社長・社外取締役座談会

Environment
 E | サステナブルな社会の実現に向けて

 

カーボンニュートラル達成

社長:日本政府が2050年に向けたカーボンニュートラル宣言を行って以来、国内における脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速したように思います。一方、ロシアによるウクライナ侵攻の影響によって世界のエネルギー情勢は混迷を深めています。そういった情勢も踏まえ、重要なエネルギー源として、再生可能エネルギーの普及・導入が急務という状況だと思いますが皆様はどうお考えでしょうか。

川田:エネルギーを取り巻く状況は、かつてないスピードで変化しています。以前は、地球温暖化防止の観点から脱炭素化へシフトする動きとなっていました。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、原油や天然ガスの供給が不安定化し、世界の関心がエネルギーの安全保障・安定的確保に向き、結果としてさらなる脱炭素化への動きを加速させることとなりました。エネルギーの種類や需給バランスは、以前は数年程度の間隔で変化するといわれていましたが、最近はその間隔が短くなっているため、当社も戦略や目標を都度練り直し、アグレッシブに取り組んでいくことが求められています。

社長:企業には、よりスピード感と柔軟な対応が求められているということですね。場合によっては目標や計画、さらには2021年に策定したグループ環境ビジョンも、その時々の環境に合わせて素早く修正していくことを検討していきたいと思います。

田村:水素もCO2削減の技術として有効ではないでしょうか。当社でも、「Hydro Q-BiC」という水素関連の技術を産業技術総合研究所と共同で進めていますので、そういった部分で競争力の強化が図れると考えます。

社長:そのとおりですね。水素関連技術は、当社北陸支店の社屋をはじめ、お客様の建物にも複数導入した実績があります。コスト面での改善や課題はありますが、引き続き、水素エネルギーの可能性に挑戦し、開発を進めていきます。また当社は、ZEBにも注力しています。技術開発も進んでいますし、実績も徐々に増えています。前述の北陸支店でも、水素や太陽光発電などの創エネ技術のほかに、空調などにおいて省エネ技術を採用しZEBを達成しました。お客様によっては今後の建物はすべてZEBにしたいとおっしゃっている先もありますので、新築だけでなく、既存ビルのZEB化などの提案も行っていきたいと考えています。

田村:洋上風力発電もまた、今後大きく伸ばしていく必要のある電源だと思います。

社長:当社は、国内で建設が本格化する洋上風力発電施設の風車建設に向け、専用のSEP船を建造しました。世界最大級の搭載能力およびクレーン性能を備えた自航式の船です。この優位性のある船をフル活用し、洋上風力発電施設の施工におけるトップランナーを目指すとともに、今後は事業者としても存在感を示していきたいと考えています。

岩本:世の中に再生可能エネルギーが普及するという意味では、建設会社も社会全体のCO2排出量の削減に大きく貢献できるということですね。

社長:そうですね。コーポレートレポート2021に掲載した、東京大学大学院の沖先生との脱炭素をテーマに実施した対談において、沖先生から「カーボンニュートラル達成に向けたロードマップを描けない会社は、そもそも投資家から投資先として選ばれないし、これからは生き残れない」とのお話をいただきました。脱炭素化への取り組みは、企業における重要な経営課題である一方、ビジネスチャンスでもあると考えています。

川田:当社は、環境関連の技術開発や活動を積極的に行っています。社会構造の変化は大きなビジネスチャンスですし、企業も自らの事業活動を通して社会に貢献することができるので、自信を持って取り組みをアピールしていけばいいと思います。

定塚:私も同じ意見です。投資家もそうですが、今の若い人たちは環境問題や社会課題への意識が高いので、学生へのアピールということで、リクルート面でも重要だと思われます。

社長:今後は幅広いステークホルダーに向けたPRを展開していくことと併せて、当社が2050年に目指す社会を「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」とし、これらを実現することを一つの機会と捉え、最大限の努力を行っていきます。

川田 順一