国宝興福寺五重塔を覆う国内最大級の素屋根が完成

~高さ59.8m、間口41.75m、奥行き37mの巨大仮設~

  • 建築

2025.03.28

120年ぶりとなる国宝興福寺五重塔(奈良市登大路町)の保存修理工事に先立ち、清水建設(株)<社長 井上和幸>が(株)尾田組・(株)中和コンストラクションと組成した共同企業体(以下、当社JV)の施工により、奈良県内最高層の五重塔を覆う国内最大級の「素屋根(全天候型足場)」が完成しました。素屋根の架設工事は、奈良県の発注の下、(株)桝谷設計の設計、(株)京成設計の監理、当社JVの施工により進めてきたものです。規模は、建築面積1,526m2、延床面積5,017m2、地上6階建て、着工は2023年7月5日です。

興福寺五重塔は、天平2(730)年の創建以来、5度の罹災と再建を経ており、現在の建物は応永33(1426)年に建立されたものです。明治期に保存修理が施されていますが、五重塔の屋根瓦にはずれや破損、軒廻りや造作の木部にも腐朽が確認されること、漆喰壁は上塗が剥離し汚損も著しいことなどから、120年ぶりとなる保存修理工事が計画されたものです。

木造の文化財建造物の保存修理工事に際しては、工事中に建物を雨風から守る素屋根が建設されます。高さ約51mの興福寺五重塔を覆う素屋根は、高さ59.8m、間口41.75m、奥行き37mで、高さ的にも容積的にも過去最大、あるいは最大級の素屋根です。素屋根の中には、五重の屋根のそれぞれの軒下1mのレベルに合わせて作業用の床を、さらに軒先部分の作業用にステージ足場と呼ばれる迫り出した床を設けており、その床を利用して保存修理工事が展開されます。床の面積は5層計4,076m2です。また、高さ15.131m、直径2mの相輪の周囲にも足場が組まれており、相輪の補修工事の安全を守ります。

なお、素屋根の架設工事に先駆け、当社は奈良県から興福寺五重塔の構造診断業務を受注し、2021年から23年にかけて構造診断として各種現地調査や解析、材料強度試験、風洞試験を実施。診断結果に基づき、各所の補強案の策定に取り組んでいます。

宮大工を創業者に仰ぐ当社は、伝統木造建築技術の継承や保存修理を企業としての社会的責務と捉え、社寺建築・住宅部、東京木工場などの専門部署を維持しています。

現在、沖縄の首里城正殿復元工事や静岡の神部神社浅間神社拝殿保存修理工事などを進めており、引続き伝統木造建築関連の工事受注に取り組む所存です。

≪参 考≫

工事概要

工事名称 国宝興福寺五重塔素屋根建設工事
工事場所 奈良市登大路48
発 注 者 奈良県
契約工期 2023年7月5日~25年3月28日
構造規模 鉄骨造、建築面積1,526m2、延床面積5,017m2
設 計 者 (株)桝谷設計
監 理 (株)京成設計
施 工 者 清水・尾田・中和特定建設工事共同企業体

素屋根内外の様子

南西面外観
北西面外観
素屋根6階(五重塔最上層)
素屋根2階(五重塔最下層)

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