足下に隠されたBCPのカギ
大地震による被害を軽減する上で、施設の免震化は効果の高い対策の一つです。しかし、施設全体の免震化は、コスト負担が大きく、工期も長くなりがちです。そこで次に考えられるのが、施設の重要部分のみを免震化する対策です。例えば、病院では手術室などの免震化が、また生産施設や物流施設では重要機器や装置の免震化がBCP(事業継続計画)の鍵となります。
重要な部屋を床免震でまもる
病院の手術室や、オフィスのサーバールームなど、機能維持の観点から重要となる部屋については、部屋の床全体を免震化する対策が考えられます。
シミズ安震フロア
シミズ安震ロアは、薄い鋼板2枚を重ねただけのシンプルな構造の床免震システムで、地震時には上部の鋼板がスライドすることで高い免震効果を発揮します。装置の厚さはわずか5mm弱(フロアプレート:1.6mm+免震プレート:3.2mm)であり、新築はもちろん、既存の床上にそのまま設置することが可能です。また、非常にシンプルな構造のため、一般的な床免震と比較してローコスト(1/2~2/3)であり、工期も手術室の場合なら1室(75m2)あたり10日間程度です。
(家庭向け震災対策マニュアル)
重要な設備や装置を個別にまもる
物流施設では立体自動倉庫のラック架台に対する部分免震が、また生産施設では電力を供給するキュービクルなどの重要設備機器に対する機器免震が考えられます。
ラックベーススライダー
ラックベーススライダーは、ラック架台のコンクリート基礎と建物の床の間に設置する免震装置です。この装置は、地震の揺れが伝わらないようにラック架台がレール上をスライドする仕組みになっていて、2本のレール状部材を直交するように組み合わせることで、あらゆる水平方向の揺れに対し免震効果を発揮します。また、部材表面に施した特殊加工と部材につけた傾斜により、揺れを収束させる減衰効果はもちろん、ラック架台を元の位置に戻す復元効果も備えています。
ラックトップダンパー
ラックトップダンパーは、ラック架台の最上段に設置した錘(おもり)の動きで地震の揺れを打ち消すTMD(チューンド・マス・ダンパー)タイプの制震装置で、X軸、Y軸の2方向に錘が独立して動くことで、360°の揺れに対して高い制震効果を発揮します。本装置の設置は、通常の荷物同様、立体自動倉庫の搬送システムを使ってラック架台の所定の棚まで運び、ボルトで固定するだけであり、営業しながらの設置も可能です。
安震スライダー
安震スライダーは、対象物の架台とその基礎との間に特殊な免震装置を設置することで、震度6強を超える大地震時においても、対象物への入力加速度を0.3G程度に低減するものです。また、大地震には免震機能を発揮する一方、強風には反応しないなど、屋外に設置する設備などに最適な機器免震システムとなっています。生産施設や病院などのキュービクルへの適用はもちろん、屋内に設置されたサーバーや精密部品のストッカー等に対しても適用可能です。
東京部品工場の被災により部品供給が途絶えるため、その下流に位置する埼玉事業所、東京事業所、神奈川事業で波及被害(グラフ■)が生じることが予想されます。
被害総額:108.3億円
地震被害を低減するために、各施設の在庫日数を3日から21日に増やした場合の結果を示しています。
在庫日数を増やすことにより、他施設の被災による波及被害がなくなります。
被害総額:78.0億円
直接被害や間接被害を低減するために、予測2に対してさらに東京事業所と神奈川事業所の耐震補強を行った場合を示しています。
直接被害と間接被害がさらに低減されます。
被害総額:60.3億円