3次元自由曲面ガラスファサードを初採用

~ファサードデザインの自由度が飛躍的に向上~

  • 建築

2025.03.27

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、技術研究所本館エントランスのガラスファサードの部分改修にあたり、従来のフラットなガラスに替え3次元の自由曲面を採り入れたデザイン性の高いガラスファサードを初採用しました。ガラスファサードには最大300mmもの起伏(凹凸)があり、こうした大きな起伏を備えたガラスファサードは国内では過去になく、ユニークな形状が来所者の注目を集めています。

海外では2010年代の後半から建築ファサードデザインの複雑化が顕著になり、欧州を中心にガラスに関する研究が活発化していました。当社はその動向を踏まえ、自由曲面を採り入れたガラスファサードの研究開発に国内でいち早く着手し、「3Dガラススクリーン構法」を開発。この構法により、ガラスファサードデザインの自由度が飛躍的に向上するとともに、懸念されていたガラスの耐震性や施工性の課題もクリアしました。今回の改修工事にはこの構法を全面適用しています。

技術研究所本館のエントランス部は、高さ3,825mmの透明なガラスファサードで囲まれた空間です。そのファサードは、1枚あたり高さ3,825mm、幅2,037mm、厚さ15mmの単層ガラスで構成されていました。各ガラスの継ぎ目には、ガラスの変形を防止するリブガラスと呼ばれる高さ3,825mm、幅300mm、板厚22mmの長方形のガラスがファサードに直交するように設置されていました。

改修計画にあたっては、デッドスペースとなるリブガラスを用いないこと、薄厚のガラスに剛性(変形防止性能)を持たせること、他のガラスとの調和を図るためにガラスの下端から人の視線の高さにかけてはフラットにしつつデザイン性を高めること、耐震性と耐風圧性を備えること、ガラス越しの映像が歪まないことなど、種々の性能をガラスファサードに求めました。こうした性能をパラメターにして、コンピュテーショナルデザインによりファサードの形状を求めたところ、70パターンが提示されました。既存ガラスとの整合を重視してパターンを絞り込んだ結果、厚さ16mm(8mm+8mm)の合わせガラスで、高さ、幅を既存ガラスに一致させ、ガラス天端の曲げが一番大きく、下端になるにつれて徐々に波が小さくなるパターンを選定しました。

選定した形状の場合、単層・合わせガラスに関係なく、厚さ10mmを確保すれば設計可能です。ただ、既存ガラスとの厚みの差が大きくなると見た目やガラス越しの映像が変わること、想定外の理由で破損しても安全を確保できるように、今回は厚さ16mm(8mm+8mm)の合わせ化学強化ガラスを採用しました。起伏のあるガラスの形状自体が変形を防止するのでリブガラスが不要です。また、地震時の建物の層間変形に追従できること、耐風圧性能を備えていることを実証実験で検証しています。

当社は今後、多くの人が出入りする各種大規模施設のエントランスや商業施設のファサード等への「3Dガラススクリーン構法」の採用を目指し、関係各方面へ提案活動を展開する考えです。

≪参 考≫

【3Dガラススクリーン構法の補足】

化学強化ガラス

薬液処理によりガラス表面の強度を高めたガラス。スマートフォンのタッチパネル面などに使用されており、熱強化ガラスに比べ安定的に大曲率を備えたガラスを生産できる。3Dのデザインを反映した鋼製の型の上に加熱した高温のガラス板を載せることで、ガラスの自重により型通りの複雑な形状に仕上がる。最大300mm程度の起伏(凹凸)を表現でき、曲率は半径150mm程度まで対応可能。

耐震支持枠

地震による建物の層間変形に追従して、ガラスの上辺が水平移動するための枠(溝)。複雑な形状をした3Dガラスの場合、ガラスの上辺の各所で必要な溝の幅が異なり既成の枠がないため、3D金属プリンターで単品生産する。

変形防止性能

通常、高さが2mを超すようなフラットなガラスの場合、併設するリブガラスに強度を負担させ、所定の変形防止性能を確保するが、3Dガラスの場合、その形状自体が変形防止性能を有するのでリブガラスが不要。

耐震性・耐風圧性

技術研究所のガラスファサードの場合、層間変形1/100までの追従性能、±2,400Paまでの耐風圧性能を備えていることを実証実験で検証済み。

コストと性能比較

単純にコストを比較すると化学強化ガラスは従来の熱強化ガラスに比べて割高になる。ただし、化学強化ガラスは、大曲率を備えたガラスを安定的に生産できる、自然破損(自爆)しない、ガラス表面にゆがみが無い(光学ゆがみがない)、表面硬度が高く傷がつきにくい、ガラス形状に関係なく強化処理が可能で強化後の寸法精度が高い(熱によるゆがみがない)、といった従来の熱強化ガラスにない性能を備えている。

【技術研究所本館のエントランス部に設置した3Dガラス】

技術研究所本館のエントランス部に設置した3Dガラス
技術研究所本館のエントランス部に設置した3Dガラス(アップ画像)

以上

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