3Dプリンタでコンクリート構造体を印刷

~建築物個別の大臣認定を要さず、プリント構造体を実構造物に適用~

  • 建築

2023.06.07

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、3Dプリンティング用のコンクリート材として自社開発した「構造用ラクツム」を建築構造体のプリント施工に初適用しました。適用物件は、東京都江東区に建設中の自社施設「潮見イノベーションセンター(仮称)」内に整備した駐車場の屋根構造物で、膜屋根の外周を囲うアーチ状の構造体の一部に、構造用ラクツムを積層して構築した「プリント構造体」を適用しました。併せて、屋根を支持する斜め柱のコンクリート型枠として、構造体の一部として構造計算に算入できる「プリント構造体型枠」を活用しています。構造用ラクツムは、建築基準法上の指定建築材料として国土交通大臣の認定を受けており、本件では、建築物個別の大臣認定を要さず通常の確認申請手続きのみで、プリント構造体を活用した建築物を完成させました。

構造用ラクツムは、当社が2020年に3Dプリンティング用に独自開発した繊維補強セメント複合材料「ラクツム」に粗骨材を混練したコンクリート材です。ラクツムは、形状を保持したまま2m以上の高さまで積層することができ、その積層体は通常のコンクリートと同等以上の力学特性と耐久性を備えています。他方、モルタル材であるラクツムの積層体は、建築法規の制約により構造部材として適用することが難しく、その性能に反して活用範囲が限られていました。

そこで当社は、ラクツムに粗骨材を混練したコンクリート材・構造用ラクツムを新たに開発、建築物の構造耐力上主要な部分に使用できる指定建築材料として国土交通大臣の認定を取得しました。これにより、建築物ではこれまで非構造部材や仕上げ部材に限られていた3Dプリント施工の活用範囲が大きく広がり、施工の省力化・省人化に寄与するとともに、プリント材を構造体として活用することで部材断面の最小化が図れます。また、従前のプリント材を構造体に適用する場合に求められる建築物個別の大臣認定の取得が不要となります。なお、構造用ラクツムは、指定建築材料として大臣認定を受けた国内唯一の3Dプリンティング材です。

今回、屋根構造物に適用したプリント構造体は、ロボットアーム型3Dプリンタによる構造用ラクツムの積層と所定のプリント層間への鉄筋の敷設を繰り返して造形したものです。高強度コンクリートと同等の性能を有する構造用ラクツムはせん断強度が高いため、層間の軸方向に敷設した主筋のみで部材に必要な構造性能を確保しています。このプリント構造体は、構造的に最適な形状となるように部材断面が徐々に変化するアーチ形状を有しており、プリント時のノズル移動速度をきめ細かく制御することで、複雑な形状を直接造形しました。

他方、斜め柱の施工に利用したプリント構造体型枠もRC柱の構造体として機能します。これにより、非構造体のプリント型枠を利用した場合と比べ、型枠内に打ち込むコンクリート量を抑制し部材全体の断面積を最小化することが可能になり、合理的な躯体デザインの実現に寄与しています。

当社は今後、建設3Dプリント施工のさらなる普及に向け、適用案件の拡大とプリント施工のさらなる効率化に向けた技術開発に注力していく考えです。

以上

≪参 考≫

プリント構造体を適用した駐車場屋根構造物

プリント構造体を適用した駐車場屋根構造物

プリント構造体・プリント構造体型枠の適用箇所

プリント構造体・プリント構造体型枠の適用箇所

アーチ状構造体のプリント状況

アーチ状構造体のプリント状況

ニュースリリースに記載している情報は、発表日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、お問い合わせください。