AIを活用したクリーン空調最適制御システムを開発

~空調装置の運転出力をエリア単位で最適化し、空調負荷を大幅削減~

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2022.12.21

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、クリーンルームの空調負荷の低減を目的に、AIを活用して、室内に循環させる清浄空気の風量を最適化するクリーン空調制御システムを開発しました。このシステムは、2019年に自社開発した省エネ型クリーン空調制御システム「クリーンEYE(アイ)」の制御機構をAI化したもので、センサーが捉えた室内環境の変化に応じて、AIがファンフィルターユニット(FFU)の運転出力をきめ細かく制御し、必要最小限のエネルギーで要求水準を満たす清浄環境を維持します。FFU運転制御のAI化により、室内の清浄化に必要な搬送動力を従前システムと比べて30%削減できる見込みです。

開発技術のベースとなるクリーンEYEは、電子デバイス製造装置の組立工場などで求められるISOクリーンクラス6~8の清浄環境に適応したクリーン空調制御システムです。制御機構は、クリーンルーム内に滞在する作業者を検知する画像型人感センサー、室内の粒子濃度を検知するパーティクルセンサー、センサーの検知データを基にFFUの出力調整を行う制御装置から構成され、センサーが検知した在室者・粒子濃度データを基に、FFUの運転台数・運転出力を自動制御します。クリーンEYEの省エネルギー性能は、施設稼働時に想定される発塵量の最大値に合わせて循環風量を設定する一般的な空調システムとの比較で約50%に達します。一方、要求水準を満たす室内清浄度を確実に担保するため、自動制御のロジックや制御パラメータを安全側で設定しており、さらなる省エネルギーの余地も残されていました。

新たに開発したAI空調制御システムでは、クリーンEYEの空調制御機構に深層強化学習機能を付加することで、エリア単位での最適な空調制御を実現しています。具体的には、AIが時々の室内環境データからエリア単位(概ね1スパン単位)で清浄度の過不足を推定し、FFUの運転出力を状況に即してきめ細かく調整することで、空調負荷を抑制します。

AIの深層強化学習においては、CFD(数値流体力学)解析技術を活用して実運用が始まる前に訓練用データを作成し、仮想空間上で事前学習を重ねられる学習環境を構築。これにより、通常は、学習開始から収束まで半年程度を要する学習期間を2カ月程度に短縮し、AIによる空調制御機構の早期実装を可能にしています。

今後、新たなAI空調制御システムをクリーンルーム施設の新設・改修計画に広く展開し、カーボンニュートラル社会の実現に寄与していく考えです。

以上

≪参 考≫

本システムのイメージ

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