
病院づくり
看護動線の最適化とコミュニケーションの活性化で
医療の質の向上につなげる
川西市立総合医療センター(左)と海老名総合病院新棟(右)の完成予想パース
2040年には、日本の高齢者人口がピークとなる一方、労働生産人口は急減すると予測されています。医療の現場においては、看護師をはじめとした医療を支える人財不足の深刻化により、生産性の向上がますます求められています。
「看護動線の最適化」や、「スタッフ間コミュニケーションの活性化」によって、建物の側面から医療の質の向上を目指したシミズの病院づくりの事例を紹介します。
看護動線の最適化で運営効率と働きやすさを確保
近年、病院の建て替えでは、8床室や6床室などの大部屋の解消や個室の増加といった療養環境の向上に伴って病棟フロアの面積が拡大しており、看護師の移動距離が長くなっています。個室は感染制御に有効なため、今後さらに増えるものと考えられます。また、高齢化に伴い患者の重症化、複雑化が進むことで、看護師の業務負担はさらに増大すると予想されます。
一般的に、看護師は病棟内を1日当たり約3~5km*1の長い距離を移動しており、業務の効率化を図るためには看護動線の短縮が重要です。
看護師の動きは、看護方式、病棟運営などの病棟マネジメントによって異なるため、それと整合した病棟プランが求められます。

病棟マネジメント(看護方式、病棟運営など)により異なる
看護業務の効率化を支援する「看護動線シミュレーションシステム*3」を開発
シミズは、各病院の病棟マネジメントに沿った動線の短い最適な病棟プランを検討するために、「看護動線シミュレーションシステム*3」を開発しました。 これは、独自調査データに基づく病棟看護師の1日の業務モデルを使って、病棟プラン上に看護師の動きをシミュレーションし、総移動距離を算出するものです。 その結果を基に検討を行い、看護動線の短い効率的で働きやすい病棟プランを作成します。
*3:特許出願中

よく目が届き、看護動線の短い全室個室病棟(トリプルクロス病棟®)を実現した「川西市立総合医療センター」
今年5月に竣工した当社設計施工の川西市立総合医療センターは、市立川西病院と協立病院を移転統合した、全病室が個室の病院です。
提案時に「看護動線シミュレーションシステム*3」の結果を基に病棟をプランニングし、「トリプルクロス病棟®」を計画しました。これは、二つの患者用クロス廊下とスタッフ用クロス廊下を組み合わせた、患者を観察しやすく動線の短い病棟プランで、全室個室であっても看護師1日1人当たりの総看護動線距離を3km以下に短縮することができました。

設計段階において二つの既存病院で調査を実施し、実際の看護業務モデルを使ったシミュレーションに基づいてプランを調整しました。さらに、統合前は2病院の病棟マネジメントが異なっていたため、両病院の看護部長は、新病院の病棟運営を検討する際にこのシミュレーションを活用しました。

スタッフ間のコミュニケーションを活性化する環境づくりでチーム医療を強化
生産性向上に重要なチーム医療の強化には、職種を超えたスタッフ間のコミュニケーションの活性化が必須です。休憩や情報交換の場となるスタッフエリアに、コミュニケーションを自然に誘発する仕掛けを盛り込むことは効果的です。
「スタッフコミュニケーションコア」を設置し、多様なコミュニケーションを誘発する「海老名総合病院新棟」
2023年4月に竣工予定の神奈川県の海老名総合病院新棟では、三角形状のフロアに3病棟を配置し、それぞれのスタッフステーションをトライアングルの角に設けた「スーパートライアングル病棟」を採用。フロアの中心には3病棟のスタッフが共用できる「スタッフコミュニケーションコア」を設置しました。

働き方改革を後押しする病院づくりを提案します
働き方改革の進む病院づくりでは、療養環境の安全性や快適性はもちろん、スタッフの業務効率や働きやすさといった観点も重要度を増していきます。シミズは、長年培ってきた病院建築や病棟運営のノウハウを活用し、チーム医療を支え、働き方改革を後押しする、働くスタッフにとって魅力的な環境づくりを提案していきます。
記載している情報は、2022年8月23日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。