2024.05.21
清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、山岳トンネル工事の施工管理業務の効率化を目的に、ウェブカメラのライブ映像からトンネル坑内の作業状況をAIで自動判定し、チャットツールで施工関係者へリアルタイムに展開する「AIサイクル自動判定システム」を開発しました。本システムにより、トンネル先端部の作業状況が可視化され、現場職員が施工管理業務を効率的に進められるようになります。
山岳トンネル工事の現場では、坑内の作業状況を坑外から把握することが難しく、施工管理上の課題の一つとなっています。現場ではこれまで、カメラ映像の限定的な情報や個人の経験・感覚を頼りに坑内の状況を推察しながら作業工程を調整していましたが、想定が外れた場合には、入坑した職員が無用の待機を強いられ、生産性を減じる要因となっていました。そこで当社は、画像解析AIを活用して坑内作業の現況を把握し、現場内にタイムリーに展開する情報共有ツールとして「AIサイクル自動判定システム」を開発しました。
本システムは、ネットワークカメラ、高速通信網、解析用PC、クラウドストレージ、チャットツールで構成するもので、トンネル切羽の後方に設置したネットワークカメラのライブ映像をPCの画像解析AIで解析し、切羽付近の作業内容を自動判定します。AIによる判定結果はクラウドストレージに転送され、チャットツールを介した情報共有や作業記録の自動作成に利用されます。本システムによる生産性向上効果を検証するため、「中央自動車道新小仏トンネル工事」、「利賀トンネル(1工区)工事」の2現場にシステムを試験導入した結果、現場職員の坑内待機時間を約40%削減でき、システムの有効性を確認できました。
また、中央自動車道新小仏トンネル工事では、AIサイクル自動判定システムと併せて、現場で日々取得する施工データを集約・一元管理する山岳トンネル施工データプラットフォームを活用し、データドリブン型の施工管理を試行しています。データプラットフォームには、施工管理業務の省力化を図るため、切羽の地山状況や変位量などの施工データを蓄積するとともに、現場職員が手作業で行っていた施工データの整理・図表化などの定常作業を自動実行するプログラムを導入しています。切羽の岩判定業務を対象にした試行では、帳票作成の自動化により、担当職員の業務時間を約80%削減できました。
今後、データプラットフォームに刻々と蓄積されるリアルタイムの施工データを、異変の早期発見や現場内での情報展開に活用し、現場の安全性向上につなげていく考えです。
以上
≪参 考≫
AIサイクル自動判定システム
山岳トンネル施工データプラットフォーム
データプラットフォームを活用した施工管理業務の効率化(岩判定資料の作成)
システム適用現場の工事概要
中央自動車道 新小仏トンネル工事
工事場所 | 東京都八王子市裏高尾町〜神奈川県相模原市緑区千木良 |
---|---|
発注者 | 中日本高速道路(株) |
施工者 | 清水建設(株)・東亜建設工業(株) 特定建設工事共同企業体 |
工期 | 2020年9月~2026年5月 |
掘削距離 | 工事延長4,077m トンネル掘削工2,298m |
利賀トンネル(1工区)工事
工事場所 | 富山県南砺市利賀村地先 |
---|---|
発注者 | 国土交通省北陸地方整備局 |
施工者 | 清水建設(株) |
工期 | 2023年3月~2025年3月 |
掘削距離 | トンネル延長1,368m トンネル掘削工1,350m |
ニュースリリースに記載している情報は、発表日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、お問い合わせください。