天井裏に隠されたBCPのカギ

2011年の東日本大震災では、天井や壁、間仕切りなど、非構造部材の被害が多数報告されています。中でも、生産施設や物流施設などでは、天井の落下により事業継続に大きな支障をきたした事例が多く見受けられました。お客様の事業をまもるためのBCP(事業継続計画)の鍵は、天井や壁、間仕切りなど、つい見落としがちな場所にも隠されています。

既存天井を撤去し、耐震天井を新設

最適な耐震対策は天井の仕様や特性により異なりますが、一般的な対策としては既存天井を一旦撤去して耐震天井を新設することが考えられます。

シミズ新耐震天井

シミズ新耐震天井は、これまでの吊り天井の構造形式をベースに開発した、大地震時でも天井を落下させない新たな構造形式です。天井の補強ポイントごとに耐震ブレースを配置するとともに、部材の接合部を耐震クリップや耐震ハンガーなどで固定して耐震性を高めるもので、生産施設などに用いられる在来天井の落下防止に有効です。従来耐震天井に比べて部品点数を4〜5割少なくできコストダウンが可能です。

シミズ新耐震天井

SDクリップレス工法

SDクリップレス工法は、これまでの吊り天井の構造形式を抜本的に見直して開発した、耐震性と施工性に優れた次世代耐震天井です。野縁と野縁受を一体化した下地材により地震時に脱落しやすいクリップを排除するとともに、耐震ブレースにより天井の揺れそのものを抑制する構造となっています。部品点数がシミズ新耐震天井の約半分、施工性が20〜50%向上するため、工期を10〜20%短縮することが可能です。

SDクリップレス工法

リニアブレース工法

リニアブレース工法は、特定天井※を低コスト・短工期かつ高剛性で構築する耐震天井構工法です。専用の固定金物で耐震ブレースの上端と下端をそれぞれ上階スラブなどの構造部と天井ボードに固定し、耐震ブレースを天井面積20〜25m2に一対の割合で配置することで、特定天井に必要な耐震性能を確保します。長工期・高コストになりがちな特定天井を、一般的な吊り天井と同程度の工期のまま、従来工法よりも低コストで構築することが可能です。

リニアブレース工法

特定天井
脱落によって重大な危害が生じるおそれのある吊り天井(高さが6mを超え、面積200m2超、質量2kg/m2超で、人が日常利用する場所に設置されているもの)。国土交通省により技術基準が定められている。

Column
地震の揺れで吊り天井が落ちるのはなぜ?
直接的な原因は、吊り天井の構造そのものにあります。吊り天井は、天井本体である石膏ボードが下地材(野縁)にビス留めされ、下地材に直交する形で建物の構造部材からぶら下がる吊り材(野縁受け)とクリップで連結されています。簡単に言えば、このクリップが地震時の揺れで破損することが、吊り天井落下の原因です。
また、より根本的な原因は、建物の構造体と天井が異なる周期で別々に揺れてしまうことです。お互い別々に揺れるため、建物の構造体と天井は衝突を繰り返し、その結果として想定を超える大きな力がクリップを破損させてしまうのです。
そもそも吊り天井は、1950年代に活発化した高層建築とともに、当時最先端のシステム工法として急速に普及したものです。合理的かつ経済的な工法であり、現在に至るまでこれに取って代わる工法が現れることもなく、その基本的な構造は50年以上も変わっていません。これまでは、大地震によって、建物そのものが倒壊するなどの大きな被害を受けてきたため、天井の落下被害に気づくことができなかったのです。

既存天井を残したまま耐震化

さまざまな事情により既存天井を撤去できない場合は、既存天井を残したまま耐震化することが考えられます。また、歴史的建造物などの天井については、特殊な改修工法が必要となります。

