生物多様性

近年、生物多様性に関する新しい国際的な目標などの議論が進んでいます。企業にも自然環境を回復させることに貢献するため、野心的な取り組みが求められています。

建設業は、自然環境に影響を与える産業である一方、その回復に貢献できる産業でもあります。
シミズグループでは、事業活動が自然環境や生物多様性に与える影響の定量化を行い、負の影響をゼロにすることを掲げています。さらに、グリーンインフラを導入したまちづくりや社会インフラ整備に取り組み、生物多様性がプラスとなる持続可能な社会の実現を目指します。

グリーンインフラ+(PLUS)

当社では、自然の機能や地域の潜在能力を賢く活かすグリーンインフラの考え方をベースに、シミズの持つソフトや技術を「+」する「グリーンインフラ+(PLUS)」を事業コンセプトとして、取り組みを進めています。
グリーンインフラ+(PLUS)では、自然の恵みをまち・地域に還元することを大切にしています。清水建設として蓄積してきた、地域固有の生態系を尊重して自然環境や生物多様性を保全・創出する技術やノウハウを活かし、今後も、社外組織と連携し、人と生き物が共生する持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきます。

グリーンインフラ+

シミズ生物多様性ガイドライン

当社は、業界に先駆けて生物多様性を環境マネジメントの重要な課題と位置付けて取り組んでおり、その活動をさらに継続・発展させるため、2009年に「シミズ生物多様性ガイドライン」を制定しました。生物多様性による恩恵と文化的価値を次世代に引き継ぎ、持続可能な社会の実現に貢献するため、すべての事業領域で生物多様性の保全と共生に自発的に取り組むことを目的としています。

基本理念

人類は、地球が数十億年かけてつくりあげてきた生物多様性の恩恵に支えられている。その保全は、地球温暖化対策と並んで、企業に課せられた今世紀の命題である。
清水建設は、生物多様性が持続可能な社会活動の基盤であることを認識し、環境経営の重要課題として、生物多様性に取り組む。自然への敬意とグローバルな視点をもって行動し、建設活動を通じて、優れた環境を創出する。
ここに、ガイドラインを定め、人と自然との共生を志し、生物多様性による恩恵と文化的価値を次世代に引き継ぎ、持続可能な社会の実現に貢献する。

ガイドライン

1.取り組み姿勢
生物多様性を環境マネジメント上の重要な課題と位置づけ、すべての事業領域で生物多様性の保全と共生に自発的に取り組み、必要な見直しを行い改善に努める。
2.建設活動での取り組み
  1. 建設地を含む地域の環境を把握し、生物多様性の保全と共生に配慮した設計及び工事計画を行う。
  2. 工事中の大気・水・土壌等への影響を把握し、生物多様性に新たな影響が懸念される場合は、回避・低減に努める。
  3. グリーン調達ガイドラインに基づき、生物多様性に配慮した調達に努める。
  4. 顧客、行政、地域社会、NPO/NGO、研究機関、企業などと連携・協力し、建設による生物多様性に関する影響の未然防止や保全、持続可能な利用に向けた活動に取り組む。
3.コンプライアンス
高い企業倫理観に基づき、生物多様性にかかわる法令、地域の要求などを順守する。
4.教育
清水建設及びグループ会社の役員・従業員、協力会社に対し、生物多様性にかかわる必要な知識・法令・技術などの教育を行い、理解を深める。
5.情報公開
コーポレートレポートやホームページなどにより、生物多様性にかかわる情報開示を行う。
6.研究開発
生物多様性にかかわる研究開発に取り組み、その成果を社会に還元する。
7.社会貢献
生物多様性にかかわる社外の活動へ参加し協力するとともに、青少年に対する教育の場を提供する。

生物多様性に関する参画団体一覧

当社は、生物多様性に関する委員会やアライアンスに積極的に参画して、生物多様性の保全と向上を目指しています。

アライアンス等への参画による生物多様性の普及・促進

団体名 活動内容 ロゴ
一般社団法人 企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB) 各種のワーキングループに参画し、他の企業やステークホルダーとの対話を図りながら、生物多様性保全に関する研究や実践に取り組んでいます。 JBIB
一般社団法人 いきもの共生事業推進協議会(ABINC) 緑地認証の1つである「いきもの共生事業所®認証(通称:ABINC:エイビンク)認証制度」の普及・啓発を通じ、生物多様性に配慮した緑地の整備促進に貢献しています。 ABINC
30by30アライアンス オールジャパンの意識を持ち、国際的な約束である「30by30」※1の達成に向け貢献すると共に、OECM※2の実証事業の実施に協力しています。
  1. 2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標
  2. 保護地域以外で生物多様性保全に資する地域
30by30

