コンクリート打設後のアンモニア低減対策で美術館・博物館の早期供用に貢献

~「発生抑制」「除去」「濃度管理」の複合メニューで早期・確実に室内濃度を低減~

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2022.07.26

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、美術館・博物館等の新築・改修工事向けのソリューション技術として、打設後の躯体コンクリートが文化財の収蔵・展示施設内に放散するアンモニアの濃度を確実かつ早期に低減させる手法を構築しました。本ソリューションは、アンモニアの「発生抑制」「除去」「濃度管理」の各技術を組み合わせた対策メニューを施設ニーズに応じて提供するもので、工事の進捗に合わせて各メニューを適切に実践することで、竣工前に、対象室のアンモニア濃度を基準値以下に抑制します。これにより、竣工後にアンモニアを減衰させるための“枯らし期間”を設ける必要がなくなり、施設の早期供用を実現できます。

美術館・博物館等の収蔵庫や展示室では、文化財保護の観点から空気質を適切に管理することが求められます。なかでも、物量の多い躯体コンクリートから放散されるアンモニアの濃度管理が重視されており、東京文化財研究所の指針では、室内濃度を30ppb以下に保持することが推奨されています。一方、コンクリートの打設後、室内に拡散したアンモニアを基準値まで自然減衰させるには、1年以上の枯らし期間が必要とされています。無対策の場合、状況によっては、空気質を改善するためだけに開業を遅らさざるを得なくなり、その分、投資回収が遅れることになります。

こうした課題に対し、従前から種々のアンモニア低減対策技術が開発されてきましたが、単発的かつ対処療法的に適用されるケースが多く、十分な対策効果は得られていませんでした。そこで当社は、各種対策技術を組み合わせ、コンクリートからのアンモニア発生量を最小限に抑制しつつ、室内に拡散したアンモニアを効率的に除去する手法を構築。併せて、対策効果を確実なものとするため、アンモニア濃度の工事中の実測データと、対策の着手時から竣工までの濃度の経時変化を事前にシミュレーションした予測データとを照合しながら作業を進める濃度管理手法を導入しました。

コンクリートから発生するアンモニア量の抑制手法については、原材料の調達の難易度を考慮した上で、セメント・骨材・減水剤等の材料選定や配合設計の最適化を図り、最適な生コンプラントを選定・確保します。アンモニアの除去手法については、コンクリートの散水養生や室内の加温・換気に加え、ケミカルフィルタによる化学吸着手法を導入。筒型ファンで吸引した空気のアンモニア成分を活性炭フィルタに吸着させ、浄化された空気のみを室外に排出することで、環境面にも配慮しながら室内のアンモニア濃度を低減します。濃度管理においては、化学分析に基づく精密な環境測定データと、工事の進捗に応じて変化する施工時の室内換気量や気温等の推移を踏まえたアンモニア濃度の経時変化の予測データにより、高精度な予実管理を実現します。

本ソリューションは既に美術館新築工事での適用実績があり、竣工後の早期供用に寄与するなど対策効果が実証されています。今後、美術館・博物館等の建設計画のソリューション技術として提案活動を進めていく考えです。

以上

≪参 考≫

アンモニア濃度の推移イメージ

アンモニア濃度の推移イメージ

ケミカルフィルタの設置状況

ケミカルフィルタの設置状況
ケミカルフィルタの設置状況

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