2022.04.18
熊本地震で全倒壊し、清水建設(株)<社長 井上和幸>が保存修理工事中の国指定重要文化財「阿蘇神社楼門(熊本県阿蘇市)」において、2階屋根部の骨組(小屋組)までほぼ仕上がり、出来高が7割を超えました。再上棟は本年9月、竣工は23年12月の予定です。地震により全倒壊した国指定重要文化財の保存修理工事は極めて珍しく、阿蘇神社楼門を含めわずか数例しかありません。
阿蘇神社は約2,300年の歴史があり、全国に約500の分社があります。2016年4月に発生した熊本地震により、江戸時代末期に造営され、日本三大楼門の一つといわれる楼門を初めとする、国指定重要文化財6棟が甚大な被害を受けました。具体的には、楼門は全倒壊、三の神殿は損壊、一の神殿、二の神殿、神幸門還御門は部分損壊しました。
当社は、文化財建造物保存技術協会の設計・監理の下、1期工事として16年10月から19年3月までに、楼門の解体保管・調査と他の国指定重要文化財5棟の部分修理工事を終了。全倒壊した楼門から約11,000点に及ぶ部材を回収し、極力再利用することを前提に、再利用できる部材、部分的に補修を要する部材、代替が必要な部材に分類のうえ、部材の補修と代替部材の製作を進めました。再利用率は72%に達しています。
2期工事として19年4月に着手した楼門の復原工事では、初めに、施工ヤードを覆う高さ24.1m、幅22.5m、奥行25.3mの素屋根を架設。その後、再築に取りかかり、工程的には20年7月に基礎部、21年4月に1階の柱・梁、21年11月に1階小屋組と順に仕上っていき、3月末までに8,000点近くの部材の再築を終えています。
今回の保存修理工事の最大の難点は、従来の部材による骨組を復原しつつ、震度7の地震に耐えられるように元はなかった耐震鉄骨を骨組の中に納めることです。耐震鉄骨と骨組の干渉部については、既存部材の必要最小限の移動とそれに対応した新たな組み合わせによる解消を原則として対応しています。また、保管していた木材の多くは荷重から解放されて変形しているものの、基本的には木材に加力して元の組み合わせを実現することを原則としています。こうした対応が難しい場合、都度、文化財建造物保存技術協会と協議し、限定的に部材に加工を加えることで、文化財としての価値を棄損しないように努めています。
当社は引続き、阿蘇神社の楼門再築工事を慎重に進めていくとともに、伝統木造技術を生かして文化的価値の高い神社・仏閣の保存・修理工事に取り組んでいく考えです。
以上
≪参 考≫
工事概要
工事名称 | 重要文化財阿蘇神社楼門保存修理工事(災害復旧) |
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場 所 | 熊本県阿蘇市一の宮町宮地3083-1 |
発 注 者 | 宗教法人 阿蘇神社 |
設計・監理 | 公益財団法人 文化財建造物保存技術協会 |
施 工 者 | 清水建設株式会社 |
再築工事中の楼門2階小屋組の様子(4月13日撮影)
熊本地震発生直後の阿蘇神社の様子
部材回収後の敷地の様子
回収した楼門の柱部材の保管状況
現在の外観
楼門を覆う素屋根には、実物大の楼門の写真が貼付されている。
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