グラデーション色の自由曲面カラーベンチを3時間で“印刷”

~「ラクツム」で広がるコンクリート造形物の新たな可能性~

  • 建築

2021.09.22

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、3Dプリンティング用に独自開発した繊維補強モルタル「ラクツム」を利用し、グラデーション調にカラーリングされたコンクリートベンチを造形する技術を確立しました。プリント材料には、ラクツムに顔料を混練した “カラーラクツム”を使用。材料押し出し方式の3Dプリンティング装置に色調の異なるカラーラクツムを順次投入し、波面をモチーフにデザインされた自由曲面形状の背もたれ付きベンチを約3時間で一括印刷することに成功しました。

3Dプリンティング技術の活用が多分野で進むなか、建設分野ではコンクリート施工への適用に向けた技術開発が進められています。コンクリートの造形に型枠を使用しない3Dプリンティングは施工の省力化・省人化に寄与することから、建設産業の慢性的な労働力不足に対する有効な解決策となり得ます。また、造形する形状の自由度が高まることも3Dプリンティングを活用するメリットです。在来工法では実現困難だった自由曲面形状も造形物の3次元データさえあれば容易に構築でき、意匠の表現の幅が大きく広がります。

当社がプリンティング材料として開発したラクツムは、通常のモルタルに用いるセメントと砂に、長さ6mmの合成短繊維、高性能減水剤、シリカフュームなどの混和材を付加した繊維補強セメント複合材料で、形状を保持したまま2m以上の高さまで積層できます。ラクツムのプリント造形物は高い耐久性を備え、積層面が目視で確認できないほど一体化し、劣化の原因となる水や空気の侵入を助長する気泡や空隙は内部にほとんど生じません。また、顔料を混練した際の発色がよく、任意の色合いにカラーリングできる特性も備えています。

一方、ラクツムの積層に利用する3Dプリンティング装置は、産業用ロボットアーム、制御ソフト、材料移送ポンプ、ノズル、レーザー距離計から構成されます。プリンティングは、造形物の3次元CADデータから自動生成されるロボット制御プログラムに基づいて実行され、ロボットアーム先端のノズルからラクツムを一定の速度で押し出しながら、所定の形状をプリント造形していきます。

グラデーション調のカラーベンチのプリンティングでは、色調の異なる同系色・4種類のカラーラクツムを使用し、ベンチの配色設計に基づき、ポンプに投入する材料を順次切り替えることで、滑らかに変化するグラデーションを表現しました。また、硬化したラクツムは12N/mm2以上の曲げ強度を有するため、造形物の強度も申し分なく、補強せずにベンチとして利用できます。

本技術で造形した自由曲面形状のカラーベンチは、2022年春の開業を予定している複合開発街区「ミチノテラス豊洲」の外構に3基設置され、来街者の休憩用設備として供用されます。なお、ミチノテラス豊洲では、街区中央の広場状デッキを支える特殊形状の大型柱の造形にも3Dプリンティング技術を活用しています。

当社は引き続き、ラクツムを用いた3Dプリンティングの技術展開を促進し、コンクリート造形物の新たな価値の創出につなげていく考えです。

以上

≪参 考≫

ラクツムでプリント造形した自由曲面カラーベンチ
ラクツムでプリント造形した自由曲面カラーベンチ(幅320㎝、奥行150㎝、高さ100㎝)。
ベンチの形状は、豊洲の海の波面をモチーフに、エルゴノミクス(人間工学)に基づきデザインされたもの
調色設計したカラーラクツム
調色設計したカラーラクツム

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