社長・社外取締役座談会

従業員への浸透と「自分ごと化」

:サステナビリティ担当として感じている課題の一つに、従業員へのサステナビリティ経営の浸透があります。例えば、当社グループの環境ビジョンは良いものができたと感じていますが、実際にはそのビジョン自体を知らない従業員もいるようです。実務面では様々な取り組みを進めていますが、経営サイドが経営全体として何を考え、どのような方針で進めているのかが、現場まで十分に伝わっていないと感じています。サステナビリティ経営を従業員に浸透させていくためには、どのような工夫や取り組みが必要だとお考えでしょうか。

岩本:中期経営計画や各ビジョンが自分の業務にどう関わっているのかを「自分ごと」として捉え、しっかりと理解したうえで、実際の事業に活かしていくというプロセスが重要だと考えます。そのためには、従業員一人ひとりが当事者意識を持てるような働きかけや仕組みづくりが必要です。

川田:「自分ごと化」といえば、先日資源エネルギー庁の資料を読んでいたのですが、バイオ燃料給油に関する課題を検討する委員会のことが掲載されていました。その中で、当社が施工を行っている「Torch Tower」の建設現場において、大型建設機械を使った実証実験を行っていることが紹介されていました。このような先進的な取り組みに対し、当社がしっかりと投資していることは、社外だけでなく社内にも積極的にアピールしていく必要があると感じました。

田村:私も同じ考えです。イントラネットや社内報などインターナルコミュニケーションのツールを活用し、従業員が自然と会社の取り組みに触れる機会を増やすことが「自分ごと化」の意識の醸成には不可欠だと思います。日常的に情報を共有し、従業員同士が意見交換できる環境を整えることで、サステナビリティ経営の浸透が進むと考えます。

定塚:当社では「論語と算盤」などの考え方を小冊子にして全従業員に配布しており、サステナビリティの基本的考え方の周知に役立っていると思います。さらに、自分たちに関わりのある社内の業務がどのようにサステナビリティに貢献しているのか、という事例を分かりやすく社内に広報し、自身の業務を通じて何ができるのかを考えてもらうきっかけとする取り組みが有効だと思います。

社長:社外だけでなく、社内への情報発信も大切だということですね。例えば、何か賞を受賞した際には全社的に大きくアピールしたり、専門用語を丁寧に解説したり、より多くの人に理解してもらえるよう、分かりやすく伝える工夫はできますね。
 サステナビリティ経営は、私たちがこれまで長年にわたり取り組んできたことそのものであり、今後も中長期的な事業価値を生み出していくうえで大切な考え方です。そこに込められた精神や理念は、ぜひ従業員の皆さんにも事業活動を通じて理解していただきたいと思います。

岩本 保