最盛期を迎えたダバオバイパス建設プロジェクト

~フィリピン国初の山岳トンネル工事で技術移転~

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2023.12.08

清水建設(株)<社長 井上和幸>が(株)竹中土木、フィリピン共和国大手建設会社のUlticon社と共同企業体(当社JV)を組成し、同国ミンダナオ島で建設を進めているダバオバイパス建設プロジェクトの進捗率が40%を超え、工事の最盛期を迎えています。このプロジェクトの特徴は、同国初の本格的な山岳トンネルの施工に取り組むとともに、同工種未経験のフィリピン人技術者・作業員の育成に努め技術移転を図ることです。

ダバオバイパス建設プロジェクトは、円借款により、交通量の増加に伴う市内の交通渋滞の改善及びミンダナオ島最大の経済圏の物流改善を図り、同島の経済発展に寄与することを目的に計画されたものです。ダバオ市南部シワランから北部パナボ市を結ぶ全長約45kmのバイパスが完成すると、両地域間の移動時間が約50分短縮され、1時間弱に半減します。

当社は2018年10月にJVを組成し、19年5月に応札。当社JVが提案した山岳トンネルの施工計画などが評価され、20年3月に受注が内定、同年10月にフィリピン国公共事業道路省と工事契約を締結しました。契約金額は約282億円です。受注工区は、バイパス中央部分にあたる全長10.7kmの区間で、長さ2.3kmの山岳トンネル上下線2本(トンネル工区)、延長8.4kmに及ぶ本線道路、3本の橋梁から構成されます。うち、当社と竹中土木はトンネル工区を担当しています。

当プロジェクトは20年3月に受注が内定しましたが、その直後、コロナ禍の深刻化により、日本人スタッフ全員が一時日本に退避。工事契約を締結した10月前後より、日本人スタッフがフィリピンへ入国できるようになり、徐々にダバオに復帰、20年12月に着工指示書を受領しました。その後、21年4月に本線内の工事に着手、トンネル坑口迄のアクセス道路を切り拓いたうえで、11月に北坑口側から、22年4月に南坑口側からトンネル掘削を開始しました。現在、上下線2本のトンネル掘削を北側・南側の両坑口から進めており、4工区それぞれが工事の最盛期に入っています。11月30日時点の進捗率は南行きが70.3%(1,580m/2,249m)、北行きが76.4%(1,711.6m/2,240m)です。

トンネル工区の地盤は、主に泥岩と呼ばれる比較的柔らかい地層から構成されるため、トンネル壁面(地山)の変状や崩壊を防止する支保(補助工法)が求められます。しかも、支保計画の難度を高める要因が大きく3つあります。

一つは、北側の坑口から200mほどの地点で、わずか11mほどの土被りの上を沢が横断していることです。この区間では、掘進方向の地盤を事前に補強する工法を採用しつつ、日本から特殊な地盤改良剤を輸入することで出水による地山の崩落防止を図りました。二つ目と三つ目は、トンネル中央部の土被りが最大100mを超え、土圧が高い箇所があること、2本のトンネル壁面の離隔が20mしかなく互いに掘削工事の影響を受け合うことです。日本国内であれば地山の変状に合わせてタイムリーに支保計画を変更することもできますが、フィリピンでの計画変更は資材調達に長期間を要するため、当初の計画に含まれていた支保を増強することで地山の安定を図っています。

技術移転については、当社JVの技術者がフィリピンでの山岳トンネルの技術の浸透に努めています。例えば、当社の海外現場で経験を積んだインドネシア人と未経験のフィリピン人の混成作業チームの組成、オンラインセミナーの定期開催、同国土木学会での発表等です。人材教育には時間を要しますが、ここで育った人材が、同国政府が描く構想「将来的にはフィリピン人技術者のみによるトンネル工事の完遂」に寄与するものと期待されます。

同国は、マルコス政権が掲げるスローガン「BBM=Build Better More」が示す通り、インフラ整備に注力しています。当社JVは、ダバオ市バイパスの早期開通及び技術移転を図ることで、同国政府の期待に応えていく考えです。

以上

≪参 考≫

ダバオバイパス建設プロジェクトの工事概要

発 注 者 フィリピン公共事業道路省
所 在 地 フィリピン共和国ミンダナオ島ダバオ市
事 業 名 ダバオバイパス新設工事
設 計 者 日本工営JV
受 注 者 清水建設・ULTICON BUILDER・竹中土木特定建設工事共同企業体
主 用 途 高速道路
規  模 全長10.7km
トンネル2本(高さ8m、幅10m、掘削断面約80m2、長さ2.3km)
橋りょう3か所(計540m)、切盛道路(計7.9km)
全体工期 2020年12月~2025年3月

ダバオバイパス計画地

ダバオバイパス計画地

支保計画

柔らかい泥岩層を掘削する工事のため、発破は用いず、切削機による機械掘りを採用しています。施工手順は、1m掘削するたびに、掘削壁面(地山)の崩壊防止を図る支保工と呼ばれる仮設の補助構造物を構築。支保工は、掘削壁面へのコンクリートの1次吹付、トンネルの肋骨のような馬蹄形の鋼製支保工の建込、金網設置、コンクリートの2次吹付の後、支保工を固定する長さ4mのロックボルト(鉄筋)18本を放射状に山肌に打込むことで築いています。

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