地震時の杭への応力負荷を低減する新構法を開発

~杭や地中梁の配筋を合理化してコストダウン・工期短縮を実現~

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2023.11.27

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、超高層ビルの場所打ちコンクリート杭頭部と基礎部の固定度を半剛状態にして地震時の杭への伝達応力を低減することで、杭や地中梁の必要数量を縮減する杭頭半剛接合構法「スリムパイルヘッド構法」を開発しました。本構法では、杭と基礎の間に杭径より小さい円形で扁平の鉄筋コンクリート部分を設けて杭と基礎の接地面積を半減し、地震時の杭の負担を低減することで基礎躯体の数量を縮減してコストダウンや工期の短縮を実現します。本構法は、現在都内で施工中の高さ100m・地上約30階建ての超高層ビルに初弾適用しています。

これまでの一般的な場所打ちコンクリート杭は、杭頭部のコンクリート断面と鉄筋をそのまま基礎に接合させた剛接合として基礎構造を構築していました。この剛接合では、杭頭部の全面が基礎部に接合されていることから、地震時の応力が杭頭に集中し、杭頭や地中梁に大きな曲げ応力が発生します。このため、杭や地中梁のコンクリート、鉄筋等の必要数量も多くなることに加え、基礎部の配筋が複雑になり、施工上の難度が上がることから、基礎部から杭への伝達応力の低減策が求められていました。

スリムパイルヘッド構法では、杭頭部と基礎部の間に半剛接合部と呼ばれるコンクリート製で円形の扁平断面部位を設け、杭頭の固定度を半剛状態にすることで、杭頭部に生じる曲げ応力を低減します。半剛接合部は杭頭断面の約1/2の面積で、外周部に枠鋼管を設けています。杭頭部には半剛接合部での集中軸力の発生による杭頭部コンクリートの割裂防止のために、井桁状の補強筋を配筋。基礎部と半剛接合部、杭頭部断面の中央部には接合定着筋を集約配筋し、杭頭部の曲げ応力を基礎部に緩和して伝達します。これらにより、杭頭部に生じる曲げ応力を最大40%低減できることで、杭や地中梁の鉄筋数量等を減らすことができるため、基礎部分の躯体費用を約10%縮減できます。また、集約配筋された接合定着筋との干渉を避けるように地中梁の配筋を行うことができるため、配筋手間の縮減が可能となり、施工性の向上と工期短縮が図れます。

都内の超高層ビルの現場では、主に杭径2mの約70本の場所打ちコンクリート杭に本構法を初適用しました。本構法の実証実験は当社の技術研究所にて、実現場に適用した1/3スケールの杭のモックアップを用いて行い、震度7相当の応力負荷をかけても期待された耐力を維持していることを確認しています。

当社は今後、超高層案件にスリムパイルヘッド構法の適用を提案していくことで、案件受注の拡大につなげていく考えです。

以上

≪参 考≫

スリムパイルヘッド構法を適用した基礎部のイメージ

スリムパイルヘッド構法を適用した基礎部のイメージ

実証実験の様子

震度7相当の応力負荷をかけても期待された耐力を維持していることを確認
震度7相当の応力負荷をかけても期待された耐力を維持していることを確認

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