きらびやかな弁柄色が蘇る首里城正殿

内閣府沖縄総合事務局の発注により、清水建設・國場組・大米建設JV（以下、当社JV）が復元整備工事を進めている首里城正殿において、久志間切弁柄を顔料とする塗料を正殿外部に上塗り（仕上げ塗り）する工事が本格化しています。現在、30数名の塗装工が入場しており、その3割を占める20代の若手が伝統技術の習得に努めています。外部塗装工事の着手は昨年2月に遡り、これまで下地付け、中塗りを進めてきましたが、上塗りにより特徴ある正殿のきらびやかな色合いが蘇ります。なお、昨年10月に着手した内部塗装工事は、現在、下地付けを行っています。

正殿の塗装は、下地付け、中塗り、上塗りを重ねて仕上がります。塗り重ねの工程数は、正殿の部位により15、19、21、27の4つのパターンに分かれ、久志間切弁柄を顔料として使用する部位では、いずれも最終工程で久志間切弁柄と市販弁柄を桐油で溶いた塗料を上塗りし、色調を整えます。この上塗りを行う部位は、外部塗装面積の9割以上を占めます。また、外部塗装のうち、連子（れんじ）部については、往時の手法に基づき顔料を弁柄から久米赤土に替え、同じく桐油で溶いた塗料にして上塗りし、深い色調に仕上げます。

弁柄は酸化鉄系の赤い顔料で、着色力、耐熱性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性のいずれにも優れています。一方の桐油は、油桐の種子から採取される油分で、湿気や雨水を防ぐ効果に優れ、古来より木材の塗料に用いられています。このため、弁柄を桐油で溶いた塗料の上塗りが高温多湿で日射が強い沖縄の気候から正殿を守ります。久志間切弁柄は、かつて久志間切（現在の名護市久志地区）から調達された弁柄で、水中の鉄バクテリア由来の茶褐色の水から製造されます。令和の復元整備での使用量は43kg余りで、全量、内閣府沖縄総合事務局が調達し当社JVに支給します。

平成の復元時には、往時の正殿に使われていた顔料の由来を特定できませんでしたが、その後の専門家による研究により、沖縄本島北部の水辺に存在する鉄バクテリアに由来する可能性が高いことが判明。この天然の顔料による往時の色調の復元を目指して、顔料の生産方法や塗装工程の検討、塗装の耐候性試験等が行われました。

今後の主な工程は、今秋、塗装工事が終盤に近付くと素屋根の解体が始まり、弁柄色に染まった正殿が徐々に姿を現します。解体後には正殿の妻側に繋がる西之廊下と南之廊下の建設に着手し、来年9月末の竣工を目指します。