RC造建物の耐震性能を向上させる新構法を開発

~梁端部の主筋を増強し、地震時の柱梁接合部の損傷を抑制~

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2023.11.13

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、RC(鉄筋コンクリート)造の建物の大梁端部を高強度化することで耐震性能を向上させる「シミズハイレジリエントビーム構法」を開発しました。本構法では、RC造の建物の梁端部の主筋を増強し、地震時に損傷が生じやすいヒンジ領域を梁の中央側に移行させて柱から遠ざけることで、柱と梁の接合部の損傷を最小限に抑制します。これにより、地震に強く、より安全性の高いRC造建物の建設が可能になります。本構法は、豊海地区第一種市街地再開発事業に初適用しています。

これまでRC造の建物は、構造上の理由から、地震時の揺れによる損傷を梁の端部に発生させるように設計されていました。この誘発損傷部分は、大きな地震によって建物が繰返し何度も揺れると、柱梁接合部に進行し、損傷部が広がるケースがあります。柱梁接合部は一旦損傷すると補修が極めて難しく、地震後の建物の継続使用や早期復旧の観点から、柱梁接合部の損傷を防ぐ技術が求められていました。

今回開発したシミズハイレジリエントビーム構法では、梁端部の主筋を増強し、柱際から梁の中央側に向かって約300mmの範囲の構造強度を向上させることで、ヒンジ領域を柱際から遠ざけます。これにより、梁のヒンジ領域が梁の中央側に移行するため、地震時の柱梁接合部の損傷を防いで健全な状態に保つことが可能になり、復旧時の作業負荷を軽減できます。また、梁端部が非ヒンジ領域となることで、梁端部に主筋の継手を設けることができ、構造上、交差した状態での製作が必要だった柱梁を切り分けて、それぞれ柱・梁単材での製作が可能になります。部材の形状が単純化できることで、製作工場から現場への運搬効率や、現場での施工性が向上します。ヒンジ領域が柱際から遠ざかるため、配管などを通す躯体の貫通孔を梁端部に計画することも可能になり、下り天井の範囲を縮小できる利点もあります。コストは従来構法とほぼ同等です。

豊海地区第一種市街地再開発事業の建設現場では、主に長さ7m・梁せい(高さ)1m・幅0.8mの梁に本構法を初適用しています。本構法の実証実験は、建物の構造的な知見を深く持つ静岡理工科大学の協力のもと、当社技術研究所と共同で実施しました。実験では、実現場で初適用した梁の約2/5スケールの試験体を製作し、震度7相当の負荷をかけて耐力や損傷度を検証しました。本構法を適用した試験体は、従来構法と同等の耐力を維持しながら、柱梁接合部の損傷が軽微な補修で済む程度に抑制できることを確認しています。

当社は今後、本構法を広く展開していくことで、安全・安心でレジリエントな社会の実現への一助としていく考えです。

以上

≪参 考≫

実証実験の様子

≪従来構法≫

柱梁接合部が損傷している
柱梁接合部が損傷している

≪シミズハイレジリエントビーム構法≫

柱梁接合部の損傷が抑えられている
柱梁接合部の損傷が抑えられている

シミズハイレジリエントビーム構法を適用した配筋のイメージ

シミズハイレジリエントビーム構法を適用した配筋のイメージ

豊海地区第一種市街地再開発事業イメージパース

豊海地区第一種市街地再開発事業イメージパース

豊海地区第一種市街地再開発事業 概要

施行者 豊海地区市街地再開発組合
所在地 東京都中央区豊海町41番
工期 2023年1月~2027年(予定)
区域面積 約2.0ha
建築物の敷地面積 約15,901m2
建築物の延床面積 約228,096m2
主要用途 住宅、店舗、区民館、診療所、保育所
構造・規模 鉄筋コンクリート造・54階地下1階建
特定業務代行者
(設計・施工)
清水建設株式会社

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