コンクリート充填シミュレーションを橋梁上部工の実工事に適用

~高密度配筋箇所の施工検討に活用し、打設計画を最適化~

  • 土木

2020.06.04

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、型枠内へのコンクリートの充填状況を事前評価できる自社開発の3次元シミュレーションシステムについて、実工事への適用を開始しました。本システムを初適用した工事は、福島県内で施工中の東北中央自動車道東根川橋上部工工事(国土交通省発注)です。充填シミュレーションの対象はPC箱桁構造物の高密度配筋箇所で、シミュレーション結果を基にコンクリートの物性と打込み・締固め方法の最適な組み合わせを検討し、施工計画に反映しました。

阪神淡路大震災以降、土木構造物の耐震性能に対する要求水準が引き上げられたことを受け、鉄道・道路高架橋などを中心に、配筋密度の高いコンクリート構造物が増加しています。一方、配筋の高密度化はコンクリートの流動性の阻害要因となるため、コンクリートの配合や打込み・締固めの方法を適切に計画し、未充填等の不具合を未然に防ぐことが重要になります。

当社が開発した充填シミュレーションシステムは、バイブレータを用いたコンクリート打設計画の実効性を解析的に事前評価するもので、型枠に打ち込むコンクリートの配合や打込み位置、バイブレータの挿入位置、振動時間等の最適な組み合わせを、実大試験施工に頼らずに事前検証できます。使用に際しては、最初に実際の型枠や鉄筋の3次元図面をシミュレーションソフトに入力し、モデル化します。続いて、コンクリートの打込み位置やバイブレータの挿入位置・振動時間を任意に設定・入力すると、型枠内でのコンクリートの流動挙動をシステムが解析します。解析結果は3次元のアニメーションで可視化されるため、バイブレータによる締固めの効果を一目で確認できます。

東北中央自動車道東根川橋上部工工事では、コンクリートの部材厚が最も薄く、鉄筋やPCケーブルのシース管が集中して配置される主桁ウェブ部を対象に、コンクリートの充填シミュレーションを行い、その結果を基に、高密度配筋コンクリート(約3,035m3)の打設計画を最適化し、円滑に打設を進めました。

当社は今後、高架橋など重要土木構造物を中心に本システムの活用を促進し、高密度配筋コンクリートの施工品質の向上につなげていく考えです。

以上

≪参 考≫

シミュレーションで可視化したコンクリート充填状況(側面図)

<打設計画>

打設計画

<シミュレーション結果>

①充填前(0秒)
配筋、シース、型枠の状況

充填前

②バイブレータ(Vib.A1)加振中(24秒)

バイブレータ(Vib.A1)加振中(24秒)

③バイブレータ(Vib.A2)挿入前(54秒)

バイブレータ(Vib.A2)挿入前(54秒)

④充填終期(138秒)

充填終期(138秒)

型枠内のコンクリートの色付けは粘性状態を示す。バイブレータで加振され液状化(粘性が低下)した状態が青色

「東北中央自動車道東根川橋上部工工事」の概要

発 注 者 国土交通省 東北地方整備局
工事場所 福島県伊達市保原町富沢地内
工  種 橋梁・上部工
規  模 PC 3径間連続ラーメン箱桁橋
橋長236m
コンクリート3,889m3
鉄筋746t
PCケーブル140t
工  期 2018年12月~2020年7月

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