2021.10.19
清水建設(株)<社長 井上和幸>が静岡県伊豆の国市から受注し、昨年10月から進めてきた世界遺産「韮山反射炉(伊豆の国市中字鳴滝入)」の保存修理工事が近く終了します。現在、反射炉を覆っていた仮設足場を解体中で、連双式と呼ばれる2基の反射炉の美しいフォルムが全容を現しつつあります。
韮山反射炉は、西洋式大型大砲の鋳造工場として1857(安政4)年11月に完成し、1864年まで稼働。鋳鉄の溶解が実際に行われた反射炉としては世界で唯一現存する遺構とされています。今回の保存修理工事は、2015年7月の世界遺産登録後としては初めてで、前回の1989年の大規模保存修理工事以来、実に32年ぶりとなります。
この32年の間に、反射炉煙突部の煉瓦や石材、鋼材の塗装などが目視で確認できるほど劣化したことから、2018年に伊豆の国市が保存修理工事の実施を決定。その後、文化財建造物保存技術協会が基本・実施設計・監理を担当、当社が昨年9月に工事を受注し10月に着工、現在に至っています。工事の概要は、煉瓦の補修と反射炉本体の補強鉄骨の塗装を主とし、反射炉本体への漆喰塗りの試験施工も含まれます。これは、反射炉本体を適切に保存する方法として、建造当初と同じく煉瓦表面に漆喰を塗る方法を検討しているためです。工期は2020年10月1日~21年10月29日です。
煉瓦補修では、比較的劣化が少ない部位850カ所についてはモルタルと漆喰で表面を補修。劣化が進んでいる部位240カ所については補足煉瓦を表面に貼り付け固定。著しく劣化している部位208カ所については全部、あるいは一部を新しい煉瓦に置き換えました。補強鉄骨の塗装については、一旦すべての塗装を剥離し、鋼材にさびや劣化等がないことを確認したうえで適切な下地処理とフッ素樹脂塗装を実施。また、漆喰塗りの試験施工は反射炉本体の一部に実施しました。
なお、これまでの工事の主な経過は、2020年10月の仮設足場の組立、同11月~12月の煉瓦の劣化調査、同12月~21年3月の補修用煉瓦製作、同4月~5月の煉瓦補修、同6月~8月の鉄骨塗装、同9月の漆喰塗りの試験施工となります。現在、最終工程となる仮設足場の解体工事を進めています。
当社はこれまでも、世界遺産である広島原爆ドームやル・コルビュジエ設計の国立西洋美術館、正倉院正倉、東大寺大仏殿、薬師寺東塔、国宝の出雲大社本殿をはじめ、多くの文化遺産の保存修理に携わってきました。こうした工事への参画は大手建設会社の社会的責務であり、引続き培ってきたノウハウを生かし文化遺産の保存修理に寄与していく考えです。
以上
≪参 考≫
韮山反射炉保存修理工事の概要
工事名称 | 史跡韮山反射炉保存修理工事 |
---|---|
所 在 地 | 静岡県伊豆の国市中字鳴滝入268 |
工 期 | 2020年10月1日~21年10月29日 |
設 計 | (公財)文化財建造物保存技術協会(基本・企画設計、施工監理とも) |
施 工 者 | 清水建設(株) |
事 業 費 | 147,450千円 |
直近の韮山反射炉の様子
保存修理工事前後の煉瓦の比較(南炉煙突北面中断の煉瓦)
保存修理工事前後の補強鉄骨の様子
反射炉本体への漆喰塗りの試験施工前後の様子
ニュースリリースに記載している情報は、発表日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、お問い合わせください。