有明体操競技場
設計担当者から
世界最大級スパン約90mの木質大屋根、木の観客席、木の外装。この「木の器」を、防災的、構造的にいかに成立させるか、11カ月の設計期間で、さまざまな検討と実験を行いました。 特に苦心したのは木質大屋根の耐火性能の確保。木梁が火災時発火点に達しない設計上の工夫をし、また木製大梁のピース同士の接合は耐熱性能のある特殊な手法を開発しました。木質大屋根は、建物両側から10mほど張り出した片持ちトラスに張弦梁を架設する複合式張弦梁構造。これとリフトアップ工法の組み合わせは妙案でした。基礎・外周躯体を簡略化できるなど、構造的合理性が向上し、また施工の安全性、工期短縮にも貢献。木梁のほか、観客席の木製段床や木外装などで、木質化のノウハウを得ることができました。
施工担当者から
東京2020オリンピック競技大会では体操、パラリンピック競技大会ではボッチャの会場となる有明体操競技場が竣工しました。工事のハイライトとなる木質張弦梁のリフトアップは、5回に分けて実施。1ユニットは重量約200トン、幅約70m、奥行き約15m。組立構台上で張弦梁と大梁・小梁を組み、点検歩廊や照明、放送設備、仮設材などを取り付け終えた上で、3次元座標を測量しながら6本のワイヤーで吊り上げました。リフトアップ後すぐ次ユニットの組み立てに移れるよう、組立構台はレール上に組んだ移動式です。また内外装工事では移動式足場を活用。サイクル工程を確立させ作業の習熟を図り、大空間を少ない人工で効率良く施工しました。
発注者 | 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 |
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基本設計、実施設計監修、監理 | 株式会社日建設計 |
実施設計 | 清水建設株式会社 斎藤公男(技術指導) |
工期 | 2017年11月〜2019年10月 |
構造・規模 | S造、木造 3F |
延床面積 | 27,442 m2 |
所在地 | 東京都江東区 |
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