また、当社は上記以外にも経団連生物多様性宣言イニシアチブに賛同しています。

事業活動における生物多様性配慮の取り組み

事業活動における生物多様性に配慮した調査・計画・施工

計画・設計段階では、独自の「建築・土木設計エコマップ」の作成を義務付け、生物多様性に関するリスクと機会、関連法令を抽出・評価しています。適宜、現地の生態調査、生息適地シミュレーションを実施するほか、グリーンインフラ化や生物多様性向上のための方策を検討し、保全・向上計画に反映させます。
工事着手時には「環境重点管理表」の作成を義務付けています。同表では環境管理項目として生態系問題や水質汚濁による生息環境への影響を明示しています。発注者、設計者、行政、地域住民、学識経験者などからの意見を踏まえ、生物多様性への影響が懸念される場合はその対策を検討し、着工前検討会で承認を経てから施工します。
また、施工中・竣工後には社内の専門部署と連携して生物モニタリングを行うほか、ABINCやSEGES※1、SITES※2などの取得を発注者に提案し、取得の支援、緑地価値の可視化に貢献します。

  1. 社会・環境貢献緑地評価システム
  2. Sustainable SITES Initiative(米国グリーンビルディング協会の評価認証プログラム)

地域の生態系ネットワークを評価「UE-Net」

UE-Net

都市域の生物多様性に配慮した開発計画の立案を支援するシミュレーションシステム「UE-Net(Urban Ecological Network)」を開発・実用化しています。衛星画像データを用いて地域の自然環境を分析し、事業地内の緑化計画の提案を行います。

公益社団法人 土木学会平成24年度環境賞、一般財団法人エンジニアリング協会 平成25年度エンジリアリング功労者賞 受賞。

UE-Net/ユーイーネットは清水建設の登録商標です。

生物多様性に配慮した空間を設計

自然の潜在能力を借りて空間を設計する「エコロジカル・ランドスケープ」

エコロジカル・ランドスケープ

エコロジカル・ランドスケープとは、地域が持つ自然資源をきちんと把握して、その場所のエコシステム、エンジニアリング、デザインを同時に考え、解決策を見つける設計手法です。これにより、その地域でしか成し得ない環境を保全・創出します。

地域の動植物の生物多様性に配慮した施工

ダム工事やトンネル工事における動植物保全対策

動植物保全対策

トンネル工事やダム工事は、山間地の豊かな自然の中で行われ、大規模な地形の改変や樹木の伐採を伴い、生態系への影響が大きくなります。そのため、自然環境特性や希少動植物の生息状況に合わせて、さまざまな対策をしています。プロジェクトごとに、学識者を中心とした希少動植物保護の委員会などの審査・助言を仰ぎながら工事を進めています。

生物多様性保全事例

自然のもつ機能を賢く生かしながらインフラ整備を行うとともに、自然の恵みを還元する、持続可能な地域づくりに貢献する事業活動をサポートしています。

都市の生物多様性保全

横浜野村ビル

レインガーデン
グリーン・ラジエータ
緑化ベンチ

横浜みなとみらいに2017年に竣工した横浜野村ビルでは、お客様と横浜市が新しい緑化技術を取り入れた環境配慮を開発の目標に掲げました。

当社グループの生態系環境関連部門を横断したチーム力を駆使し、次の5つの緑化環境技術をプロジェクトで具現化することにより、お客様や横浜市へのニーズに応えました。

  1. 生物の生息適性シミュレーション技術(UE-Net)により、地域のエコロジカル・ネットワーク評価を整備前後で比較検証し見える化
  2. 地域性植物材料の導入(遺伝子解析技術)により遺伝的かく乱のない、地域固有の生態系に配慮
  3. 蓄雨機能を有した窪地状の植栽ゾーン「レインガーデン」を設置し、自然な雨水涵養を促すとともに湿地性の生物多様性環境を創出
  4. 希少種を含む多様な日本固有種を用いた縦型緑化ルーバー「グリーンラジエーター」を外壁面へ設置
  5. 緑地面積を阻害しない「緑化ベンチ」を設置し、夏期のクールスポットと、人が生物多様性と向き合える都市環境を創出

このような都市における生物多様性への取り組みにより、(公財)都市緑化機構の環境認定制度である、「SEGESつくる緑」や、LEED、CASBEEなど数々の認証を取得しています。

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