和歌山県の山岳トンネル工事の品質・出来形検査の一部を対象に、試験運用を行っています。
骨伝導ヘッドセット
トンネル内の騒音下においても、入坑者が防じんマスクや防音耳栓を着用したままの状態で円滑にコミュニケーションできる通話システムです。使用者がマスクを着用したまま通信相手の名前を声にすると、音声認識AIアプリが自動的に機能して、単数あるいは複数の相手を選定し、自由に通話することができます。
これらの要素技術は,全国のトンネル建設現場で実証試験を行うだけでなく,PRISM(官民研究開発投資拡大プログラム)にも積極的に参画することで,開発を推進しています。
※PRISM(Public/Private R&D Investment Strategic Expansion PrograM)
良質な社会インフラの整備に寄与
今後想定される、熟練の建設技能労働者の大量離職を見据えて開発を進めている「シミズ・スマート・トンネル」。
高度なデジタル技術を導入し、現場の生産性・安全性の向上を図ることで、良質な社会インフラの整備に寄与していきます。
記載している情報は、2019年12月25日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。