医薬品クリーンルームの設計支援ツール「GMP Visualizer」を開発

~GMPに準拠した室配置計画の早期作成を支援する3Dモデリングツール~

  • 建築

2020.11.18

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、医薬品製造施設の設計支援ツールとして、医薬品GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)に準拠したクリーンルームの配置計画を効率的に立案できる3Dモデリングツール「GMP Visualizer」を開発しました。このツールは、医薬品製造施設の建築・空調計画のベースとなるクリーンルームの配置計画を検討する際に不可欠な医薬品GMPとの適合チェックをコンピュータプログラムで自動化するものです。計画図の作成・修正もビジュアル画面で簡易にできるため、GMPに即した室配置計画を短時間で作成することが可能になります。

医薬品GMPは、人の健康・生命にかかわる医薬品の安全性と品質を確保するため製造施設が厳守すべき要件をソフト・ハード両面で定めた製造管理・品質管理基準です。ハード面の核となるクリーンルームの仕様については、作業内容に応じて空気清浄度の要求グレードが定められ、室間で人やモノの出入りが生じる場合には、清浄環境を保持するための対策がルール化されています。例えば、グレードが異なる室の間に人の動線を設ける場合には、低グレード側から高グレード側への空気の流入を防ぐため、室間に更衣室を設けるとともに、高グレード側の室圧を低グレード側より高くする必要があります。

医薬品GMPにはこうしたルールが複合的に規定されており、GMPの要件と施設の使い勝手や生産効率を両立させた室配置計画を作成するためには、熟練の設計者でも相応の検討時間を要します。そこで当社は、これまで培ってきた医薬品製造施設の設計ノウハウをコンピュータプログラム化し、GMP要件の自動チェック機能を備えた3DモデリングツールとしてGMP Visualizerを開発しました。

GMP Visualizerは、クリーンルームのレイアウト検討のベースとなる3Dモデリングソフトウェアと、各室の必要条件および相関する室の接続条件等を規定するGMP要件を内蔵したGMP自動化プログラムで構成されます。ツールの利用にあたっては、まず設計者が必要諸室の面積や清浄度グレード、室圧等の設計条件をまとめた一覧表を作成します。このデータをツールにインプットすると、各室に対応するブロック図形が面積等の属性情報とともにツール画面に生成されます。続いて、設計者が相関する室のブロックを線で結び、動線の種別(人、物流等)を設定すると、室間に配置すべき前室、更衣室等の緩衝室が画面上に自動的にプロットされます。このブロックプランに対し、GMP自動化プログラムが各室の清浄度グレードや室圧、室間の気圧差の妥当性を自動チェックし、GMP要件に適合しない場合にはエラーメッセージが表示されます。

設計者は、GMP自動化プログラムの判定結果に応じ、各室の清浄度グレードや室圧条件を適宜修正することで、GMPに即した室配置計画を作成でき、完成したプランから簡易的な空調系統図や室別条件表も出力できます。本ツールにより、従来と同程度の検討期間で複数の計画案を提案できるようになり、計画の修正も打ち合わせの場で簡単にできるため、最適レイアウトを早期に形成できます。

当社は、このツールを医薬品製造施設の新築計画の設計検討に利用するとともに、既存施設のGMP適合チェックツールとしても活用し、改修提案の最適化につなげていく考えです。

以上

≪参 考≫

GMP Visualizerのツール機能

GMP Visualizerのツール機能

固形製剤工場の検討例

複数プランの検討(左から2階建案・3階建案・4階建案)
複数プランの検討(左から2階建案・3階建案・4階建案)
GMP要件の自動化1(緩衝室の自動生成)
GMP要件の自動化1(緩衝室の自動生成)
GMP要件の自動化2(室圧自動判定)
GMP要件の自動化2(室圧自動判定)

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