3眼カメラシステムで配筋検査

~東北中央自動車道 東根川橋上部工工事で実用化~

  • 土木

2020.10.14

清水建設(株)<社長 井上和幸>が国土交通省のPRISM(建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト)を通じシャープ(株)と共同開発した「3眼カメラ配筋検査システム」が、東北中央自動車道 東根川橋上部工工事の配筋検査手法として初採用されました。国土交通省の発注工事において、デジタル化された配筋検査システムが採用されたのは今回が初めてです。これまでは、例外なく、配筋に這わせた検尺ロッド(スケール)を写真に収める人手に頼った配筋検査が求められていました。

このシステムは、3眼カメラとシステム制御ソフトから構成されており、3つのカメラを用いて異なる方向から同時に撮影することにより、三角測量の原理を応用して画像データの3次元情報を把握します。制御ソフトは画像から鉄筋を抽出したうえで、縦・横方向の鉄筋径や配筋の平均間隔、本数、重ね継手の長さ、かぶり(コンクリート厚)を計測し、検査帳票まで自動で作成します。精度は鉄筋径で±1㎜、配筋の平均間隔で±5㎜と工事管理基準内に収まっており、二段配筋等の複雑な配筋検査にも対応できます。また、このシステムにより、配筋検査に要する人員、時間がそれぞれ1/3以下となります。

東根川橋上部工工事は、橋長236m(3径間、最大支間長110m)の橋梁を建設するものです。橋梁は10日程度のサイクルで施工が進むため、配筋検査の機会が多いことから、当社はPRISM を通じ、発注者である東北地方整備局に3眼カメラ配筋検査システムの採用による施工の合理化を提案。その結果、システムの有用性が認められ採用されることになりました。当工事では、3眼カメラ配筋検査システムが橋面躯体工の段階確認検査で所定の検査性能と省人化効果を発揮しています。引続き、東北地方整備局発注の国道45号線新思惟大橋上部工工事でも3眼カメラ配筋検査システムの採用が内定しています。

当社は今後、土木工事の発注者に対して3眼カメラ配筋検査システムの有用性を提案し、全国の土木現場に水平展開していく考えです。

以上

≪参 考≫

3眼カメラシステムの開発の背景

配筋検査は、コンクリート構造物の品質保証をするうえで欠かせない、非常に重要な品質管理業務の一つです。このため、検査帳票の作成や検査用具の準備、自主検査、発注者の立会検査などに多くの手間と時間を要しており、検査業務の精度を維持しつつ、効率化することが課題になっていました。3眼カメラ配筋検査システムは、こうした課題に対応するために開発したものです。

使用方法

使用方法は極めて単純で、発注者あるいは施工者の品質管理者が指定した検査対象範囲を単に撮影するだけで、わずか7秒後に検査結果が自動的に画面表示されます。このため、管理者はストレスなく検査業務を継続できます。一度の撮影で検査できる範囲は1m四方ですが、複数の撮影結果を合成した広域の検査結果を取得することも可能です。また、配筋の妥当性が一目でわかるように、検査結果とCIMの配筋図データとを色を分けして重ね合わせることも可能です。

メリット

検査業務の精度を維持しつつ、効率化できることに加え、安全性も向上します。これは、離れた場所からの配筋検査が可能なので、足場などが不要になるためです。将来的には、このシステムと遠隔臨場システムを組合わせて、発注者の立会検査を代替し、立会日時の調整、発注者の移動等のムダを削減する考えです。リモート・非接触による配筋検査は感染症対策としても有効です。

配筋検査方法比較(左:システム利用、右:従来方法)
配筋検査方法比較(左:システム利用、右:従来方法)

東根川橋上部工工事における3眼カメラ配筋システムの使用状況(発注者による立会配筋検査の様子)

東根川橋上部工工事における3眼カメラ配筋システムの使用状況(発注者による立会配筋検査の様子)

東北中央自動車道 東根川橋上部工工事の工事概要

建設地 福島県伊達市保原町富沢地内
発注者 国土交通省 東北地方整備局
規模・構造 橋長236mの3径間連続PCラーメン箱桁橋、最大支間長110m
設計者 東京コンサルタンツ(株)
施工者 清水建設(株)
工 期 2018年12月18日~2020年12月25日

国道45号線新思惟大橋上部工工事の工事概要

建設地 岩手県下閉伊郡田野畑村菅窪地内
発注者 国土交通省 東北地方整備局
規模・構造 橋長394mの4径間連続PCラーメン箱桁橋、最大支間長150m
設計者 パシフィックコンサルタンツ(株)、大日本コンサルタント(株)、清水建設(株)
施工者 清水建設(株)
工 期 2019年3月31日~2021年2月5日

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