2022.05.20
清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、山岳トンネル工事の安全性・生産性の向上を目的に、施工検討に利用する三次元地質モデルを、施工中に取得した前方探査データを反映した最新モデルに簡易にアップデートできるシステム「SG-ReGrid(Sequential 3D Geological information system using ReGrid of voxel model)」を開発しました。本システムにより、切羽前方で予測される地質分布を逐次、可視化できるようになり、対策工事の検討をタイムリーに行うことが可能になります。
山岳トンネル工事では、切羽の肌落ち等の災害リスクを回避するため、切羽前方の地山の性状を逐次予測しながら、施工を進めていきます。地山性状の予測には、先進ボーリングや弾性波探査などの前方探査手法が活用されていますが、探査結果を地質モデルに展開することで、地質の三次元的な広がりをイメージできるようになり、懸念箇所の対策検討が容易になります。一方、探査結果を地質モデルに展開するためには、地質の専門技術者によるデータ解析、解析結果を踏まえたモデルの更新作業が必要となり、従来は、専門技術者が切羽状況を常時観察しながら、作業に当たっていました。SG-ReGridは、専門技術者以外でも扱うことができ、かつ短時間でのモデル更新を実現するシステムとして開発したものです。
SG-ReGridでは、施工前に作成した工区全体の初期地質モデルをベースに、そこから、前方探査結果を基に地質分布を再評価する範囲を選択的に抽出し、モデルの更新を行います。利用時には、前方探査データの入力後、モニターに表示される地質境界面等を画面上で操作(移動・回転)して位置を調整・確定すると、地質モデルを構成する個々のボクセルに、境界面に応じた地質区分が属性情報として付与され、モデルが再グリッド化されます。
本システムでは、地質専門技術者のノウハウに基づき、モデル更新の指針を定めルール化しておくことで、専門技術者以外のシステム利用が可能となり、データの入力からモデルの更新までの時間を最短10分程度に短縮できます。また、三次元モデルから地山の切断面を抽出できるため、数10m先までの切羽の性状変化の把握が容易になり、対策工事の検討や現場職員への注意喚起をタイムリーに実施できるようになります。本システムを実装することで、地質の専門技術者を現場に常時配置する必要がなくなり、データ解析・モデル更新作業の大幅な省力化・省人化が図れます。
当社は現在、SG-ReGridの現場実装に向け、当社施工の山岳トンネル工事にシステムを試験適用し、システム機能の検証を進めています。今後、SG-ReGridで逐次更新した三次元地質モデルを山岳トンネルのデジタルツイン施工のプラットフォームとして活用し、掘削作業の安全性・生産性の向上につなげていく考えです。
以上
≪参 考≫
SG-ReGridの概念図
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