OUR Achievements
子どもたちに誇れるしごと
Achievements 04

水素エネルギーが創り出す新たな未来

―Hydro Q-BiC―

Project Outline

脱炭素社会の切り札
「Hydro Q-BiC」

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、その出力変動や余剰エネルギー問題を解決する仕組みが求められている。近年、リチウムイオン電池に代表されるエネルギーを蓄える技術に注目が集まっており、その一つとして技術開発が加速しているものが水素だ。当社と産業技術総合研究所が共同開発した水素吸蔵合金を使用すると、合金体積の1000倍の水素を吸収できるため、水素の長期大量貯蔵が可能となった。
清水建設が開発した「Hydro Q-BiC(建物付帯型水素エネルギー利用システム)」は、太陽光発電の余剰電力を使用して水素を製造、貯蔵し、必要時に水素を取り出して発電するシステムである。特徴は、発電過程でCO₂を一切発生させないことにある。また、水素を長期かつ大量に貯蔵することが可能となったことにより、例えば、太陽光発電の発電量が大きく施設のエネルギー需要の少ない春や秋には余剰電力を水素で蓄えて、エネルギー需要ピークが生じる夏や冬に使うといった、エネルギーマネジメントが可能であり、脱炭素社会の実現に向けた切り札として注目を集めている。

# 01

安全性に優れた水素吸蔵合金を
新たに開発

水素をエネルギー原料として持ち運べるようにするには、圧縮し液化させる方法、トルエンに反応させてメチルシクロヘキサンへ転換させる方法、窒素ガスと反応させアンモニアを合成する方法などがある。これらの方法に比べて水素吸蔵合金は法規制が少なく、体積やエネルギー損失の面においてもメリットが大きいと言われている。しかし、水素吸蔵合金は吸蔵時に発熱、放出時には吸熱する特性を持っており、発電効率を一定に保つためには、合金を温める必要がある。また、水素の吸蔵、放出を繰り返すことにより合金が微細化し、粉末状となることで着火しやすくなるという欠点もあった。
Hydro Q-BiCに使用されている水素吸蔵合金は、清水建設と産業技術総合研究所が開発したもの。必要性能を確保しつつも、合金が微細化せず着火しない特長を持っている。さらに吸蔵、放出に必要とされる動作温度が20〜50℃と扱いやすい温度域であること、貯蔵、運用に関する有資格者も不要であること、レアアースが含まれていないことなど安全性が高く運用の容易なシステムを支えるコア材料だ。
Hydro Q-BiCは、電気分解による水素生成時、水素吸蔵時、燃料電池コージェネレーションシステムによる発電時の排熱を回収し、いずれも水素放出時における合金の加温に用いることでシステム効率を高めている。また、水素の吸蔵、放出に、実績あるシミズ・スマートBEMS(Building Energy Management System)を活用することで、施設の需要に応じたエネルギーの最適運用を可能にしている。
これまでのシミズ・スマートBEMSは主に電力をマネジメントするシステムだったが、Hydro Q-BiCは熱をマネジメントし、水素の吸蔵・放出を制御するシステムへと進化した。また、電気分解装置、水素吸蔵合金タンク、燃料電池コージェネレーションシステムなどの各装置を統合コントロールすることで、施設の電力、熱需要および太陽光発電の発電量予測に基づいた最適なエネルギー運用計画やリアルタイム需給調整を自動で行うことが可能になっている。

# 02

超環境オフィス「北陸支店新社屋」に
Hydro Q-BiCを実装

石川県金沢市にある清水建設北陸支店新社屋では、Hydro Q-BiCを社屋内に実装した。特徴は、金沢の気候・風土を活かした自然エネルギー利用と最先端技術の組み合わせにより、中規模オフィスとしては北陸地域初となる「Net ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現したこと。
Hydro Q-BiCはそのエネルギー性能とBCP性能をさらに高めることに寄与している。各種省エネルギー技術により建物の一次エネルギー消費量を基準値の28%まで低減し、太陽光発電により消費量を上回るエネルギーを創出することで、年間エネルギー収支「ゼロ」を達成。これにより、年間CO₂排出量を290t程度削減している。
また、建物の意匠面でも地域との共生、伝統と革新の融合を目指し、金沢の伝統的な建築様式を現代の技術で再現している。建物の東・西面に配置した格子状の日射ルーバーは、金沢の伝統的な街並みにみられる木虫籠(きむすこ)を模したもの、建物内にも集成材と鉄骨を一体化した耐火木鋼梁「シミズハイウッドビーム」を格子状に架設し、金沢伝統の格天井を再現している。
加えて新社屋には、より創造的で柔軟な働き方を誘発するオフィスを具現化。執務スペースはグループ単位のフリーアドレスとし、グループ間の情報共有と協働を促進するレイアウトを実現した。さらに、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を導入し、業務内容に応じて選択できるさまざまなワークエリアを各所に配置している。自然光と自然風を取り込んだ2層吹き抜けの明るいオフィス空間では個々のアクティビティが可視化され、創造的な働き方を促進しつつ従業員に快適かつ健康的な執務環境を提供している。これらの取組により、地球環境への配慮のみならず、従業員が健康で快適に働くことができる「超環境型オフィス」を実現した。

# 03

高い評価を受けた
新社屋の環境性能

新社屋はその環境性能が高く評価され、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の「ZEB」認証、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)の最高ランク「Sランク」認証を取得した。また、健康、快適性についても、WELL認証の最高ランク「プラチナ」を取得した。
清水建設は今後、この超環境型オフィスを先進的技術のショールームとして活用し、技術展開を促進することで、SDGsの実現に貢献していく考えだ。