2023.03.28
清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、人体への有害性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)を含む汚染水を効率的に浄化する技術を開発しました。本技術は、気泡の気液界面に物質が吸着する性質を利用し、目的物を水中から除去する泡沫分離処理装置を用いた水処理技術で、水中に含まれるPFASを微細気泡に付着させ、泡沫とともに回収します。沖縄県内で実施したPFAS汚染水の浄化実証試験では、濃度634ng(ナノグラム)/ℓの汚染水が濃度1ng/ℓ以下まで浄化され、技術の有用性を確認できました。
有機フッ素化合物(PFAS)は、疎水基と親水基を併せ持つ界面活性剤としての特性を有する人工化合物で、自然環境では分解されにくいことから「永遠の化学物質」と呼ばれています。PFASは、熱に強く、水と油の両方をはじく特質があるため、1950年代から、コーティング剤や泡消火剤など多様な製品に使用されてきました。しかし、1990年代以降、環境や生体への残留性・蓄積性が問題視されるようになり、代表的物質のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」で規制対象物質に指定されるなど、世界各国で規制強化が進められています。
日本国内では、POPs条約の決定を受け、PFOSとPFOAが化学物質審査規制法(化審法)の第一種特定化学物質に指定され、製造・使用、輸出入の禁止・制限対象となっています。2020年には水道水や公共用水域、地下水に対する水質管理目標の暫定指針値(PFOSとPFOAの合計値で50ng/ℓ)が設定されましたが、多量の泡消火剤が使われてきた飛行場や基地周辺などで暫定指針値を上回るPFASが検出されるなど、環境汚染問題が顕在化しています。
当社はこうした状況下、PFASに対する規制が将来的に土壌環境に及ぶことを想定し、2021年度から、自社で保有する土壌洗浄技術の処理フローに展開できるPFAS汚染水浄化技術の開発に取り組んできました。本開発では、界面活性剤を効率的に分離・回収できる泡沫分離法による浄化手法の確立を目指し、室内試験での技術検証を経てパイロットスケールの泡沫分離処理装置を製作。2022年11月から23年1月にわたり、沖縄県内でPFAS汚染水の浄化実証試験に取り組み、国の暫定指針値の12倍(634ng/ℓ)を超えるPFAS汚染水を40分間で濃度1ng/ℓ以下まで浄化処理することに成功しました。
当社は、多数の処理実績を有する土壌洗浄技術に本技術を組み込み、汚染土壌を洗浄した際に溶出するPFAS汚染水の浄化処理に活用していく考えです。今後、PFASに関する規制強化の動向を注視しながら、PFASを含む泡消火剤が広範囲に散布された可能性のある基地施設やPFASを製造・使用していた事業所等の土壌・地下水浄化事業への展開を目指します。
以上
≪参 考≫
泡沫分離法の原理
浄化実証試験
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