グリッドサポート工法

グリッドサポート工法は、わずか2種類の部材を使用して、既存吊り天井の落下を防止する耐震改修工法です。施設の用途を問わず適用可能で、施設を使用しながら工事が行える上、天井を張り替える既存工法に比べて費用を20〜40%、工期を20%程度削減することができます。また、廃材の発生量も少なく抑えます。

グリッドサポート工法

歴史的建造物などの特殊な天井

歴史的建造物の左官仕上天井や木造天井などの場合は、外観の保存や歴史的価値の継承に配慮した改修が必要となるため、ケースごとに最適な工法を検討する必要があります。例えば、ホテルニューグランド 本館(横浜市歴史的建造物、経済産業省 近代化産業遺産)の耐震改修工事では、天井が歴史的建造物の保存部位に指定されていることから、意匠が変わらないように補強し、歴史的価値の保存・継承と耐震性の向上を両立しています。

耐震改修工事前
耐震改修工事前
耐震改修工事後
耐震改修工事後
Column
どの耐震補強を選べばいいの?
天井耐震改修工法は、対象とする天井の種別(特定天井とその他の天井)や、既存天井を残す、残さないによって、概ね以下の表のような区分けとなります。
今回ご紹介した技術の他にも、当社は、既存吊り天井の耐震診断から耐震改修に至るまで、豊富な対応メニューを取り揃えており、お客様の施設やニーズに最も適した天井の耐震改修をご提案します。

工法概要

撤去して天井を建物と一体化 適用の目安
ぶどう棚直貼り天井

建物構造体に緊結して一体化した骨組(ぶどう棚)に天井材を直接取り付ける工法です。複雑な形状や重い天井板にも適用できます。

特定天井 その他天井
撤去して軽量柔軟な天井を新設 適用の目安
膜天井

軽量柔軟な膜材を枠材に張りつけ又は垂下させて天井としたもので、地震力が小さくなると同時に、万が一の天井落下の際にも被害を軽減することができます。

特定天井 その他天井
撤去して耐震天井を新設 適用の目安

従来の吊り天井に改良を加え、耐震性をより強化するとともに施工性を向上させた天井システムです。

シミズ新耐震天井特許出願中

天井下地金物に耐震性の高い金物を用いて構成した工法です。

SDクリップレス工法特許出願中

吊り天井の構成部品を合理化し、クリップを使わない新しい工法です。

注:水平震度0.5G程度まで

特定天井 その他天井

※注
リニアブレース工法特許出願中

天井ボード材に斜め部材(ブレース)を直接固定することにより、耐震性を向上させた天井です。特定天井だけでなく、高い耐震性の必要なその他天井にも適用可能な技術です。(外部軒天井、不整形な天井を除く)
新築および既存建物の新設天井を対象に、日本建築センターより一般評定取得

既存撤去 適用の目安
天井撤去

既存天井を撤去し、新たな天井は設けない方法です。
(撤去後の防火機能や温熱環境、音環境については別途考慮が必要です。)

特定天井 その他天井
既存天井を残したまま耐震化 適用の目安
グリッドサポート工法特許出願中

既存天井の直下に、構造体に支持された格子状のフレームを取りつけることで、高い耐震性を付与します。

GBRC 技術性能証明取得

特定天井 その他天井
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既存天井を残したまま落下防止 適用の目安
フェイルサポート工法

既存天井の直下に、構造体に接合されたサポート材とネットを取付け、天井の落下を防止する工法です。

特定天井 その他天井
ネット張り

既存天井の下面に建物構造体に固定した枠フレームとネットを構築し、天井材や設備の室内への落下を防止する工法です。

金具・ワイヤー付加による落下防止

落下防止ワイヤー付の金物やビスによる固定金具を取付け、天井材や設備の落下を防止する工法です。

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特殊な工法 適用の目安
歴史的建造物などの特殊な天井

歴史的建造物の左官仕上天井や木造天井など、外観の保存や歴史的価値継承に配慮した改修に対しても最適な工法を提案します。

条件により協議

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