掘削具合の可視化技術「SP-MAPS」をニューマチックケーソン工事に展開

~ケーソン掘り残し部の掘削過不足がプロジェクションマッピングで一目瞭然~

  • 土木

2020.12.03

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、ニューマチックケーソン工事における掘削管理の精度向上ならびに作業の安全性向上を目的に、3次元スキャン技術とプロジェクションマッピング技術を活用し、ケーソン刃口周辺の掘り残し部の掘削具合をリアルタイムに可視化するシステム「ケーソン版SP-MAPS」を開発しました。

このシステムは、3次元スキャナで計測した掘削面の形状と設計形状の比較結果から掘削の過不足を瞬時に数値化し、過不足量をレベルに応じて色分けしたマッピング画像を掘削面に直接照射するものです。マッピング画像は、ネットワークカメラのモニター画面上に重ね合わせることもできます。これにより、掘削オペレーターは、掘削面の色光から掘削の過不足を把握でき、無駄なく作業を進めることができます。

ニューマチックケーソン工事では、地上で鉄筋コンクリートの函体(ケーソン)を構築し、ケーソン下部に設けた圧気作業室内で掘削・排土を繰り返しながら、ケーソンを所定の深さまで沈下させます。掘削時には通常、ケーソン躯体を安定した姿勢で沈下させるため、地盤と接するケーソン刃口部の内側に土砂をあえて残しながら作業を進めます。

この掘り残し部の掘削精度は、ケーソンの沈設精度に大きく影響しますが、掘削オペレーターの技量に頼るところが多く、熟練技能者の減少が続くなか、技能者のレベルを問わず必要な精度を確保するための施工支援技術が求められていました。また、日々の出来形管理では、高気圧下の作業室内で作業員が掘り残し部の形状を計測していたため、作業負荷の軽減が課題となっていました。

そこで当社は、山岳トンネル工事のインバート掘削向けに自社開発した計測照射システム「SP-MAPS」をニューマチックケーソン工事に展開し、掘り残し土の掘削管理に適したケーソン版SP-MAPSを構築しました。システムは、3次元スキャナ、データ取得・解析用PC、ネットワークカメラ、プロジェクタで構成され、これらを一体化した装置を作業室の天井部に設置して計測・照射を行います。

システムの利用にあたっては、事前準備として、掘削深度に応じて変化する地質や躯体重量等を踏まえて計画した深度段階ごとの掘り残し幅と法面形状を設計値としてシステムに入力します。利用時には、3次元スキャナを起動し、掘り残し部を計測することで、掘削面の点群データがPCに転送され、解析プログラムが点群データと設計値の差異を瞬時に計算。続いて、照射用の色分け画像を自動作成し、プロジェクタを介して掘削面に照射します。計測から画像照射に要する時間はわずか1分程度です。また、3次元スキャナが取得した点群データはシステムに自動的に記録・保存されるため、人手による出来形の計測作業が不要となり、作業員の函内滞在時間を短縮できます。

本システムの開発にあたり、当社、大豊建設、遠藤興業で構成する共同企業体が施工中の石巻中央排水ポンプ場建設工事(宮城県石巻市、発注:日本下水道事業団)に計測・照射装置を試験導入し、高気圧環境下でのシステム機能の実効性、装置の耐圧性能を確認しています。今後、計測・画像照射の所要時間の短縮、計測・照射装置のスリム化等のシステム改良を図り、実工事での適用を目指します。

以上

≪参 考≫

ニューマチックケーソン工法(Pneumatic Caisson Method)

コップを逆さまにして水中に押し込んだ状態のように、空気の圧力で水の浸入を防ぐ原理を応用した施工法。鉄筋コンクリートの函体(ケーソン)の下部に設けた作業室内に、地下水圧に相当する圧縮空気を送り込むことでドライな環境を保持し、掘削・排土を行う。

ニューマチックケーソンの沈下掘削管理

沈下掘削中のニューマチックケーソンには、躯体重量、載荷荷重による「沈下力」と、作業気圧による揚圧力、周面地盤の摩擦抵抗力、ケーソン刃口部が受ける地盤反力を合わせた「沈下抵抗力」が作用する。一般に、地盤が軟弱な場合には、沈下掘削中の過沈下を防止するため、刃口部周辺の土を残すことで躯体重量を支持する地盤の面積を増やし、沈下抵抗力を確保する。

圧気作業室内の掘り残し土(イメージ)
圧気作業室内の掘り残し土(イメージ)

計測・照射装置のシステム構成

計測・照射装置のシステム構成

色分け画像の照射

圧気作業室内での照射状況
圧気作業室内での照射状況
無人掘削時のモニター越しの色光確認
無人掘削時のモニター越しの色光確認
ネットワークカメラ画像にマッピング画像を重ね合わせた様子
ネットワークカメラ画像にマッピング画像を重ね合わせた様子

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