病院づくり

デザインビルドのメリットを生かした公立病院 松戸市立総合医療センター

2017年12月27日、千葉県の「松戸市立総合医療センター」(旧・国保松戸市立病院)が移転・開院を迎えました。シミズはこの公立病院を、実施設計から施工まで一括して手掛けるデザインビルド方式で建設しました。

病院づくりデザインビルドのメリットを生かした公立病院松戸市立総合医療センター

2017年12月27日、千葉県の「松戸市立総合医療センター」(旧・国保松戸市立病院)が移転・開院を迎えました。シミズはこの公立病院を、実施設計から施工まで一括して手掛けるデザインビルド方式で建設しました。

公共工事での導入も増えているデザインビルド

従来、公共工事においては設計と施工の分離発注が一般的でしたが、近年では設計・施工一括発注方式、いわゆるデザインビルド方式の導入が進んでいます。
デザインビルド方式のメリットは、施工会社が設計から施工までを一気通貫で担うので、施工におけるさまざまな技術やノウハウを設計段階から取り入れることができ、工期短縮や総合的なコストダウンが図れるという点です。一方で、相互チェック機能を有すると言える設計者と施工者が一体となっていることが、発注者側にとっては不安材料であるというデメリットもあります。
松戸市立総合医療センターの実施設計・施工一括発注公募型プロポーザルにおいて、シミズは、医療施設の施工実績業界No.1の強みをいかんなく発揮しました。施工に必要な揚重機材にかかる費用を縮減できる計画に見直すなど、施工効率を高めることにより、コストを徹底的に圧縮。その分、機能アップやデザインアップを実現する提案を行い、受注に至りました。

設計・施工分離発注方法とデザインビルド(DB)方法の比較図

二つのテーマを掲げて

本センターは、重篤な患者さんを24時間体制で受け入れる三次救急を担い、さらに地震などの災害発生時に医療を提供する災害拠点病院でもあります。また、小児医療や出産前後の母子に対する周産期医療が充実しているのも特徴です。
建設に当たって当社は、二つのテーマを掲げました。一つは、地域の高度医療を担う病院として求められる安全性と機能性を高いレベルで確保すること。もう一つは、訪れる人が心地良さを感じ、気持ちが休まるような空間を実現することです。

地域の医療拠点としての要件を確保

まず、安全性と機能性についてですが、大規模災害時にも確実に医療を提供するためには、病院の機能と、そこで働くスタッフの安全が確保されていなければなりません。そこで今回、エネルギー供給施設やスタッフ部門など、建物の一部が耐震構造とされていたプロポーザルの要件を見直し、全棟を免震構造とすることを提案。建物内部に伝わる揺れを抑えることで、建物に設置されている機械や家具の転倒を防ぎ、災害発生時にも災害拠点病院としての機能を確実に発揮できるようになりました。

全て免震化

さらに、柱をRC造、梁をS造とするハイブリッド構造の「シミズRCSS工法」を採用し、大スパンを実現。構造によるプランの制約を最小限に抑え、柱が少なく見通しの良いICU(集中治療室)、ゆったりした広さの待合室など、病院のニーズに応える機能的なレイアウトとすることに成功しました。

ゆったりとした広さの外来待合
ゆったりとした広さの外来待合

家族を中心において過ごしやすい空間を設計

次に、訪れる人が心地良さを感じ、気持ちが休まるような空間についてです。「Family Centered Design」をコンセプトとし、病気やケガに対して不安な気持ちやストレスを抱えた患者さんとそのご家族の気持ちがやわらぐ設計としています。
例えば、小児病棟の家族面会室。感染に弱い患者さんは、家族でも面会が制限されることがあります。そこで、小児病棟の家族面会室は、壁をカラフルな枠で縁取り、中をガラス張りとしました。ガラスの両側にはマイクとスピーカーを設置し、ガラス越しに家族や友達と一緒に遊べるようにしたのです。

小児病棟の家族面会室(家族側)
小児病棟の家族面会室(家族側)
小児病棟の家族面会室(小児病棟側)
小児病棟の家族面会室(小児病棟側)
森をテーマにした見通しの良い小児病棟
森をテーマにした見通しの良い小児病棟

また、NICU(新生児集中治療室)では、照明環境を工夫。通常、NICUでは赤ちゃんの眠りを邪魔しないよう、照明を暗くします。しかし、単に明るさを落とすだけでは陰鬱な空間となるため、窓の上部に特別なブラインドを設置しました。これにより、赤ちゃんのベッドには光が入らない一方、天井を照らす自然光で24時間のリズムが感じられるようになりました。さらに、インテリアにはぬくもりが感じられる木調を採用し、お母さんに子どもが生まれた幸福を感じていただけるような空間を創出しました。

NICU全景
NICU全景
自然光によって、1日のリズムが感じられる。朝7時
自然光によって、1日のリズムが感じられる。朝7時
昼12時
昼12時

子どもたちの笑顔のために

小児病棟の壁には、当社の東京木工場と連携し、デザイン・制作を行ったオリジナルの木のおもちゃを設置しています。ハンドルを回すと葉っぱの色が変わり、松戸の森に住む虫が穴から顔を出す「ぐるぐるツリー」、円型の木枠を回転させると小さな魚が泳ぐ「深海ドライブ」など、入院中の子どもたちに少しでも笑顔になってもらいたいという想いを込めてつくりました。

小児病棟の木のおもちゃ
小児病棟の木のおもちゃ
ぐるぐるツリー(左)と深海ドライブ(右)
ぐるぐるツリー(左)と深海ドライブ(右)

病院建築技術と経験を結集

シミズの持つ病院建築の技術と経験を結集した松戸市立総合医療センター。災害時にも頼れる安全・安心な構造と、患者さんやご家族が過ごしやすい空間を備えた病院として、今後、地域の皆様に親しまれることを願っています。

松戸市立総合医療センター

記載している情報は、2018年2月13日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

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