病院づくり

「Withコロナ」時代、患者・スタッフのための安全で快適な環境づくり

透析室(三愛記念病院) クリーンコンポ デュアルエアー®(松戸市立総合医療センター)

病院づくり 「Withコロナ」時代、患者・スタッフのための
安全で快適な環境づくり

(左)透析室(三愛記念病院)

(右)クリーンコンポ デュアルエアー®(松戸市立総合医療センター)

シミズは1970年代から業界に先駆けて、「医療福祉専門チーム」を発足させ、半世紀にわたり病院づくりに携わってきました。設計部門では、意匠設計だけでなく、構造設計、空調・衛生機械設備設計、電気設備設計のエンジニアも多くの実績を積み、高度なノウハウを蓄積しています。その一つが、空調や照明の技術です。
シミズが独自に開発した技術を用いて「安全な医療環境」「患者にとって快適に療養できる環境」「医療スタッフが快適に働ける環境」をつくり出した事例を紹介します。

気流を感じさせない放射空調の4床室
感染リスクの低減と快適な医療環境を両立

最初に紹介するのは、順天堂大学医学部 附属順天堂医院B棟(東京都)の4床室です。空調システムなどに工夫を凝らすことで、感染リスクの低減と快適な医療環境とを両立させました。
ここでは、すべての病室に、パネルからの放射熱を冷暖房として用いる放射空調方式を採用。気流が少なく、放射された熱が直接伝わる仕組みのため、寝ている患者の足先の冷えが軽減される快適な温熱環境、空調音が抑えられた静かな環境を生み出すことができます。

また、この放射空調に、部屋の中央から各患者のベッドへと一方向の流れをつくる換気方法と、ベッド間の間仕切り家具を加えることによって、「空気」による感染リスクを低減することができます。この間仕切り家具は、使いやすい位置に手指消毒液や手袋、マスク、エプロンが備えられるようになっていて、患者用収納上部は光を通す窓となっているので廊下側のベッドにも自然光が届きます。
空調としつらいで、感染から患者を守る、快適な療養環境を創出しました。

順天堂医院B棟
※平成29年度 空気調和・衛生工学会賞 技術賞
 建築設備部門 受賞

また、この放射空調に、部屋の中央から各患者のベッドへと一方向の流れをつくる換気方法と、ベッド間の間仕切り家具を加えることによって、「空気」による感染リスクを低減することができます。この間仕切り家具は、使いやすい位置に手指消毒液や手袋、マスク、エプロンが備えられるようになっていて、患者用収納上部は光を通す窓となっているので廊下側のベッドにも自然光が届きます。
空調としつらいで、感染から患者を守る、快適な療養環境を創出しました。

順天堂医院B棟の4床病室

順天堂医院B棟の4床病室 順天堂医院B棟の4床病室

※PPEボックス…マスク、グローブ、エプロン等、院内感染予防の個人防護具(Personal Protective Equipment)を収めた収納ボックス。

気流を感じさせない放射空調システムを採用。本システムに、中央の吹出口から各ベッド上部の吸気口へ向けた換気や、ベッド間間仕切り家具を組み合わせることで、「空気」による感染リスクを抑えられる。間仕切り家具には光を通す窓を設け、快適な環境を確保している

対流空調システムと放射空調システムとの足の温度比較(被験者実験)

対流空調システムと放射空調システムとの足の温度比較(被験者実験)

対流空調と放射空調を比較すると、放射空調の方が足の表面温度の低下幅が小さく、冷えが起こりにくい

対流空調システムと放射空調システムにおける微粒子の拡散状況(シミュレーション)

対流空調システムと放射空調システムの空気拡散状況(シミュレーション)

4床室において、1つのベッド上から結核菌と同様の微粒子が拡散する状況についてシミュレーションを行った。対流空調に比べ、放射空調は他のベッドに気流が広がりにくく、感染リスクが低減できると考えられる

活動量が違うスタッフと患者の快適温度に合わせ
エリアごとに空調方式を使い分けた透析室

続いて紹介するのは、医療法人緑栄会三愛記念病院(千葉県)です。
ここでは70床の大規模な透析室を2室整備しました。透析室中央にはスタッフステーションを置き、その両側に透析ベッドを6~8床の小規模ユニットに分けて配置しています。スタッフが患者の異変や透析機器のアラームに気付きやすいようにするとともに、患者が大空間で感じるストレスを軽減し、落ち着いた感覚を得られるようにという配慮です。

活動量の多いスタッフとベッド上で安静を保つ患者とでは、快適と感じる環境が異なります。そこで、スタッフステーションには気流により涼しく感じる対流空調を、患者エリアには気流を感じさせずに快適な温度を保つ放射空調を採用しています。
照明は、光源が天井を見上げる患者の目に入らないよう間接照明を基本にしつつ、直接照明も組み込んで、場面によって明るさを変えられるようにしました。透析開始前の準備時には直接照明を点灯。透析中は、間接照明とベッドごとに設けた読書灯を枕元のスイッチで点けられるようにしました。
スタッフにも患者にも快適な環境を提供するこれらの技術は、化学療法室などにも活用できます。

