技術研究所から

想定外のリスクに備える先端地震防災研究棟

技術研究所先端地震防災研究棟

技術研究所から想定外のリスクに備える
先端地震防災研究棟

日本の建造物は、常に地震のリスクにさらされています。
そのリスクを最小にすることもシミズの大切な仕事です。
たとえ想定外の揺れが襲ってきても、人々の暮らしとビジネスをしっかりと守り抜くために、最先端の地震防災研究に取り組んでいます。

地震への備えを建造物の基本性能に

日本は、地球の表面積のわずか0.25%の国土に、世界で発生するマグニチュード6以上の地震の約2割が集中する、世界でも有数の地震国です。人々の暮らしと命を守り、経済活動を支えるために、建造物の耐震性能を高め、地震に強いまちづくりを進めていくことは、わが国の建設会社に課せられた社会的使命だと私たちは考えます。
この使命を果たすには、地震や地震による建物の挙動を熟知した上で、その被害を最小化するための技術を開発しなければなりません。そのための拠点が、技術研究所の先端地震防災研究棟です。

民間企業ならではの実践的な研究

当社は、建物の被災状況や地震の基礎研究の成果を防災技術の開発に活かし、それによって生み出された新しい製品、工法を建物に適用することで、お客様の視点に立った実践的な地震防災のあり方を提案しています。
最新の地震防災技術をいち早く実際の建造物に活かし、お客様の安全と安心に貢献すること。言い換えれば地震への備えを建造物の基本性能として提供することが、私たちのゴールです。

先端地震防災研究棟では、実際の地震を再現して建造物の挙動を観察できる、世界でも有数の大規模振動装置を導入しています。
こだわったのは「リアリティ」。巨大地震の揺れを忠実に再現して、その中で大きな試験体がどのように壊れるかをきめ細かく調べることで、コンピュータシミュレーションや小規模な振動装置ではわからないリアルな地震被害の仕組みが明らかになります。

また、お客様に地震の揺れをリアルに体験していただくことで、地震への備えの重要性を理解いただくことも、先端地震防災研究棟の重要な役割です。

技術研究所先端地震防災研究棟
技術研究所先端地震防災研究棟
Beetle(カブトムシ)の名の通り、力持ちな大型振動台
Beetle(カブトムシ)の名の通り、力持ちな大型振動台

E-Beetle(Eビートル)
世界の地震の揺れを再現する大型振動台

過去に発生した世界中の地震の揺れを再現できる、高性能な振動台です。東日本大震災で観測された最も大きな加速度記録である2.7G(水平方向)で試験体を加振することができます。縦横7mの巨大なテーブルには最大70tまで搭載できるので、巨大地震が発生した時の建物の揺れ方や崩壊に至る過程、内外装や建物内の設備まで含めた耐震性能をリアルに検証することができます。

仙台管区気象台観測波(2011年3月11日)
加振による超高層建物モデルによる振動実験

鉄筋コンクリート造建物モデルの崩壊実験
設計用地震動(告示波)×400%加振

E-Spider(Eスパイダー)
超高層ビル最上階の揺れを再現する
大振幅振動台

最大変位±150cmという、世界最大クラスの振幅を誇る振動台です。上下左右に加えて、回転の動きもシミュレートできるので、長周期地震動に伴う超高層建物特有の揺れもリアルに再現できます。
また、テーブルの上に専用のキャビンを設置すれば、室内の状況をCG映像で確認しながら、地震時の揺れを体験することもできます。これにより、建造物の被害だけでなく、長周期の揺れが人に与える影響も解明しようとしています。

縦・横4mのテーブルを支えるシリンダーがクモの足のように
縦・横4mのテーブルを支えるシリンダーがクモの足のように
見えることから、Spider(クモ)と名付けられた

地震動と耐震の専門家が結集

技術研究所の安全安心技術センターでは、約30名の研究員が地震や気象災害などに対処するさまざまな研究を手掛けています。地震工学の分野では、地震動の予測・評価技術の研究から、免震・制震や損傷検知など新技術の開発・検証、天井や設備、家具などを含めた建造物の総合的な耐震性の研究など。各々が多様な研究テーマに取り組んでおり、各種学会からも高い評価をいただいています。

ここから始まる明日の地震対策

1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などを経て、地震防災の分野ではより高度な研究開発が求められるようになりました。
先端地震防災研究棟では、地震に強い建造物をつくるという「ハード対策」だけでなく、地震リスク評価や、地震時の揺れのモニタリングなどの「ソフト対策」、リアルに再現された地震体験などを通じて、災害発生時の個人の対応力を向上させる「スキル対策」の3つの観点から、より高度な地震防災研究と防災技術開発を推進していきます。
どのような地震の揺れにも揺るがない安全・安心をお届けするために、シミズの研究は続きます。

ここから始まる明日の地震対策

Column

手術室を手軽に免震化できる「シミズ安震フロア」

手術中の地震にどう対処するか、精密な医療機器を激しい振動からどう守るか。多くの病院が頭を悩ませるこの課題を解決したのが、「シミズ安震フロア」です。先端地震防災研究棟で性能検証を行っています。
2種類の薄い鋼板を重ねただけのシンプルな構造の床免震システムを、新築はもちろん、既存の手術室の床に設置することで、コストと時間をかけることなく高い免震効果を実現できます。

手術室用安震フロア断面図
安震フロアを導入した手術室のイメージ
平常時 地震時

落ちない天井で被害を減らす「SDクリップレス天井」

東日本大震災では、建物自体は持ちこたえたにも関わらず、吊り天井が崩落したことにより、人的被害が発生したケースが数多くありました。建造物の総合的な耐震性を研究する中で、この問題に対するソリューションも生まれています。「SDクリップレス天井」は、吊り天井の構造形式を抜本的に見直すことで、優れた耐震性と施工性を備えた吊り天井を実現しています。

落ちない天井で被害を減らす「SDクリップレス天井」
構造がシンプルになったSDクリップレス天井
V字の斜材が耐震ブレース

記載している情報は、2017年9月1日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

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