2025.09.17
清水建設(株)<社長 新村達也>は(株)EARTHBRAINと共同でこのほど、盛土工事の管理業務の大幅な削減と品質確保を目的に、盛土工事のプロセスをデータとして盛土の3次元モデルと紐づけ蓄積・整理する盛土品質・トレーサビリティ管理システム「Shimz Smart Earthwork Logs(SSEL:エスセル)」を開発・実用化しました。現在、NEXCO西日本発注の新名神高速道路梶原トンネル工事において、高速道路本線外の大規模盛土工事をSSELにより管理しており、期待通りの効果が確認されています。
2021年に静岡県熱海市で発生した盛土崩壊・土石流災害を踏まえ、国土交通省が23年に盛土規制法を改定。この結果、土質試験にはじまり、土砂の積込、運搬、敷均し、転圧にいたる盛土工事のプロセスをデータで辿ることができるように、きめ細かなトレーサビリティ管理が求められるようになりました。管理するデータは、例えば土砂の搬出サイドでは、土質試験の結果、土砂の積込建機、積込位置・日時等。受入サイドでは、運搬車両、受入日時、荷降ろし位置、敷均し建機・範囲、転圧建機・回数などの施工履歴に至るまで多岐に及びます。
一方、現行のトレーサビリティ管理は書類ベースのうえ、週報、月報、完了時の報告書等があり、作成に多大な手間を要します。また、施工中、竣工後を問わず書類の確認頻度が高いものの、書類の検索に手間がかかり非生産的です。そこで当社は、盛土工事のトレーサビリティ管理に必要なデータを自動取得し、盛土の3次元モデルと紐づけ蓄積・整理するSSELを開発しました。
SSELの特徴は、技術的に確立されているシステムを組み合わせたこと、専用ソフトやハイスペックのパソコンなどを用いなくても受発注者間で必要な情報を共有できることです。このため、SSELは非常に実用的であり、かつパソコンさえあればクラウドを介して時間・場所を問わず必要なデータにアクセスできます。システム構成は、土質試験やトレーサビリティデータ結果の入力システム、市販のIoTデバイス搭載の土砂積込建機と運搬車両、同じく市販のICTブルドーザと転圧ローラ、各システムからクラウドを介して送信されるトレーサビリティデータを一元管理するデジタルプラットフォームです。
SSELを適用することで、すべての施工プロセスにおいて必要なデータが自動取得され、デジタルプラットフォームに送信されます。プラットフォームは、転圧ローラから送信される受入れ土砂の転圧範囲、巻き出し厚などのデータから盛土の3次元モデル(ボクセル)にデータを格納していくとともに、当該土砂の属性情報として一連のトレーサビリティデータを紐づけ蓄積していきます。蓄積されるデータ量は膨大になりますが、個人のITリテラシーに関係なく、3次元モデルを介して感覚的な操作で必要な情報にアクセスできるので、施工時や維持管理時のデータ確認における作業効率が飛躍的に向上します。
当社は今後、盛土工事現場にSSELを水平展開し、管理業務をDX化することで、生産性向上、トレーサビリティ情報の利活用の高度化を図る考えです。
≪参 考≫
盛土品質・トレーサビリティ管理システム
「Shimz Smart Earthwork Logs(SSEL)」

盛土品質・トレーサビリティ管理システム「SSEL」 詳細フロー

盛土品質・トレーサビリティ管理システム「SSEL」 開発画面

システム構成

システムの開発による効果

共同開発先概要
会社名 | (株)EARTHBRAIN |
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所在地 | 東京都港区六本木一丁目6-1 泉ガーデンタワー29階 |
資本金 | 368.7億円 |
代表取締役社長 | 小野寺 昭則 |
設立 | 2021年 |
事業内容 | 建設業向けデジタルソリューション(現場可視化デバイス、プラットフォーム、アプリケーション)の開発、提供、保守など |
「新名神高速道路梶原トンネル工事」高速道路本線外盛土場概要
工事場所 | 大阪府高槻市大字梶原~大阪府高槻市大字成合 |
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発注者 | 西日本高速道路(株)関西支社 |
設計者 | パシフィックコンサルタンツ株式会社 ほか |
施工者 | 清水建設(株) |
開発対象 工事内容 |
盛土工:600,000m3 |
以上
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