生産・物流施設の今

国内最大級の免震冷凍冷蔵倉庫への挑戦
東京団地冷蔵 北棟、南棟、管理棟

東京団地冷蔵 北棟、南棟、管理棟

生産・物流施設の今国内最大級の免震冷凍冷蔵倉庫への挑戦東京団地冷蔵 北棟、南棟、管理棟2018.12.25

大井ふ頭をはじめとする主要港湾施設からのアクセスに優れる大田区平和島。この地に2018年2月、国内最大級の免震冷凍冷蔵倉庫が完成しました。北棟、南棟の2棟合わせて延床面積約13万5000㎡、収容量約17万8000tもの大きさを誇る免震冷凍冷蔵倉庫の建設は、シミズとしても初の挑戦です。
実現には、これまでに培った巨大倉庫建設のノウハウと、エンジニアリングが生かされています。

大規模な冷凍冷蔵庫を、できるだけ早く

発注者は、東京団地冷蔵株式会社。昭和40年代から平和島で稼働してきた同社の冷凍冷蔵倉庫は、海外から輸入した畜産物などを中心に年間約30万t、東京港に荷揚げされた畜肉の約3割が入庫するなど、首都圏の食を支えているといっても過言ではありません。しかし、長い年月を経て老朽化が進行。周辺道路の整備を含めた物流の効率化を図るためにも、これまで複数に分かれていた冷凍冷蔵庫をまとめたい、さらに、災害時でも首都圏への食の供給を安定して行うというBCPの観点から、免震建物にしたいとの要望がありました。

9棟を南北の2棟にまとめた

建て替え中は、テナントとして入居している企業が一時的に別の保管場所を用意する必要があるため、工期が長引くほど大きな負担となってしまいます。

「日本最大級の免震冷凍冷蔵倉庫を、できるだけ短期間で建て替えたい」。
そんなニーズに対し、当社は社名を冠した「シミズNew RCSS構法」で応えました。

独自の構法と逆転の発想で挑む

「シミズNew RCSS構法」は、高強度コンクリートを使った圧縮に強いRC柱と、長スパン化が可能な鉄骨梁とを独自の接合技術で一体化し、高強度・高耐震性を実現する技術で、柱を少なくして倉庫の収容効率を上げることができます。また、RC柱や免震装置の基礎をプレキャスト化するなど、徹底した工業化によって工期を短縮すれば、発注者のニーズに応えることが可能です。

構造計画のポイント上部構造構法比較

シミズRCSS構法

柱を鉄筋コンクリート造、梁を鉄骨造とする構法。外壁、間仕切は乾式パネル工法となる。

今回採用

  • 大スパン対応可能
  • 工業化による工期短縮
  • 鉄骨梁→躯体の軽量化
  • 施工EXP.J対応可能

PC Pca構法

柱、梁をプレキャストコンクリートとして、柱と梁をケーブルで一体化する構法。

最近の冷蔵倉庫構法

  • 大スパン対応可能
  • 工業化による工期短縮
  • 躯体重量大
  • 施工EXP.J対応困難

フラットスラブ構法

スラブに打ち込んだPC鋼材を引っ張り、応力を制御して梁をなくす構法。

旧来の冷蔵倉庫構法

  • 大スパン対応困難
  • 工業化対応困難
  • 躯体重量大
  • 施工EXP.J対応困難

柱を少なくすることで多くのパレットが収容可能。柱はプレキャスト化(工場生産)のため工期を短縮できる

一方、課題となったのが、冷蔵倉庫内の冷却によって生じる、躯体(コンクリート、鉄骨)の“収縮”でした。コンクリートや鉄は温度によって伸縮する特徴があるため、国内最大級の規模を誇る北棟においては、常温から−25℃まで冷却すると、建物全体が12㎝ほど縮んでしまうのです。

設計本部 生産・研究施設設計部 グループ長の松本英治
設計本部 生産・研究施設設計部 グループ長の松本英治

この課題に対し、プロジェクトを担当した設計本部の松本英治は「冷却によって躯体が縮むのなら、躯体を分割した状態で冷却し、十分に縮んでから接合すればいいのでは?という逆転の発想で挑みました」と語ります。

解決策として行ったのは、253mの上部躯体を3ブロックに分けて建設するということ。完成後、分割したブロックの接合部をスライド可能な状態にして冷却し、躯体の収縮を各ブロックに分散させます。躯体が十分に収縮した後に、各ブロックを緊結して一体構造としたことで、収縮によるひずみのない建物を完成させました。梁が鉄骨という「シミズNew RCSS構法」の特徴を生かし、接合部にスライド機構を組み込んだのです。
この「冷蔵倉庫の構築構造(通称:施工EXP.J)」は、後に特許を取得しました。

冷却によるひずみ対策のための施工上の工夫

建物を3分割し、冷却後に緊結するという方法で最大のネックであった鉄骨の熱収縮問題を解決した

*特許取得済 「冷蔵倉庫の構築構造」特許第6414673号

アイデアを支えるBIMエンジニアリングと現場力

こうした一見、大胆にも思えるアイデアの実現を支えているのが、BIMを活用したシミュレーションとスペースマネジメント、清水建設技術研究所による性能試験です。

熱収縮による躯体不具合の予測はもちろん、外気温との差によって起こる結露やカビの発生などを抑えるための防熱、防湿施工などを、BIMモデルを活用した温度シミュレーションで、一カ所ずつトライアンドエラーを繰り返しながら綿密に検証しました。また、建築工事、冷蔵設備工事、電気設備工事の相互間で配管やケーブル類の干渉がないかを事前にBIMでチェックし、工事中の手戻りを大幅に削減しました。

低温時の鉄骨梁の性能についても、実際の使用環境である−25℃下での性能試験を行い、必要性能を十分に満たしていることを確認しました。

温度シミュレーションの例
温度シミュレーションの例
BIMを用いたスペースマネジメント画像の例
BIMを用いたスペースマネジメント画像の例

BIM…Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称。コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加できるため、設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で共通の情報を活用できる。

シミズのアイデアとエンジニアリング、そしてそれを実現させる現場力。そのすべてを注ぎ込んだからこそ、解体工事1年、新築工事1年11ヶ月という短期間で国内最大級の免震冷凍冷蔵倉庫をつくりあげることができたのです。

4階冷蔵室(-25℃)
4階冷蔵室(-25℃)
1階低温室(0℃)
1階低温室(0℃)

変化のスピードに合わせて

日本における冷凍冷蔵倉庫の多くは老朽化を迎えており、建て替えの必要性に迫られています。さらに、インターネット通販が当たり前となった現在では、今まで以上にニーズが増すことは間違いありません。
時代の変化に合わせて、最適な構造物を、最適な方法で建てられるのがシミズの強み。大きな変化に直面している物流業界。その進化を後押しするために、今後もチャレンジを続けていきます。

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