順天堂医院B棟
三愛記念病院

活動量の多いスタッフとベッド上で安静を保つ患者とでは、快適と感じる環境が異なります。そこで、スタッフステーションには気流により涼しく感じる対流空調を、患者エリアには気流を感じさせずに快適な温度を保つ放射空調を採用しています。
照明は、光源が天井を見上げる患者の目に入らないよう間接照明を基本にしつつ、直接照明も組み込んで、場面によって明るさを変えられるようにしました。透析開始前の準備時には直接照明を点灯。透析中は、間接照明とベッドごとに設けた読書灯を枕元のスイッチで点けられるようにしました。
スタッフにも患者にも快適な環境を提供するこれらの技術は、化学療法室などにも活用できます。

透析室のレイアウト(三愛記念病院)

透析室のレイアウト(三愛記念病院)

中央のスタッフステーションの周りに6~8床のユニットが並ぶ。ステーションからすべてのベッドを見守ることができ、アクセスもしやすい

患者エリアとスタッフエリアの空調方式(三愛記念病院)

患者エリアとスタッフエリアの空調方式(三愛記念病院)

スタッフと患者では、活動量の違いから快適と感じる温熱環境は異なるため、中央のスタッフステーションは対流空調、その両側の患者エリアは放射空調と、工リアによって空調方式を使い分けている

透析室のスタッフステーション(三愛記念病院)

透析室のスタッフステーション(三愛記念病院)

患者エリアとの間に垂れ壁を設け、対流空調の気流が行かないようにした

透析準備時の患者エリア
患者エリアには放射空調を採用。また、透析開始前の準備時に明るくできるよう、天井に直接照明を組み込んだ
透析中の患者エリア
透析中は、ベッドに横たわる患者の目に光源が入らないように、天井に組み込んだ間接照明を点灯。各ベッド脇上の天井面には調光可能な読書灯も設置している

2つの気流ですべてのスタッフに快適温度を実現
手術室空調システム「クリーンコンポ デュアルエアー®

最後に、手術室内の温熱環境と清浄度を向上させる新しい手術室空調システム「クリーンコンポ デュアルエアー®」を紹介します。既に、大学病院や地域中核病院など4病院・39室に導入済みです。
この空調システムは、同じ部屋の中に、「術野(手術部位の視野)エリア」とは別系統の「周囲エリア」の空調を新たに加えることで、手術台近くにいる執刀医らと、周囲で作業しているスタッフの両方が快適に感じる温熱環境を同時に実現するものです。
活動量の異なる二者それぞれに快適な温度を設定できるように空調の系統を分け、混じりにくい二つの空気の流れをつくります。水平旋回流によって、従来方式では周囲エリア上方に発生しがちだった空気のよどみを解消できます。すべてのスタッフが快適に働ける温熱環境と、クリーンな空気環境を同時に生み出せる空調システムとなっています。
術野エリアの空気の流れは、術野上部にある吹出口から垂直に吹き下ろし、壁面下部に設けた吸気口から吸い込んで循環します(垂直下降流)。この気流に壁上部にある吹出口から壁に沿って旋回する気流(水平旋回流)を、術野系統と混じらないように加えました。手術室内に、同時に二つの異なる温度帯をつくり出したのです。
※令和元年度 空気調和・衛生工学会賞 技術賞 技術開発部門 受賞

「クリーンコンポ デュアルエアー®」の概念図

「クリーンコンポ デュアルエアー®」の概念図

手術室の術野エリアと周囲エリアで空調を2系統に分けて、混じり合わない二つの気流をつくっている

術野系統の吹出気流(垂直下降流)

術野系統の吹出気流(垂直下降流)

周囲系統の吹出気流(水平旋回流)

周囲系統の吹出気流(水平旋回流)

従来の空調システムの課題

従来の空調システムの課題

手術台近くの執刀医らとは活動量が違うため、従来の空調方式では周囲のスタッフが寒さを感じやすく、壁際上方には空気のよどみが生じていた

「クリーンコンポ デュアルエアー®」導入による改善点

「クリーンコンポ デュアルエアー®」の改善点

従来の空調に、別系統で壁に沿って旋回する気流を生み出す空調をプラス。術野と周囲エリアそれぞれに快適な温熱環境をつくり出すとともに、壁際上方のよどみを解消し、よりクリーンな環境を実現する

シミズはこれまで、院内感染リスクの低減について、エビデンスに基づいて真剣に取り組んできました。
「With コロナ」時代と言われる今、感染リスク低減へのニーズは、さらに高まってきています。
私たちはこれからも、病院の利用者や、そこで働くすべての人にとって安全で快適な環境をつくる建築設備技術を生み出し、最適な病院づくりをご提案していきます。

記載している情報は、2020年7月8日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

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