演劇のプロと施設づくりのプロが興行の事業性評価でコラボ

~BIMデータから再現したバーチャル空間で舞台の実現性・視認性を評価~

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2023.05.08

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、劇場などで行う公演の事業性を評価するシミュレーションシステムを開発、四季(株)<社長 吉田智誉樹>の協力を得てその有効性の検証に着手しました。検証にあたっては、システムのベースに据えている3次元の竣工BIMにより、四季が上演する演目のシーンを精緻に再現したバーチャルな劇場空間を構築して事業性を評価し、評価結果とリアルな実演空間での評価とを同社と共同で照合していきます。

ここで言う事業性の評価とは、舞台空間では演目の実現性(セットの収まり)の確認と、客席空間では視認性による販売席のグレード設定の2つが主な対象になります。興行主は、新たな演目に取り組む際など、必要に応じてその事業性の評価を行いますが、舞台空間、客席空間のいずれの評価とも2次元の平面図と断面図の上で行う地道な作業であり、膨大な手間と時間を要しています。

一方、当社は、設計者が製作するBIMのデータを建物の運用段階に至るまで一貫活用・展開するプラットフォーム「Shimz One BIM」を構築し、生産性の向上に努めています。運用段階で活用する竣工BIMについては、出来上がった建物の3次元形状が納められているため、そのデータを活用した新たなビジネス展開を模索していました。そうした中、竣工BIMを活用することで興行主による事業性評価を代替できると考え、劇場の工事を発注いただく四季の協力を得て、シミュレーションシステムの有効性の検証を目指したものです。

システムによる事業性の評価手順は、まず、竣工BIMデータをカスタマイズし、舞台形状や個々の座席の位置などを精緻に再現したバーチャルな劇場空間を構築します。続いて、演目の複数のシーンについて、舞台装置や大道具、小道具、俳優の立ち位置などを3次元でモデル化し、構築したバーチャル空間に取り込みます。続く事業性の評価では、演目の実現性はモデル化したシーンをバーチャルな舞台上に重ねることで検証、客席空間の視認性は各座席に着席した観客の視線で舞台上の任意の位置に設ける複数の視対象物を眺めて可視・不可視を検証します。所要時間はいずれも数十秒程度です。また、バーチャルな劇場空間は客席からの視認性に限らず、音響の聞こえ方、照明の明るさ等も評価できるので、新築する劇場の計画検討にも対応できます。

当社は今後、システムの有効性の検証を経て、本システムによるコンサルティング業務を展開するとともに、四季は本システムにより事業性の評価業務の合理化を図ります。

以上

≪参 考≫

評価結果のアウトプット事例

バーチャル空間での客席からの視認性検証
【バーチャル空間での客席からの視認性検証】
舞台のシーン毎の任意の位置に設けた複数の視対象物の可視・不可視の確認結果。座席毎に複数の視対象物の可視・不可視を評価し、全座席に対する座席毎の視認率を色で表現している。緑色はすべての対象物が可視できることを示し、赤色に近づくほど視認性が悪くなる。舞台上の視対象物を円で示し、その中の数値は全座席からの視認率(視認できる客席/全客席数)。
バーチャル空間での客席からの視認性検証
【バーチャル空間での客席からの視認性検証】
舞台の上部右側に設けた視対象物の可視・不可視の確認結果。視対象物が見えない(不可視)の座席が朱色に色分け表示されている。客席から伸びる朱色のラインは可視域で、白いラインは不可視域。後部座席からは2階の座席が視界を遮り、視対象物が見えないことを表示している。舞台上の視対象物を円で示し、その中の数値は全座席からの視認率(視認できる客席/全客席数)。

Shimz One BIM

中期デジタル戦略の核となるプラットフォームの一つ。コアに据えているRevit®は高い互換性を備えているので、設計施工案件については、当社の設計者が製作する設計BIMを施工BIM、竣工BIMに展開する一貫したデータ連動を実現している。また、他社設計案件については図書類を設計BIMにデータ変換し、施工段階からShimz One BIM上に展開。

Shimz One BIM

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