シミズが目指すまちづくり日本橋の“ まちづくり“ に貢献
長い歴史的背景を持つ日本橋。
いつしか賑わいの中心からそれていたこのまちが、「日本橋再生計画」によって活気を取り戻しています。
2014年に竣工を迎えた「日本橋室町東地区開発計画」において、シミズは都市計画から実施設計、施工まで一貫して、まちづくりに貢献しました。
新たなまちづくりで日本橋に人を呼び戻す
江戸時代に五街道の起点として栄え、明治以降、金融、商業、オフィス街として発展した日本橋。
しかし、1964年の東京オリンピック時に整備された首都高速高架道路が日本橋の上に建設され、景観的な魅力が失われて以降、商業地としての賑わいが少しずつ後退していきました。
そのような状況の中、2000年ごろに総合デベロッパーである三井不動産から日本橋再生計画が立ち上がり、「残しながら、甦らせながら、創っていく」をコンセプトとした新たなまちづくりへの取り組みが、官民地元一体となって始まりました。
当社も参画した「日本橋室町東地区開発計画」は、そのスタートとなるプロジェクトだったのです。
建物だけでなく、人の流れをデザイン
このまちづくりの特徴は、3棟の高層複合建築と神社を含む4つの街区を一体的に開発したこと。この計画の実現のため、シミズも一翼を担いました。
敷地を一つにまとめて大きく開発するのではなく、あえて既存の街区割を残しながら、隣接する老舗を中心とした小規模な商業エリアとの連続性を維持。各街路に面して小規模区画の店舗を配置することで、街路を中心とした賑わいが周囲に波及する効果があります。また、各街区を貫通する動線が建物内に計画され、新たな人の流れをつくり出しています。
4街区の構成
室町東三井ビルディング
(COREDO室町1)
- 工期
- 09.2~10.9
- 構造・規模
- SRC+S造(柱CFT)
B4-22F-PH2
建 2,325㎡ /延 41,066㎡
室町古河三井ビルディング
(COREDO室町2)
- 工期
- 11.11~14.2
- 構造・規模
- S造、一部SRC造、RC造
B4-22F
建 3,723㎡/延 62,472㎡
室町ちばぎん三井ビルディング
(COREDO室町3)
- 工期
- 12.8~14.2
- 構造・規模
- S造、一部SRC造、RC造
B4-17F
建 1,771㎡/延 29,238㎡
福徳神社
- 工期
- 14.3~14.10
- 構造・規模
- RC造、一部S造、RC造
B2-1F
建 84㎡ /延 889㎡
歴史と調和を図る外装デザイン
開発エリアの周囲には、日本橋の歴史的な発展を象徴するような建造物が多数存在します。本開発エリアは中央通りを挟んで重要文化財である三井本館や三越本店と対面しています。これらの歴史的建造物と調和を図りながら、魅力的な景観を実現するため、低層部の高さを揃えています。
また、強調された柱や水平ラインなどの構成を合わせながら、現代的な外装デザインに。高層部はガラスのカーテンウォールにすることで、存在感を抑えています。
新たなまちの魅力を創造
高層複合施設には、オフィスや商業施設に加え、これまでこのエリアになかった多目的ホールやシネマコンプレックス、さらに高規格の住宅も設けています。
新たな賑わいの拠点が生まれ、多様な人が集い・働き・住むことのできる活気あるまちづくりを目指した計画です。
現代技術と伝統技術の融合
神社街区には、1000年以上の歴史を持つ福徳神社を再興しています。高度成長以降、ビルの屋上や店舗の中などに遷座されていました。
社殿は、江戸の文化を伝える日本橋にふさわしい、白木の伝統建築が求められましたが、都心部のため耐火規制があり、木造建築は建てられませんでした。そこで、鉄骨造の耐火建築としながらも、伝統的な継手、仕口の木造技術を使って木造伝統建築に見えるよう工夫を凝らしました。シミズが有する現代技術と宮大工の伝統技術を融合した神社となっています。
プロジェクトをデザインし、 “カタチ” に
当社は、都市計画、実施設計、施工と、建物が完成するまでの約10年の間、多岐にわたって参画しました。
中でも実施設計業務は、プロジェクトの初期の都市計画の決定内容から、具体的なものづくりの場となる施工までの間をつなぐ役割が求められます。発注者や入居する事業者の要望に応えるとともに、設計者やデザイナーとコラボレートし、プロジェクトの中心に立ちながらまちづくりの実現に貢献しました。
設計から施工までの間、変化する発注者のニーズに応え、多様な提案を集約し、議論を通じて、一つひとつを実現可能な “カタチ” へと発展させていきました。関係者との合意形成を図りながら、まちがより魅力的になるように努めてきたのです。プロジェクトのすべてのプロセスが、デザインのフィールドであると私たちは考えています。
シミズが目指すまちづくりとは
シミズが考える“まちづくり”とは、文化的側面から地域をとらえ、まちに暮らすすべての人々が幸福な人生を送ることのできる環境を整え、未来へつなぐこと。
地域の特性に基づいたまちづくりのデザインは、単なる建物の意匠にとどまりません。発注者が抱える課題の解決や要望の実現など、さまざまな過程を経て具現化する。そのすべてのプロセスがデザインだと考えます。
まちづくりに携わってきた人々の情熱を感じ取り、未来につながるまちを次の世代の子どもたちに遺し、伝えていく。
そんなまちづくりのデザインを目指しています。
日本橋室町東地区開発計画プロジェクト概要
発注者 | 三井不動産、古河機械金属、にんべん、日物、細井化学工業、千葉銀行、総武、わかもと製薬、三越伊勢丹、木屋ビルディング |
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統括・基本設計・監理 | 日本設計 |
実施設計・監理 | 清水建設 |
マスター・デザインアーキテクト | 團紀彦建築設計事務所 |
商業内装デザイン | スーパーポテト、A.N.D |
事務所・ホール内装デザイン | フィールドフォーデザインオフィス |
ホール監修 | 都市建築デザイン |
シネコン内装デザイン | R&Kインターナショナル |
住宅内装デザイン | AXUA1級建築士事務所、辻村久信デザイン事務所、TONERIKO |
サインデザイン | 井原理安デザイン事務所、廣村デザイン事務所 |
照明デザイン | ICE都市環境照明研究所、内原智史デザイン事務所 |
外装瓦アート | 山田脩二淡路かわら房二 |
施工 | 清水建設、銭高組 |
参考資料 | 日本橋室町東地区記録集(新建築社) |
写真提供 | エスエス東京、川澄・小林研二写真事務所 |
官民の連携によって実現した国道・区道下の地下広場は、災害時に地域の帰宅困難者3,000人を一時受け入れする防災拠点としても機能します。停電時はビル側から72時間の電力供給を受けることができ、照明のほか公衆トイレ、デジタルサイネージによる防災情報発信などの設備を備えています。また、福徳神社、地下2階の防災備蓄倉庫に備品を常備し、周辺地域への貢献を可能としています。
車いす利用者、視覚障がい者を含む来街者を、それぞれに適した誘導方法により、目的地まで快適に案内することを目指したものです。日本語に加えて、英語での案内も実証しました。
今後は、参加者に行ったアンケートの結果をシステムに反映し、バリアフリー・ストレスフリーなまちづくり技術を、2020年に向けて世界に発信していくことを目指します。
記載している情報は、2017年9月1日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。