生産・物流施設の今

“美”を生み出す生産施設の姿を発注者とともに追求
資生堂 大阪茨木工場 2021.9.21

“美”を生み出す生産施設の姿を発注者とともに追求 資生堂 大阪茨木工場

生産・物流施設の今 “美”を生み出す生産施設の姿を発注者とともに追求
資生堂 大阪茨木工場
2021.9.21

工場や物流センターなど、これまで機能別に分かれていた施設を統合して効率化を進める動きが始まっています。
資生堂の新たな旗艦拠点が、当社の設計施工により大阪茨木市に完成しました。原材料の入出庫から、製品の生産、保管・出荷までの機能を一体で行えるよう、分棟せずに1棟に収めています。同社のものづくりの姿勢を広く発信するため、見学者を迎える施設も備えた本工場について紹介します。

長辺が300m、1棟化した巨大建屋

大阪茨木工場は、資生堂スキンケア化粧品の製造と物流を担う、グローバルサプライチェーンの一大拠点です。インバウンドやアジアにおいて日本製化粧品の人気が高まる中、生産体制を増強し、優れた品質を持つ「メイド・イン・ジャパン」ブランドを、ここから国内外へ発信していく狙いです。
シミズは設計施工のコンペにより、本工場の設計業務と建設工事を受注、その後プラント工事も受注しました。

建物の特徴は、生産棟、自動倉庫、物流棟、そして工場見学者を迎える迎接棟を、完全一棟化したことです。これにより、原材料の入出庫や保管、工場で生産した商品の保管・出荷までを効率的に連動して行うことが可能になります。また、各棟がつながっていて隙間がないため、虫などの異物混入防止も図ることができます。

生産棟、自動倉庫棟、物流棟を1棟化した資生堂の大阪茨木工場。手前の迎接棟と奥の食堂棟では高低差が13.5mある
生産棟、自動倉庫棟、物流棟を1棟化した資生堂の大阪茨木工場。手前の迎接棟と奥の食堂棟では高低差が13.5mある
生産棟、自動倉庫棟、物流棟を1棟化した資生堂の大阪茨木工場。手前の迎接棟と奥の食堂棟では高低差が13.5mある
生産棟、自動倉庫棟、物流棟を1棟化した資生堂の大阪茨木工場。手前の迎接棟と奥の食堂棟では高低差が13.5mある

課題は、地盤高低差13.5m、かつ傾斜支持層という複雑な地盤条件に対し、長辺300m、短辺100mの大規模生産・物流施設をいかに実現するかでした。敷地南の低地側に生産・物流機能を集め、住宅エリアに接する北の高地側に低層の食堂棟などを配置。近隣から見て圧迫感を与えない建物の見え方にも配慮しました。
食堂棟と生産棟とは、緩やかなカーブを描いた渡り廊下で繋ぎ、スロープとすることで床のレベル差を解消しました。

設計を担当した設計本部の伊藤智樹はこう振り返ります。
「高い階高で積載荷重も大きい物流棟、高さ30mのラックを納める自動倉庫棟、生産プロセスで各階高が変化する生産棟。異なる特性の一体化は、設計上の難題でした。建築の合理性が、構造や設備の合理とは必ずしも一致しない。建物の機能と性能を両立させる鍵は、そのバランスにあります。建築、構造、設備、その全ての計画の融合を図ることに注力しました」。

設計本部 生産・研究施設設計部1部 グループ長の伊藤智樹
設計本部 生産・研究施設設計部1部 グループ長の伊藤智樹

“資生堂マインド”を共有できる場を創造する

発注者の要望の一つが「工場らしく見えない工場にしたい」というものでした。生産棟4階では、充填室でボトリングされた製品が隣の仕上げ室でパッケージングされ、自動昇降機から上部のコンベアを通じて物流棟へと流れていきます。その床には従来の工場のイメージを覆す薄いピンク色を採用。迎接棟の見学者通路からは、一面のピンクを背景に、製品ができ上がっていく流れを間近に見学することができます。

生産棟4階仕上室の床はピンク。化粧品の生産現場らしい雰囲気を醸している。奥のガラス面から見学者は様子を見ることができる
生産棟4階仕上室の床はピンク。化粧品の生産現場らしい雰囲気を醸している。奥のガラス面から見学者は様子を見ることができる

一般的な生産施設と比較して、社員の福利厚生を非常に重視した施設であることも特徴的です。
本工場で働く女性800人、男性400人のための巨大な更衣室を用意。各ロッカーはスペースを広く取り、間にはベンチを設置。更衣室内にはシャワールーム、洗面コーナー、パウダーコーナーも用意しました。

化粧コンパクトを連想させる華やかなカラーで彩られた生産棟6階 更衣室
化粧コンパクトを連想させる華やかなカラーで彩られた
生産棟6階 更衣室
生産棟6階 パウダーコーナー
生産棟6階 パウダーコーナー

食堂棟はシンボリックな円形をしています。「生産施設というと四角いイメージがありますが、リラックスする場所は角のない丸い建物にしたいと提案したところ、お客様に非常に気に入っていただきました」と話すのは、設計本部の中野 舞。
「『明日もまた来て仕事をしたい』と思えるような、愛着の湧く施設を創造することが、私たちの役割だと思っています」。

設計本部 生産・研究施設設計部1部の中野 舞
設計本部 生産・研究施設設計部1部の中野 舞

食堂棟の内部は、偏心した三つの円が重なった複雑な構成になっています。構造的にも工夫を凝らし、鉄筋コンクリート造と鉄骨トラスを併用することで、37mの無柱空間を実現。外構の緑を見渡せる開放感あふれる建物構成として、生産・物流施設から来た従業員がリフレッシュできる空間としました。

外構の緑を見渡せる開放感あふれる建物構成として、生産・物流施設から来た従業員がリフレッシュできる空間としました。
円形の食堂棟
円形の食堂棟
37mにわたって柱に遮られることなく緑を見渡せる食堂。開放感のある吹き抜けの空間となっている
37mにわたって柱に遮られることなく緑を見渡せる食堂。開放感のある吹き抜けの空間となっている

「美の旅」へと誘う透明感あふれる迎接棟

来訪者を迎え入れる迎接棟は、企業イメージを発信する場であり、大阪茨木工場の「顔」と言えます。
ガラス面で覆われた巨大なボックスの内部に足を踏み入れると、吹き抜けの空間をエスカレーターや階段が縦横斜めに交差しながら頭上へと延びていきます。

「発注者から、美の旅へと誘う空間にしたいというオーダーがありました。資生堂製品や店舗デザインを手掛ける資生堂クリエイティブ本部との綿密な打ち合わせを繰り返しました。自ら模型を作って提案し、GOサインをいただきました。」(中野)。

透明感を感じさせる迎接棟
透明感を感じさせる迎接棟
建物へ入るとダイナミックな吹き抜け空間が見学者を迎える
建物へ入るとダイナミックな吹き抜け空間が来訪者を迎える
吹抜内を交差する迎接棟のエスカレーターや階段。見学者はここから美への旅を体験する
吹抜内を交差する迎接棟のエスカレーターや階段。見学者はここから美への旅を体験する

資生堂のクリエイティブ本部の皆様とコラボレートしながら大阪茨木工場の最終的な姿を導き、実現した経験は、当社スタッフにとって大きな刺激となりました。

シミズは、生産・物流施設としての機能や性能を追求することはもちろん、発注者のものづくりに対するマインドまで伝えられる施設づくりを目指していきます。

記載している情報は、掲載日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

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