指定確認検査機関による建築工事の中間検査をリモート化

~建築確認を得たBIMデータ、AR技術、リアルタイム映像伝送技術を活用~

  • 建築

2022.04.21

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、建築確認で利用したBIMデータやAR技術、リアルタイム映像伝送技術を活用したリモート中間検査システムを(株)積木製作の協力を得て開発、(一財)日本建築センター(BCJ)<理事長 橋本公博>とシステムの有効性を検証しました。このシステム開発は、BCJと推進しているBIMデータを活用した一連の建築確認申請業務の効率化の一環であり、建築基準法が定める現場での目視検査と工事監理状況等の書類検査の効率化と確実化が期待されます。

当社は一昨年より、BCJの協力の下、BIMデータを活用した建築確認申請業務の効率化に取り組んでいます。その第一ステップがBIMデータをそのまま確認申請の事前審査に利用できる「BIMデータによる建築確認システム」の開発で、三愛会総合病院(所在地:埼玉県三郷市)の設計においてその有効性を検証しました。今回はその第二ステップで、建築確認で利用したBIMデータをそのまま利用して、中間検査をリモート(遠隔臨場)化するシステム開発です。

今回、構築したリモート中間検査システムは、構造部材の検査を対象にしており、部材の形状情報及び性能情報の整合確認、施工状況の確認、書類検査を支援する4つの機能を備えています。特徴は、タブレットの画面上に表示する検査に必要な各種画像データや書類データを検査員が目視で確認・検査するとともに、タブレットの画面情報をリアルタイムに遠隔地と共有できることです。

タブレットに表示するデータは、タブレットで捉えた現場のリアルタイム映像、建築確認で利用したBIMデータ、2次元の写真群データからフォトグラメトリーにより生成した3Dモデル、BIMのパーツに紐づけた写真や帳票などの各種書類データです。部材の形状情報の整合確認では、構造部材のリアルタイム画像の上に当該部位のBIMの3次元画像を重ね合わせたAR画像を表示します。性能情報の整合確認では、AR画像の特定の部材をタップすることで、当該部材の性能に関するBIMの属性データと検査報告書データを表示。施工状況の確認では、フォトグラメトリーにより生成した3Dモデルをリアルタイム映像に重ねて表示。書類検査では検査対象の部材パーツに紐づけた写真や検査帳票などの書類データを表示します。いずれの表示データも検査員が目視で確認・検査します。

このように、タブレットの画面上に中間検査に必要なデータがすべて表示されるので、設計者の検査対応業務の効率化と検査員の検査の確実性が向上します。また、遠隔地にいてもタブレットの画面を共有できるので、リモート検査が可能になり、将来、現場に来場する設計者や検査員の人数削減が期待できます。当社はBCJの協力を得て、三愛会総合病院において、従来の中間検査後に任意の中間検査として本システムによる検査を併せて実施、BCJは「検査のリモート化には法改正が必要だが、遠隔地からも現場にいる感覚で検査できる」と評価しています。今後、第三ステップとして、完了検査のリモート化に向け、建築仕上げや設備に対応したシステム構築に取り組みます。

以上

≪参 考≫

システム構成

本システムは、BIMデータをそのままリアルタイムで3D可視化する「Unity Reflect」(Unity提供製品)、AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を活用して新たに開発した確認検査システム、AR画像を遠隔地に伝送する「クラウド映像転送システム」((株)レスターコミュニケーションズが開発)から構成される。書類検査はクラウドBIM 360に保存されている報告書類を活用する。

システム構成

AR(Augmented Reality:拡張現実)

ARとは現実空間にナビゲーションや3Dデータ、動画などのデジタルコンテンツが出現し、現実世界に情報を付加させ、拡張する技術のことをいいます。これらの技術の利用は、ゲームやコンテンツ配信などのエンターテイメント分野から広がりを見せているが、ビジネスへの応用も始まっている。

フォトグラメトリー(Photogrammetry)

被写体をさまざまなアングルから撮影し、そのデジタル画像を解析、統合して立体的な3DCGモデルを作成する手法。デジタルカメラを用いた3次元測定機に応用されている。フォトグラメトリーは3Dスキャナのような特殊な機器が不要で、通常の写真だけで生成できることが特徴である。

(株)積木製作の会社概要

所 在 地 墨田区江東橋2-14-7錦糸町サンライズビル9F
社 長 城戸 太郎
設 立 2003年9月1日
資 本 金 1000万円
事業概要 建築CGパース制作、CGアニメーション制作、XR(VR・AR・MR)開発、空間デザイン・企画、景観シミュレーション制作、建築設計、施工管理、空撮・スチール撮影
会社概要 http://tsumikiseisaku.com/profile/

タブレットの表示画面

タブレットの表示画面

リモート中間検査の方法(4つの機能)

リモート中間検査の方法(4つの機能)

三愛会総合病院の工事概要

所 在 地 埼玉県三郷市彦成
発 注 者 医療法人 三愛会
構造規模 鉄骨造(一部CFT造)、地上7階、延床約17,200m2
工  期 2021年3月~2022年9月中旬
設計施工 清水建設(株)

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